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Re: 吸血鬼と暁月【オリキャラ 執事&メイド募集中】 ( No.81 )
日時: 2012/09/23 23:17
名前: 枝垂桜 (ID: tDpHMXZT)




「おめでとうございます。『僕』は無事に開かれました」


 沙雨の持っていた黒い本がその手から滑りぬけ、ロアの手中に収まる。


「さて、調べたい事は何ですか?」


 先程まで眠たそうに目をこすっていたロアとは信じがたいものだ。

 激しい変わりように二人とも少なからず驚いていた。


「幽霊界の新しい王についての資料はあるかい?」

「もちろんですよ」


 魔法陣からぼうっ、と一人の女性の姿が浮かび上がる。───否、その姿は『女性』と例えるにはまだ若過ぎていた。


 『少女』と言う例えが最もふさわしいと思える容姿。張りのある白い肌。艶のある長い髪。幼いながらも落ち着きを見せるその顔。

 青と白をモチーフにした装束は清楚さを覚えさせる。額のあたりに本体が来るようにできた金色の髪飾り。


 間違いない。きっと彼女が新しい王だ。


「ロアさん、彼女の情報を」

「りょ〜か〜い。
 名はシャルロット・レア・アレクシア・クリスタル。二十四歳。フランスの某村生まれ。人間自享年は0歳9か月。父の兄に首を絞められ死亡。その後兄は行方不明。見つかっていないがその死体は地中海の底。

 女王としての支持率は91%です」


「ありがとう」


 91パーセントとは、かなり高い。高すぎる。


「平気でしょう。ファウスト元王はこれよりも高かった筈です」

「そう言う事を心配しているのではないよ。これだけ支持が高ければ国民の信頼も深い。僕に誘いが来たら断れないじゃないか」

「もう来ているでしょう。何を今更」

「ついでに」


 ロアが付け足そうとする。


「今女王は朱音さんを探している。彼女を捕まえて、人質にし、貴方を駒にしようとしています」

「───なっ」

「ロアさんの情報が間違う事は100%ないです。早めに対策をしておいた方がよろしいかと。今は寧々、桔梗、時雨と町に出ておりますが」

「今すぐ呼び戻して」

「御意」


 なぜ久遠はファウストを殺したのだ。

 ファウストならばこんな事はしない。なぜ罪のない哀れな魂をもう一度殺したのだ。


 早く決着をつけなければ。被害が広がる前に。朱音が自分から離れていく前に。


「───ロア、水袮久遠の資料はあるかい?」

「あるよ」


 魔法陣のアレクシアが消え、代わりに久遠が映し出される。


「水袮久遠。27歳。魔界の某町生まれ。現在は悪魔・皐月と行動を共にしています。武器はツインブロードソード」

「他には?」

「存在しません。……何か気味の悪い者の手によって、彼の情報が漏れださないようにされています」

 だから幽霊界の者たちも久遠と皐月を捕まえる事が出来ないのか。


「どうにかしてその呪式を解けないかい?」

「僕一人では無理。何かを頂戴」

「何か……?」

「今度は何でも良い。ただし貴方にとって大切な物だよ」


 沙雨は部屋の奥に行った。そして1枚の黒い羽を持って戻って来た。


「これは堕天使の羽だ。ファウストが僕にくれた、最後の贈り物だ」

「じゃあ、それ、貰うね」


 羽がピッ、と沙雨の手から離れ、魔法陣に吸い込まれて行った。





切ります。

更新遅くなって申し訳ありませんでした。事情があって、パソコンが使えない状況にありました。今度からはしっかり更新します。