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Re: ジェットブラック ( No.25 )
日時: 2012/03/31 20:41
名前: K-10 ◆f62.Id/eYg (ID: uJjLNBYk)

久しぶりの更新です。

第六章

空を見上げれば満天の星空と白く輝く月。
こんなにも素晴らしい景色が見えてると言うのに三人には眺めている余裕はない。今、三人はギルバートが入国したところとは反対側の場所にいる。
「山って…あれかよ」
「なんて言うか、山というより…」
島だった。まるであの荒野はもともと海だったかのようだ。ともなれば、この国は海の跡地に創られたものだ。建物らしきものは見当たらないが、遠くに微弱な、並みの人間ではまず感じることの出来ない気配を感じる。
「船でもあればいいんだけど」
「列車ならあるよ」
マチルダが冗談半分で言ったが、予期せぬ答えが返ってきた。三人が後ろを見るとランタンを持った車掌服の男がいた。歳はギルバートよりも上に見えるがどことなくヘラヘラした感じがある。
「列車?そんなものどこにも…第一レールは?」
ギルバートは胡散臭そうに車掌を見つめた。車掌は目を糸にしながら言った。
「もうじき来ますよ。…ほら」
カタカタとランタンの光が揺れる。汽笛の音がしたかと思うと、遠くから煙が見えてきた。シュッシュという音がこちらに近づいてくる。三人は列車のライトに照らされ、目を細めると、ブレーキ音を立てて目の前で列車が止まった。
「すごい…」
アレックスが目を輝かせる。
その声に釣られてギルバートとマチルダが目を開けた。
「あらまぁ」
「こりゃあ…相当な魔力使ってんな」
列車が宙に浮いていた。レールもなければ車輪もない。
車体が地面から数十センチ浮いている。
「君達を乗せるのは初めてだね」
「あぁ。この国のもんじゃねぇからな」
「あの島へ?」
「いや」
ギルバートと車掌と話している間に列車は高く上がり、連結部分をくねらせて八の字を描きながら方向転換をしていた。アレックスはその光景に釘付けだった。方向転換が済み、先頭が島の方向に向く。
「そうか。今日は君達しか乗客がいないようだし普段はあの島に直通なんだけど、今日は特別だ。運賃はいらない。乗ってきな。目的地までつれてくよ」
「そりゃあ、ありがたい話だ」
「そうね。乗ってきましょ」
「ボク、列車に乗るの初めてだ」
車掌はそれを聞くと喜んだ様子で言った。
「ようこそ!スターライト・エクスプレスへ」
カラン、とランタンが揺れると光がゆっくり落ちる。すると近くの車両の乗り口が開き、ステップが降りてきた。
「目的地はどこだい?」
「下級悪魔の住処」
「ほほう。ワケありだね。…おぉっと、そろそろ時間だ。早く乗んな」