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Re: 吸血鬼と暁月【第二次オリキャラ募集中!】【参照400突破】 ( No.68 )
日時: 2012/08/29 16:05
名前: 枝垂桜 (ID: tDpHMXZT)




「寧々! 話を聞いてくれ」


「他人が気安く我の名を呼ぶ出ないわ! はよう消えよ!」


「寧々!」


「えぇい、やかましい! 我はお主の事なぞ知らぬと、何度も申しているだろう!」



 食事の後、寧々と桔梗の喧嘩は永遠と続いていた。否、端に桔梗が寧々の後に付いて回っているだけなのだが。


 これほど似ているのだ。他人と思う方がおかしいであろうその二人を見て、時雨は苦笑していた。

 正直鬱陶しいのでそろそろやめてほしいのだが、そんな事を言える雰囲気でもなく。

 唯一止めることができそうなマーチもどこかに行ってしまった。天狐は茶を持って外に出て行ってしまった。これではもう止めようがない。



「寧々、あの時は……置いて行って悪かった」


 あれほど喚いていた桔梗が急に声のボリュームを小さくする。逃げ回る寧々の動きも止まって、ようやく桔梗を見た。



「反省している。しかしあの時はやむを得なかった。まだ小さかった寧々を連れていくには抵抗があった。──本当にすまない」



 桔梗は寧々に向かって深々と頭を下げる。次の瞬間、桔梗に強烈な蹴りが一発入った。


 時雨は短く悲鳴を漏らし、桔梗の体が床に転がる。


 時雨と桔梗が寧々を見ると、寧々は小刻みに震えていた。


 まさしく、怒り心頭と言う状況だろう。



「寧、寧々……?」


「お前がいなくなったせいで我は一人になったんだぞ! 我がどんな思いをしてたか、お主には分からぬだろう! 我は沙雨や時雨や朱音に出会わなければ死んでいたぞ!」


「寧々、悪魔は他の種族とはかかわりを持たないのが普通だ。悪魔は孤独の種族なんだぞ」


「我はそんなの嫌じゃ! 一人は嫌なのじゃ! もう…嫌なのじゃ!我を独りにするでない!嫌なのじゃ…独りぼっちは、嫌じゃ!!」


「寧々……」



 血を吐くように寧々が告げる。呆然とその姿を見ていた桔梗が寧々の名前を呼んだ。


 かなり幼い頃にいなくなった双子の兄、桔梗。寧々のこの想いを桔梗に伝えたのはこれが初めてだった。



「───分かった。だが、俺は沙雨らとつるむ気は毛頭ない」


「別にそれで良い。ただし、沙雨たちを傷つけた時は、我はお前を許さんぞ」


「……ああ」



「ようやく終わったようですね」



 天狐がその場所に現れる。限界だった時雨が駆け寄って、天狐の胸に飛び込んだ。


「天狐、我の双子の兄、神威桔梗じゃ」


「存じ上げています。……時雨さん、離れてください」


「すまぬ時雨。怖がらせたな」


「べ、別に、怖くなんか、なかったし……。ちょっと驚いてただけ」


「時雨は強いのう」


「当り前でしょ! 朱音を守るためには、これくらい、ふ、普通よ」


「さ、一段落しましたし、もう布団に入られた方が良いかと」


「うん、行こう、寧々」


 時雨が寧々の手を掴んで引っ張る。


「待て寧々! 俺も」


「お主は男であろう! 女子と同じ部屋で寝るのは許さぬ。 外で寝ておれ!」


「なっ、寧々!」


 天狐はその光景を見ながら「仲が良い」と感心していた。