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Re: 吸血鬼と暁月【オリキャラ募集終了致しました】 ( No.33 )
日時: 2012/08/03 19:03
名前: 枝垂桜 (ID: gZQUfduA)


「────────ッッ!」


 沙雨が突然目を細くして、ファウストの部屋がある方を振り向いた。


「沙雨……?」


 そう声をかけ、言い終わる前に沙雨がかけだした。その背を朱音は必死に追いかけた。裾がせまい着物がじれったかった。


「さ、沙雨卿ッ! お待ちくださいッッ!」

「どけッッッ!!」

 沙雨は守備を投げ飛ばしてファウストの部屋に入って行った。

 朱音も倒れこんだ守備兵の間を通り抜けて、その先に行った。


───生臭い……?


 少しだけf鼻を刺激する匂いが、ファウストの部屋から流れてきた。
 扉を開けて、部屋の前に立ったまま、沙雨は微動だしない。


「沙雨? どうしたの?」


 背伸びをして、沙雨の肩から中を覗き込んだ。

 そこには───、


「─────ッッッッッ!!!」

「朱音ッ! 見るなッッ!」

 沙雨の肩手が朱音の体を胸に抱き寄せた。そのせいで、視界が真っ暗になる。

 しかし遅かった。

 朱音にはもう、その部屋が目に入っていたのだ。


「──ッ、やっ……、沙雨……ッッ! 王様が、王様が……ッ!」

「朱音、落ち着いて……っ」


 沙雨の腕の中で涙を流す朱音を必死に抱きしめる。
 自分だってまだ心の整理ができていないだろうに、必死に朱音を落ち着かせようとする。

 見間違いと信じたかったが、見間違いではないはずだ。

 あの血にまみれた男はファウストだった。


「王、様……ッッ」

「朱音……。ごめん」


───どうして謝るの。


 泣きたくなってくるではないか。