ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 吸血鬼と暁月【第二次オリキャラ募集中!】 ( No.44 )
- 日時: 2012/08/10 21:24
- 名前: 枝垂桜 (ID: gZQUfduA)
「沙雨が来るのね……」
皐月は眠っている久遠の頭を撫でながら呟いた。
ここはヨーロッパ。ここには彼らも隠れ家がある。
「ああ、沙雨を壊してしまいたい。狂ってしまうほど、壊してしまいたい……。そうする為にまずは、朱音に壊れてもらわなくては駄目ね……。彼女が壊れれば、沙雨も壊れる。ふふ」
声を漏らして笑う。その顔は美麗で、美しかった。綺麗に歪んだその紅い唇が色気を引きたてる。
「───起きて、久遠」
皐月は眠っている久遠の額に軽い口づけを落とす。
するとその瞼がゆっくり持ち上げられる。一瞬、瞳に魔法陣が浮かび上がり、その陣が赤く光り、すぐに元に戻った。
それは幻だったのでは、と思うくらい一瞬の出来事だった。
久遠が皐月の首まで顔を持って行き、その首筋に牙を埋めた。
ぶつ、と皮を破り、首に噛み付く。
赤い血が溢れだす。その血を器用に吸い取っていくが、それでも溢れ出てしまう血が一滴、また一滴、と床に落ちる。
「貴方が私の血を欲するのならば、貴方は私の道化。私が死ぬまで、私の血の呪縛に縛られ続ける。永遠に続く血の呪縛から、貴方は自分の意志では逃れられない」
「………、は……っ」
血を飲んだ久遠が首から口を離し、甘い吐息を漏らす。
「愛してる。……この言葉でさえ、貴方を縛りつける呪縛になるのね……」
そして皐月はまた一言、その呪縛の言葉を久遠に告げるのだった。
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アネッサは歩く足を不意に止めた。
「愚かな者たち……」
自分の見る未来は必然。過去でどう足掻こうと、変わることはない。でも、うまいやり方でその未来を回避することはできる。
『破滅』を回避させてやろうと思ったのに、彼らはそれを拒んだ。
「面白いわね。初めてよ───あなたみたいな奴は」
ぶそりと呟く。
「貴方達の未来は今、変わりつつあるわ。朱音さんの記憶が戻り、長年止まっていた運命の歯車が、再び回り始めた。───確実に、運命は変わる」
確信の言葉を述べる。次の瞬間、別の未来が脳裏を横切った。
「──なるほど。こうなるのね、朱音さんは」
未来が見れると言っても、アネッサにも限界がある。彼女は人間で、神ではない。万能ではないのだ。視た後も、酷い頭痛に襲われることがある。
未来を視る、ということは人間には荷の重いことなのだ。
「私こちらで、貴方達の未来を視てるわ」
今アネッサが視た出来事は、今から数日後、朱音たちの身に降りかかる。