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Re: 吸血鬼と暁月【オリキャラ募集終了致しました】 ( No.31 )
日時: 2012/08/01 20:07
名前: 枝垂桜 (ID: gZQUfduA)



 ファウストはそのあとすぐに元気が戻り、沙雨をからかったりして遊んでいた。


 人に振り回される沙雨がなんとなく不思議で、朱音は特には何も話すことはなかったが、とても楽しかった。

 一番に予想以外だっのは、ファウストの性格だった。
 元に沙雨の主君だった美濃の斎藤龍興は、政府を捨て、女と酒に溺れる日々を過ごす、贅沢で我儘な男だと、以前に半兵衛と沙雨が話していたのを聞いたことがある。

 尾張(愛知県)の織田信長公も、苛烈な男だと噂で耳にしている。

 朱音の中の殿様というのは、余り良い印象を持たれていなかった。


 が、この男はその像を全く覆す者だった。


 明るくてどこか子供っぽいが、そこが微笑ましい。話しやすくて、気を抜くとつい王様だと言う事を忘れてしまいそうになる。

 きっとこういう人ほど、仕事では厳しくて、真面目な人なのだろう。それでも、周りの人が付いてくるという事は、仕事以外の面で、このような顔があるのだからだと思う。



「あー、楽しかった」



 ファウストは話すだけ話し終わると、大きく伸びをした。ファウストが気持ちよさそうな顔をしている反面、沙雨は長時間いじられ続けてぐったりしているようにも見える。



「めっちゃくちゃ楽しかった! ありがとな、沙雨、朱音」


「こっちはとても疲れましたよ」


「まあまあ、今夜だけだって。だってお前もう当分来ないかもしれないし、もしかしたら、もう会えなくなるかもしれないこともないんだし、今話したいこと話しといた方が良いじゃん。得」


「その遠まわしな言い方やめてください」


「ごめんごめん」


 本当に子供のような笑い方をする人である。

 家臣なしで町を歩いたら、迷子になるのではないだろうか。


「では、僕たちはここで失礼します」


「ああ、うん。ごめんねー、朱音ちゃん」


「あ、いえ……、楽しかったです」


「王、貴方が迷惑をかけたのは朱音以上に、僕ですよ」


「死んでも沙雨だけには謝罪しないかなー」


 沙雨は眉をひそめる。眉間のしわのせいで、色男が台無しだ。

 沙雨は朱音にお面をかぶって、といい、かぶり終わった朱音の手を握った。



「では、今度こそ本当に失礼します」


「うん。 ありがとう。楽しかった」


「気持ち悪いので、早く帰ることにします」


「うーわー。血も涙もないねぇ」


「王様、またいつか」




 朱音が振りかえりざまにそういうと、ファウストは笑顔で手を振ってくれた。


 扉が閉まり、何十分か前に通り過ぎた道を通ると、ホールに戻って行った。