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Re: ジェットブラック ( No.22 )
日時: 2012/02/13 10:27
名前: K-10 ◆f62.Id/eYg (ID: r6yRxP5o)

鮮血を撒き散らしながら地面を舞うように転がる赤毛。
しかし、その口には闘いを楽しんでいるような
凶悪な笑みが浮かんでいた。
「君は…実に面白い戦い方をするね」
口から垂れる血を袖で拭いながら楽しそうに言い、
ゆらゆらと立ち上がった。
蜂の巣にされたはずの体はすっかり元通りになっており、
衣服に血が滲むのみだ。
「なるほど。焔魔か」
「御名答。ところで…」
紫色の瞳の色が一瞬だけ青白く光った。
乾いた風が吹いたが赤毛が微量の衝撃波を放ち相殺する。
「さっきはよくもやってくれたね。今度は俺の番だよ」
声はイタズラっぽいが顔は決して笑っていなかった。
ギルバートが腕を交差させ拳銃を構えたが、
(速い…!)
間に合わなかった。先程の比にならない瞬間移動かと思うほどの速さ。右のトンファーで顎の下を付かれ、間髪を入れず左で鳩尾を付かれる。張りっぱなしの結界にぶち当たり、一瞬だけ呼吸が止まった。
「ゲホッ、ゲホッ…」
酸味が逆流する。
赤毛は咳き込むギルバートに追い討ちをかけるように
トンファーに炎を纏わせ飛びかかった。
が、その時。
「穢れは洗うことにあらず。知らぬことにある。血飛沫、戦火の匂い、不条理から救う盾となれ。“ダーティレス・シールド”!」
アレックスが呪文を唱えると壁ほどの大きさはある盾が
ギルバートの前に具現化された。
「!?」
「アレックス…?」
ギルバートはアレックスが見やると腕を前にかざし、
呼吸を荒くしている。
一方赤毛は思わぬ妨害を受け、一瞬目を見開いた。
だが、すぐに目はつり上がり怒りを露わにする。
「はあああっ!」
顔を歪ませ、トンファーを握る手に力を込めると
纏っている炎が強くなった。盾に亀裂が入り、
何かを強く裂くような音が響く。
「余計なことしてくれるぜ。全く」
ギルバートが立ち上がりコートの袖で口元を拭い、
軽くアレックスに振り向いた後二丁拳銃を手放した。
カシャッと小さく音を立てて落ちる。
「ギル!危ないよ!」
それを自殺行為だと思ったアレックスはギルバートに叫んだ。
が、その間も亀裂が大きくなる。
音叉を鳴らしたような高い音がしたかと思うと盾は粉砕され、破片が飛び散る。破片は突き刺さることなく塵に変わった。
それと共に赤毛がトンファーを突き出して飛んでくる。
豪火をギルバートの額目掛けて思いっ切り振り切ったが、
当たったのは結界の膜だった。
「残念だったわね」
「…なっ」