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Re: ミィツケタ…【12話更新!!参照100突破!!】 ( No.33 )
日時: 2012/06/10 14:04
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode

13話

美羽は玄関に向かっているようだった。この家から出ようとしているのだろう。
とりあえず、美羽から目を離さないようにして、私たちはひたすら追いかけた。
しばらくして、美羽が玄関に到着する。
美羽の手が、ドアの鍵にかかる。

ガッ…

「…え…!!」

美羽がへなへなと座り込んだ。その間に私たちは追いつき、光里が美羽の肩をしっかり押さえこむ。
「美羽、どうしたのよ!!」
「鍵が…!!」
すっ、と背筋が寒くなる。日室君がドアに歩み寄り、鍵に手をかけた。

…回らない。

「どうなってやがる…!!」
「鍵が…開かない?」
日室君と巧が困惑した声を出すなか、とうとう美羽は大声で泣き出した。

…鍵が、開かない。

…こんなことって、ある?
何なの、なにが起こっているの、この家に…!!

「嫌…にげるの、逃げるのっ!!」

はっと我にかえる。その途端。
「きゃあっ!!」
光里の悲鳴とともに美羽がばっと駆け出した。
「「美羽!!」」
「「小宮!!」」
私たちは再び、走り出す。ばか…!!みんなでいない方が危険なのに!!
美羽はほかにどこか逃げ場所がないか、探しているようだった。片っ端から部屋のドアを開け、きょろきょろと見まわしている。涙でぐしょぐしょの顔。恐怖に埋め尽くされた顔。目を見開き、息を切らせ、頬えおひきつらせた顔。

怖い。
美羽が、怖い。
恐怖を感じているその少女が、人間が、怖い…!!
怖い。怖い。怖い。こわい。こわい。こわい。コワイ。コワイ。コワイ…!!
頭の中を、その音だけが駆け巡る。
「コワイ。」その音だけが。

美羽はトイレを見て、リビングを見て、和室を見て…。普段からは考えられないくらい、動く。
「美羽!!落ち着いて、落ち着きなってばっ!!」
光里がとうとう美羽を捕まえた。両肩をつかみ、壁に押し付ける。どん、と鈍い音がし、美羽が低くうっ、と呻いた。
「落ち着いて!!」
美羽に鋭い視線を向けて、光里が大声で言った。少し安心して、私たちはほっ、とため息をつく。
「…ふう、ひと段落だな。もう一個の懐中電灯持ってくる。…野本。」
「ああ。」
単独行動を避けるため、日室君は巧を呼ぶ。さすがだ。
「お願い…。」
言ってから。ずいぶん疲れた声だなと思った。身体的に。精神的に。心身ともにやられちゃってる。恐怖に。奇怪な出来事に。
向こうからひとつ、懐中電灯の明かりがやってくる。さまざまなものが照らし出される。私。巧。光里。美羽…美羽?
光里も、異変に気付いた。巧も。日室君も。
「「…美羽?」」
「大丈夫?小宮さん…。」
「小宮…?」
そういえば。美羽のしゃくりあげる声が聞こえなかった。光里への抵抗もあまりなかった。あれだけヒステリックになってたのに、なぜ…?
美羽は光里に肩を掴まれたまま、力なく首を垂れていた。少し茶色みがかった黒髪がばさりと垂れて、顔をかくしてしまっている。身体は震えていない。え…あれ…美羽…?
ふっと、美羽が顔をあげた。顔が見える。生気のない、ぼんやりした目。泣きはらした後だから、少し赤い。でも、黒眼に光がない。死んだ目…そう、まさにそんな目だ。
美羽はぼんやりと私たちを見た。悪寒が走る。まさか。ぬいぐるみじゃないはず。美羽のことはずっと見てた。その間に、私達に気付かれないようにぬいぐるみになるなんて、不可能だ。
美羽の色白な細い腕が上がり、自分の肩にかかった光里の腕を握る。そして。

「っっあっ!?」

高く悲鳴を上げ、光里が左手首を抑えてしゃがみこんだ。
「光里!!」
光里の顔を覗き込みながら、私は一瞬、何が起きたのかわからなかった。
「鈴野さん!!大丈夫?」
巧が光里に声をかける。
…はっとした。
美羽が、光里の左手首を。

…ねじったんだ。

モウイイカイ
       マアダダヨ
モウイイカイ
       モウイイヨ
ミィツケタ…