ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

2話 「15歳とは2」 - 僕 ら の 音 楽 - ( No.2 )
日時: 2012/03/04 10:42
名前: 立目 里 (ID: YkDMB6yu)

 坂。
 坂坂坂。
 
 どうして毎日毎日坂を登ったり下ったりしなくちゃいけないの。登った先にあるのは......

 坂。
 坂坂坂。

 ただうるさいだけの学校。

 坂。
 坂坂坂。

 みんな分かってるの?約半年後には「受験」という大きな大きな壁があるじゃない。どうせ実感がわかないとか、まだ時間があるだとか言い訳するんでしょうけど、それにしてもいわゆる「受験ムード」というものが欠けている。
 私は登校中にいつも機嫌が悪くなる。別にカルシウム不足ではない。ただ、毎日坂を登るのがめんどくさいだけ。そしてその先に待っている学校という場所がうるさい馬鹿ばっかりの場所だという事を思い出し、今日の1時間目は小テストだという事を思い出し、そうしているうちになぜうちの学校はこんな山のてっぺんにあるのかと考え、今日も隣の席のみみっちいやつにぶつくさ言われるのかと思えば、出てくるのはため息。ただそれだけ。
「おはよう」
うるさい教室のドアを開けてもやつらは見向きもしない。
「おはようひとみ」
私に声をかけたのは、友達。さっきの話だと私には友達がいなさそうに思うかもしれないが、決してそういうわけではない。ただ、私といつも話す友達は、めちゃめちゃ冷めてる人達だ。例えばさっきのともか。授業中は寝てるくせに、テストの点数はすごくよくて、みんなから恨まれてる。それはクラスのみんなの愛情の裏返しかもしれない。しかし彼女自身は周りの目など一つも気にしない人で、図書室に誘っても、「トイレ行くから一人でいってて」なんて平気で言う。普通の女なら嫌われるところを、彼女はそれで上手くやっていってる。ある意味尊敬する。人と関係を持とうとしないのは、後々楽な事で、彼女はいろいろな事件に、といっても女の言い争いだが、そんなことにはいっさい巻き込まれない。そんな自由なともかは私のお気に入りだ。
「ともか勉強してる?」
「1時間ぐらい」
「少なくない?ってかどこ行きたいの、高校」
「桜田高校ってことにしてる。ひとみは?」
「私はもちろん応仁高校。大学は何としてでも行くから」
「別に桜田でも大学は行けるよ」
「どうせともかは、ガツガツ勉強するタイプの応仁が嫌なんでしょ?」
「そのとおり、桜田はもっとのんびりしてるし、上位にいればわりとどこの国立大学も行けるでしょ」
「勉強しないのに大学行くなんてせこい」
「そういうひとみは常に一番でいたいだけでしょ。ただのプライド。でもきっと受かるから心配はしてないけどね」
「どうも」
 わりと皮肉な口調が多いけれど、もう慣れてしまったので、卒業したらもの足りないかもしれない。なんだかんだ言ってもともかは受験を意識しているようだ。

 あれだけクラスのみんなをけなしてしまったが、実は私も人の事は言えない。家に帰ったらまずイヤホンをつける。耳に流れ込んでくるのは、甘く、そしてスパイシーな洋楽。最初は英語リスニングの練習のつもりで聴いていたのが、どんどんのめり込んでいってしまった。日本の真面目くさった音楽はいまいち刺激が少ない。一度アメリカンpopを耳にしてしまえば、日本の音楽なんて聞けない