ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ミィツケタ…【9話更新!!参照100突破!!】 ( No.26 )
- 日時: 2012/04/20 10:42
- 名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
10話(日室Side)
「かっくれっるぞー!!」
「バカ。大声出すんじゃねえ。」
俺は義隆を連れて1階に駆け降り、ある部屋の中に逃げ込んだ。
お父さんの部屋なのか?書類がいくつか積んである。
「じゅう!!」
松原の声が十を告げた。さあ、第二ラウンドの始まりだ。
「くっくっ…。」
「いつまで笑ってんだよ…。」
「いやーみんなバカだなあって…。」
部屋の電気がついていないため、義隆の表情はよくわからない。ただ、笑っていることは事実だ。
「…とにかく、義隆が無事でよかったよ。」
俺はおもわず、そうこぼした。
俺たちは人前では「五十嵐」「日室」と呼んでいるが、二人だけになると昔のように「義隆」「栄介」と呼び合っていた。
「…え?」
「…なんだよ、え?って。」
「あ…っと、何さ?急に名前呼びなんて。びっくりするだろーバカ。」
「…は?」
俺は義隆の表情をよく見ようとした。
…暗いからよくわからないが…ふざけてない。真面目に…言ってるのか?
(…おい、待て。)
あの時。義隆が階段から顔をのぞかせた、あの時。
何で誰も、階段を上がってくるときに義隆に気付かなかったんだ?
仮に近くの部屋に隠れていて、みんなが上がったのを確認してから上がってきたとしても…あそこまで物音をたてずに上がってこれるものなのか?
そんなことが…人間に可能なのか?
おかしい。
考えられない。
(つまり…!?)
「どうしたんだよー日室。」
「お前…。」
俺は悪寒がしていた。つまり、こいつは。
「…誰だ?」
「は…?俺だよ。五十嵐義隆。ちょっと日室しっかりしろー。うえーん。日室が記憶喪失になっでじまっだー!!」
違う。
違う。
言葉づかい、様子…義隆だ。でも、違う。こいつは、義隆じゃない!!
「誰だ!?お前は誰なんだよ!!」
かくれんぼなんてどうでもいい。見つかってもどうでもいい。重要なのは、こいつが誰かって言うことだ。考えられるのは…!!
「…ちっ。」
ふいに、義隆…ちがう、義隆の姿をした奴が…舌打ちをした。
「面倒くさい子…。」
「!?ぐぅっ!!」
ふいにそいつは俺の首をつかんだ。
「っ!!」
よける間もなく、空中に釣りあげられる。
「ぐっ…うっ…!!」
苦しい。首をしめられる。誰か。ぐ…る…じぃ…。
こいつは…こいつは…!!
「大人しく騙されていればよかったのに。そうしたら、こんな苦しい思いをせずに、あの世に行けたのに。」
義隆の声が、次第に幼げな少女の声に変っていく。普通なら「きもい」と思うかもしれないけど、今はそんな場合じゃない。
「ごめんね…正体がばれた以上、生かしておくわけにはいかないんだ。苦しんで、苦しんで…苦しみぬいて死んでもらうから。」
「がっ…はっ…!!」
ぬいぐるみ…こいつは…ぬいぐるみだ…!!
「日室〜?大声出したらばれるでぇ?」
ドアの向こうから、松原の声が聞こえた。
「まつ…ば…らっ!!く…る…な…!!」
かすれ声で精いっぱい叫ぶ。ぬいぐるみは顔を不気味に歪ませた。笑っているのか、怒っているのか。
「新しく来てくれた♪そっちが先かな。」
ふいに、首を強く絞められ、そしてほどかれた。
力なく地面に崩れ落ちる。動こうにも、動けない。息を整えるので精いっぱいだ。
目の前で、ぬいぐるみが入って来た松原を締め上げた。
何とかしなくちゃ。
俺だけなんだから、自由なのは。
松原を助けられるのは…俺…だ…け…。
目の前がかすみ、薄暗い視界は完全に闇に覆われていく。
そして…そこで意識が途絶えた。