ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ミィツケタ… ( No.6 )
日時: 2012/02/02 11:08
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

1話

朝の8時30分。担任の吉井先生が入ってくる。まだ騒いでいた男子があわてて席に着いた。
全員が着席して、ふと気がつく。あれ、ヨッシーがいない。
吉井先生は出席簿を開き、出欠確認を始めた。
あずま 梨奈。」
「はい。」
「五十嵐 義隆。」
…だれも、答えない。
「誰か五十嵐見てないか?」
「また、寝坊ですよ。多分。」
ヨッシーの親友、日室 栄介が答えた。途端、教室中にくすくす笑いが広がる。
吉井先生はちょっとあきれ顔になってから、再び出血をとり始めた。
しばらくして、私の親友の名前が呼ばれる。
「小宮 美羽。」
「はい。」
少し小さな声。おとなしい、美羽。
また、しばらくして。
「鈴野 光里。」
「はい。」
今度はしっかりとした声。強気な親友、光里。
それにしても、ヨッシー遅いな。寝坊しすぎ。これじゃ成績どうなっちゃうんだろう…。
「橘 結良。」
「はい。」
返事をしたのは私。返事をした後は、またヨッシーの席を見る。
「野本 巧。」
「はい。」
やんわりとした声。私の幼馴染の巧。
「日室 栄介。」
「はい。」
大きな声で返事をしてから、ヨッシーの席を見やる日室君。やっぱり、さすがに遅すぎる?
「松原 翔太郎。」
「はい!」
元気がいい巧の親友、松原君。大阪出身で、関西弁。
先生は出欠を取り続ける。ヨッシー、今日は休みかな?
先生が出欠をとり終えた、ちょうどその時。

ガラガラッ!!

派手な音を立てて、教室の後ろの扉が開く。そして、そこから一人の男子生徒がひょいと顔を出した。
「オッス!!オラ五十嵐義隆!!」
相変わらずの調子の良さで、ヨッシーは挨拶(?)した。吉井先生が少しにらむ。
「すいません。寝坊しました〜!!」
「今月3回目。シャキッとしろよ、五十嵐。」
「は〜い。」
ヨッシーは頭をかきながら着席する。クラス中がヨッシーに注目。みんな、呆れて笑ってる。
「いやーいやー。俺、新世界の王になった夢見ちゃってさあ。起きるのが惜しくて。」
クラス中に響き渡る大声でヨッシーは言う。途端、クラス中がぷっ、と吹きだした。
「何なんだよ、それ。」
日室君がヨッシーの頭を叩いて突っ込む。二人は席が隣同士なのだ。
教室中に広がる笑いに、ヨッシーは満足そうだった。

「は?ネット?」
「そーそー。実はね。新世界の王になった夢なんてみるわけないっーの。」
昼ごはんの時間。私、美羽、光里、ヨッシー、日室君、巧、松原君の7人は、一緒にお弁当やら学食やらを食べていた。
グラウンド近くにベンチがあり、そこに座って話、食べている。
「五十嵐がネットなんて、珍しいなあ。そういうのよりテニスのが大事だったんとちゃうんか?」
松原君が口をもぐもぐさせながら言うと、ヨッシーは急に体の向きを変え、
「テニスより夢中になれるものができちまったのさ…ふっ。」
「アホか。」
日室君がヨッシーの頭をはたく。
「痛いって…ま、あながち間違ってないよん♪」
「気持ちわりぃよ。普通に話せ。」
「へーいへい。俺さ、都市伝説にハマったんだ。怖い系の。で、昨日夜中もでネットで調べてた。」
「何やってんの。ヨッシー。」
光里が呆れて言う。
「怖い系って…よくそんなの、夜中に見れるね、ヨッシー…。」
美羽が言う。
「でさ、すっげーいいの見つけたの!!それ、みんなでやんない?」
「「「「「「…は?」」」」」」
6人の声が重なった。
「みんなでするって…何を?こっくりさんとか?」
巧が言う。するとヨッシーは、ぶんぶんと首を振った。
そして、何か意味ありげにニヤッとし、こう、言った。

「『一人かくれんぼ』、みんなでやらない?」


モウイイカイ
       マアダダヨ
モウイイカイ
       モウイイヨ
ミィツケタ…