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Re: ミィツケタ…【7話更新!!参照100突破!!】 ( No.20 )
日時: 2012/04/01 11:27
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

8話

「じゃ、数えるぞ〜。10秒!!」
「「「「「急げ!!」」」」」
「うう…結良ぁ…。」
「はいはい、一緒に行こうね美羽!!」
私たちはリビングに集合している。テレビが砂嵐の状態でついていて、家じゅうの電気が消えている。
「せーのっ」
「「「「「「逃げろ!!」」」」」」
ヨッシーが壁に向かってカウントダウンを始めようとした瞬間、私たちは家じゅうに散らばった。

「いーち、にー、さーん、しー、ごー」
私と美羽は急いで階段を駆け上がり、私の部屋にとびこんだ。そして机の下にもぐりこむ。もたもたしていられない。
「ろーく、しーち」
二人で身を寄せ合って座っていると、美羽が私の手を握ってきた。
「はーち」/「大丈夫だよ、そんな怖がらなくても。」
「きゅー」/「うう…うん。」
つないだ手から、美羽の震えがつたわってくる。
「じゅー!!」
私は美羽を安心させようと、美羽の手をぎゅっと握り返した。
ヨッシーの足音が、かすかに聞こえる。でも、こちらに近づいている様子はない。
「大丈夫かなぁ…ヨッシー。」
美羽が言う。私は笑った。美羽は本当に怖がりで、優しい子だ。
「平気でしょ。あんなにおちゃらけてるんだから。」
私はそう言って、つないだ手をぶんぶんと振った。
ヨッシーがおちゃらけているのは、間違いない。しばらくして、歌声がちいさく聞こえてきた。

「わーかーわーかーしーきーきのー」

「…おい。」
青輪中の校歌か。
何でわざわざ校歌を歌うんだ…。

「わーかーばーのーいーろーに」

歌声がだんだん近づいてきた。こっち、来た。

「そーらーのーあーおーきーをー」

大きい。来たかな。私たちを最初に見つけるかな。

「かーさーねーてーむーすー」

…。

…途絶えた。
「…どうしたんだろう。すっごく中途半端。『重ねて結び』まで歌えばいいのに…。」
「多分、私たちがおかしいなって思って出てきたところを、捕まえるつもりだよ。」
そう言ってみたけど、なんだか落ち着かない。ヨッシー…そんなに策略をめぐらすタイプじゃないから。

「ぅっ…」

「…結良、なんか聞こえない?」
「何?」
「なんか…うめき声が。」
「うめき声?」
耳を澄ます。…聞こえたような、聞こえないような。
空耳かもしれない。それくらい、曖昧。
「そうかな…?」
「聞こえなくなっちゃった…。」
美羽は少ししょげて言った。
…それにしても、静かだ。ヨッシー、もう通り過ぎたのかな…?

ピリリ…ピリリ…

「…あれ?」
急に携帯の着信音が近くで聞こえた。これって…ヨッシーの?まだ、ねばってるの?
「ヨッシーのだね…。」
美羽が声をひそめて言う。

ピリリ…ピリリ…

「…え?」
おかしい。着信音が鳴りやまないのだ。ずっとヨッシーの携帯の着信音が流れ続けている。ピリリ…ピリリ…ピリリ…
「え…ヨッシー?」
私は机の下からはい出した。美羽もはい出してくる。
「ヨッシー?どうしt…」

ドアを開けながら言う。
血の気がひいた。

「ヨッシー!?」
「ヨッシー!?どこ!?」
いない。
ヨッシーが、いない。
私たちは声を限りに叫んだ。でも、返事はない。
着信が止まる。異様な静けさ。急に、恐ろしさが体中を駆け巡った。
ヨッシーは、どこ?
ヨッシーは、どうしたの?

「…どうした?五十嵐、ここにいるんじゃないのか?」

急に声をかけられ、私たちは短い悲鳴をあげて振り向いた。
…日室君だった。
「日室君…!!」
「え…それって…。」
日室君の視線が、ヨッシーのケータイに注がれる。
「…結良、小宮さん、日室、どうしたの?」
いつのまにか、巧が来ていた。光里も、松原君も姿を現す。
「ヨッシーが…。」
震える声で、私は言う。そんな、そんなはず、ないのに。
「いなくなった…」

モウイイカイ
       マアダダヨ
モウイイカイ
       モウイイヨ
ミィツケタ…