ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ¥緑白の雪崩¥ ( No.4 )
日時: 2012/01/22 09:27
名前: B判定 (ID: vgnz77PS)



初めて、初めて芯から恐怖を感じた。
人が目の前で殺される光景は幾度となく目の当たりにしてきたが、こうもたやすく人を殺める人間を見たのは今日が初めてだった。

ホームレスの眉間には銃痕が残っていて、後ろの石壁には血と穴が開いていた。
眉間の穴からは一滴も血が流れていなかった。

「ア、アズルさん…。」

エジは何故か声を殺すように小さな声でアズルを諌めた。

「…黙れ、とりあえずここを離れるぞ…。」
「【インぺジ】…とはなんですか…?。」
「…。」

アズルはエジの言葉を無視したのか、もしくは聞こえていないのか、エジの投げかけは空中に浮いていたままだった。
【インぺジ】という言葉がエジに引っかかったようだ。

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短針が29分を指していた。

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アズルは走り出した。
意外と速い。
エジはそのアズルを追いかけるように走る。

「…」

短針が29分を指している。もしかすると、さっきのホームレスが死んだからかな。でも確信は無い。とりあえず、アズル、速い。

ドアのない家屋に挟まれた石の街道を走る。
朝露で濡れている。霧がどんどん深くなっていく。

ドォン!!!

後ろの方から大きな音が聞こえた。
銃声では無かった。

「エジ!!。」
「は、はい!わっ!。」

アズルは走りながら後ろに銃を投げてきた。慌ててその銃を取る。

「これは…?」
「持ってて、先に走って。前から人が来たら撃って!。ターゲットだったらツグナイのアラームが鳴るから。」

そういいながら、アズルは少しスピードを落とし、エジの後ろに回った。
展開が早すげてエジは言葉を返すことができなかった。

「エジは前だけ見てろ。」
「は、はい…!」

エジは銃を構えながら、ただ走った。

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「一生付いて回るもの。それは、『過去』だ。だから名前は捨てろ。」

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無意識にただ走って、
引き金を引いて、
やっと別の景色に出た。
そこにはさっきの町並みとは違った景色があった。

「ここは…。」

西洋からは少し離れ、古代ギリシアを彷彿させるような柱が等間隔に林立していた。
中には2,3本、風化していた。

「!!」

いつの間にか、ツグナイの短針が12分を指していた。

針が戻っている…。やはり、人の命を奪うことで針が戻るシステムだ…。でも、なんで減点方なんだろうか…。

「あの…インぺジってなんですか?。」
「…敵だ。」

この未だに謎の組織に、また謎の組織が敵対してるなんて、まったく話がつかめなかった。
アズルはホームレスから奪ったインぺジの烙印の付いたぼろの布を取りだした。