ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ミィツケタ… ( No.3 )
日時: 2012/01/24 12:12
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

プロローグ

「あ、これかわいい〜。」
「うわあ、本当だあ!」
私達は、家族でショッピングに来ていた。ママとパパは別のものを見に行ってる。私とお姉ちゃんは、大好きなキャラクターのグッズのあるコーナーにいる。
「ナナシさんはやっぱりかわいいね〜。あ、すごい!バッグがある!」
「う〜ん。でもそれはきっと買ってくれないよ〜。」
お姉ちゃんは言うと、文房具を見始める。ナナシさんの筆箱を取り上げて、ニコニコしてる。
お姉ちゃんは、勉強好き。私はちょっと苦手。でも文房具がナナシさんだったら、頑張れるかな?
「お姉ちゃん、それ、見せて。」
「ん?いいよ。」
ナナシさん筆箱。やっぱりかわいい。お姉ちゃんも気に入ったみたい。
「お姉ちゃん、これ、お揃いで買ってもらおう。」
「あ、いいね。そうしよっか。」
二人で筆箱に見入っていた時。

ガタンッ!!

「っっ!?」
急に、足もとがふらついた。立っていられない。床にしゃがみ込んでしまう。
「な、何…!?」
「お姉ちゃん…!!」
怖い。これって…地震?
必死にお姉ちゃんにしがみつこうとする。けど、揺れに邪魔されてできない。

ゴッ。


何か、変な音がした。
「…!!あ…あ!!」
お姉ちゃんが変な声を出す。次の瞬間、背中に何かがぶつかり、私は悲鳴を上げた。
「痛いっ…!!」
うつ伏せの姿勢で叫ぶ。何かが上にのっかってる。目の前には、ナナシさんグッズが散乱してる。
「おね…ちゃんっ…!!」
苦しい。声が出せない。たぶん、私の上にのっかってるのは、グッズを置いていた棚だ。しかも、1つだけじゃない。将棋倒しで、きっと何個も…。
「つかまって!!」
お姉ちゃんが震えながら手を伸ばす。その手につかまる。引っ張られる。
「っっ…い…痛いっ!!」
ぬけだせない。私は怖くて泣きだす。お姉ちゃんも泣き顔。
「うっ…どうしよう…どうしよう…!!」
お姉ちゃんが泣きながら言う。と…。

ビーッ。ビーッ。

天井からすごい音が響いてきた。ブザー音。

火事です。火事です。

妙に落ち着いた火災警報器の音。それと同時に、いくつもの悲鳴が聞こえた。
「っ…どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう…!!」
狂ったように、「どうしよう」を繰り返すお姉ちゃん。
「お姉ちゃん!!落ち着いて!!」
私が叫ぶと、お姉ちゃんははっと顔をあげた。
「…誰かっ。誰かあっ!!」
声を限りに叫びながら、お姉ちゃんが走り去る。
…え?
「…え?え…お、お姉ちゃあんっ!!」
今度は私が声を限りに叫んだ。何で?どうして?
その時、空気がむん、とした。
視界に赤いちらちらしたものがうつり、私はひっ、と悲鳴を上げる。
遠くに見えるキャラクターのぬいぐるみが黒くなる。キャラクターの絵柄が入ったタオルが黒くなり、ちぢれてゆく。
私はもがく。助けて。助けて。嫌だよ。私…あのぬいぐるみみたいに…。
目の前にあるいくつものナナシさんぬいぐるみが不気味に見えた。ああ、全て同じ顔をしている。同じだ。どこも違わない。いくつものナナシさん。同じものが、何個も、何個も、何個も…。
ああ、1つ黒くなる。2つ、3つ、4つ、5つ…ああ、数えきれないよ。
目の前のナナシさんぬいぐるみがこげる。手に持ったナナシさん筆箱がこげる。
そして…私が…こげ…。

モウイイカイ
       マアダダヨ
モウイイカイ
       モウイイヨ
ミィツケタ…