ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ジェットブラック ( No.19 )
- 日時: 2012/02/10 23:17
- 名前: K-10 ◆f62.Id/eYg (ID: r6yRxP5o)
風が髪とタバコの煙を揺らした。土煙を纏った一帯も晴れ、
家の残骸が散らかっているのがはっきり見える。そしてもう一つ。
「やっぱりね」
結界が二カ所に張られていた。前の結界にはギルバート、
後ろにはアレックスの姿が見える。アレックスは尻餅をついており、
帽子は結界から離れた場所に吹き飛んだようだ。
「危機一髪だな。大丈夫か?」
「イタタタ…何とかね」
ギルバートの左手には魔法陣が書かれた紙切れが二枚握られている。
そのうち一枚からは光の糸のようなものが一本出ており、
アレックスの結界に繋がっている。
「アレックス。これはお前が持ってろ」
紙切れを引っ張ると糸がゴムのように伸び、
手を離した途端勢いよく結界を突き抜け
アレックスのもとまで飛んでいった。
まるで水面に波紋が立ったように膜が揺らぐ。
「で、殺そうとしたんならもう少し丁寧にやったらどうだ?」
ギルバートからは赤毛の男は見えないが
屋根の上の気配に気がついていた。
それを聞いてニヤリと口元を笑わせる赤毛の男。
タバコが口から落ち、吸い殻を踏むと地面に降り立った。
「やっと出てきやがったか」
水面から体を出すように光の飛沫がわずかに上げ、
ギルバートは結界から体を出した。
結界は残したままだ。
「さすがに君は死んでるだろうと思ったんだけどね」
ギルバートが赤毛と遠からず近からずな距離まで歩み寄る。
「いたぶるつもりか。趣味が悪いな」
軽く返すと赤毛はサディスティックな笑みを浮かべた。
「見たところ君はただの人間じゃないね?」
「だったら何だ」
流石に気味が悪いので、身構えた。すると赤毛は腕を前に伸ばす。
その腕が赤く光り出した。
みるみるうちに光が炎に変化し腕全体を包む。
しばらくすると炎は一瞬にして消え、
彼の手にはトンファーが握られていた。
「君は潰しておいたほうがよさそうだけど、面倒だし死んでくれるかい?」
赤毛は笑顔から真顔になってトンファーを構える。
「断る」
ギルバートも静かに赤毛を睨みつけた。二人の間に火花が散る。
アレックスはその迫力に圧倒され、
結界の中で震えることしか出来なかった。
「そう。じゃあ潰すしかなさそうだ!」
赤毛が地面を蹴ると足に炎を纏い凄まじいスピードで飛んできた。
「ギルっ!」
アレックスが思わず叫んだと同時に
トンファーがギルバートの頭を付こうとする。
寸でのところで背中を反らし素早くホルスターから二丁拳銃を抜く。
上がった左足の裏で赤毛の胴を持ち上げ横に投げ飛ばすと
宙に浮いて身動きのとれない体に連射した。