ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 吸血鬼と暁月【執事&メイド募集は終了致しました】 ( No.88 )
- 日時: 2012/10/05 00:29
- 名前: 枝垂桜 (ID: tDpHMXZT)
沙雨たちはある森にいた。
風に吹かれ揺れた葉の隙間から太陽の光が差し込み、きらきらと美しい風景を作り出していた。
目を閉じて歩く沙雨にマーチが声を掛けた。
「主、木にぶつかりますよ」
「大丈夫。ここは全部分かる」
返事をしながら、まるであるのを知っていたかのように目の前の樹を避けた。そして目を開く。
「懐かしいね。何年振りだろう」
沙雨が最後に来たのはマーチと契約するよりもっと前。何十年と前なのだろう。アカネと会う世のもずっと前───。
突然、寧々の首に短剣が付き付けられた。
「───何者? 怪我をしたくないのなら、今すぐここを去って頂戴」
「お前こそなんじゃ!」
寧々が叫ぶ。しかし、次には短剣下ろされていた。
「こいつらは客だ。手を出すな」
「申し訳ありません」
短剣を鞘に収めた女が深く頭を下げた。
女に命令をしたおとこがゆっくり沙雨を見る。沙雨が微笑んで目を細める。
「久しぶり」
「ああ」
男の反応は酷く素っ気なかったが。沙雨穂嫌っているわけではなさそうだ。
金色の短髪。髪と同色の目。左目をアイパッチで覆っており、黒い手袋をしていた。タキシード思わせる黒い服を身につけて立っていた。
「この人が輪廻シエル。デビルバスターだよ」
悪魔を狩る能力がある男。シエルは悪魔そのものの寧々を見て、舌打ちをした。
その右手は、己の体よりの巨大さを誇る剣にそえられ、狩る者の目と化した。しかし悪魔でも「今」は客。狩るべき相手ではないと認識したのだろう。
「来い。隠れ家に行く」
シエルの隠れ家に付き、一同はテーブルの椅子に腰を掛けた。そこに女───シャルネーゼがやって来て、ミルクを差し出した。
翠色の長い髪に緋色の瞳。パープルの豪華なドレスを着ていた。
パープルのボンネットをかぶっている。
不思議な事に彼女の周りには色とりどりの蝶が舞っている。
片手には蝶が描かれた扇子を持っていた
沙雨はミルクを受け取った後、シエルに向き直った。
「僕がここに来た理由は分かっているのだろう?」
「ああ」
「力を貸してほしい。久遠を見つけ出し───殺すために」
「お前とは深い縁だ。その仲間も信頼しよう。しかし道を踏み外した時は殺す。沙雨。お前であってもだ」
シエルは強く言い放った。