ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ¥緑白の雪崩¥ ( No.5 )
- 日時: 2012/01/26 19:03
- 名前: B判定 (ID: vgnz77PS)
「【インぺジ】についてはここでは話すには長すぎる。しかし私たちの敵には違いない。」
「い、インぺジ…敵、ですか…。」
「ニンムの概要を説明する。」
半紙を切り替えるように、
アズルはクシャクシャになったメモ用紙を取りだした。
それをエジに渡し、読ませた。
アズルはそれと取り換えるようにエジと銃を替え、周りに目を配った。
「今回のニンムはターゲットの暗殺。…としか書いてないですよ。」
「あぁ…。」
「あぁ…って、このままじゃ情報が浅すぎます…。」
「だから【ツグナイ】があるんだ。」
そういいながら、ツグナイを付けた腕だけをエジの前に差し出した。
「さっきも言ったとおり、この長針の指す方向と、このツグナイが知らせる音だけで私たちはターゲットを探さなきゃならない。」
エジはメモをアズルに渡した。
そういえば、短針のことについて訊いておくべきだった。
「あの、この短針のシステムは…。」
大方予想はついていた、命を奪うたびに動く針だ、と。
その気持ちを、どうか裏切ってほしかった。
これいじょう人の命は奪いたくなかったから。
「人を殺すと針が戻る。」
エジの思いも虚しく、アズルは短針のシステムについて、淡とした表情で告げた。
僕はショックだった。
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今更になって気付いた。
人を殺す感覚が、今更だけど、手に伝わってくる。
無意識に、ただ走ってただけなのに。
まるで違う誰かに乗っ取られたみたいだ。
その間の記憶が全くない、意識が戻った途端、この広場にいた、短針が動いていた、殺した苦い後味が、後から伝わってきた。
「どうした、エジ。気を抜くな。敵は追ってこないから心配するな。」
「ふっ。」
「なんだ。」
「いや、私情を挟むなって言ってるくせに、僕に心配ってたじゃないですか。支障が出ますよ…。」
エジは少し笑顔を浮かべて言った
バァン!!
その言葉を言い終わって、歯を見せたその一瞬の出来事だった。
気がつくと、僕の左頬から血が出ていた。
彼女の目は本気で殺そうとしている目だった。
もう少しずれていたならば、僕は、僕は…。
「今、私がエジに心を配っていなかったら、殺していたさ。」
アズルは前を向いて歩きだした。
いい感じでフォローしたと思ってるよアズル…。
超痛いからね…、かすり傷レベルじゃないからね…。
エジは荷物の中の布を取りだし、傷ついた頬にあてた。
「?????」
血が付いてない。
いや、確かに痛む。
あれ、でもやっぱり痛くないや…。
おかしいな…
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「彼の調子はどうだ、ドミナ」
「…いい武器になりそうだ。過去を取り戻さない間はな…」
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