ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: トワイライト・カーニバル ( No.3 )
- 日時: 2012/01/31 18:40
- 名前: 織也 (ID: KuHgV/y.)
Episode03;Strange
授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に、クラスの人間達がどっと暁とゆづきに詰め寄った。
「ねえねえ初恋さん、ここに来る前はどこの学校に通ってたの?」
「芹沢君と初恋さんって知り合い?」
「芹沢君の名前って変わってるね、かっこいい!!」
「暁って呼んでもいいか?俺のことも呼び捨てでいいからさ」
「ゆづきちゃん部活とかもう決めた?良かったらうちの部においでよ」
次から次へと止むことのない質問の声に暁とゆづきは戸惑う。
しかし、悪意を感じるわけではないので二人とも丁寧に答えていく。
暁は話している合間に、ちらりと詠律の方を見た。
何故、と聞かれると上手くは答えられないが・・・気になったのである。
視線の先には、相変わらず窓の外を見つめる詠律の姿があった。
後ろ姿だけが暁の目に映る。
『こっち、向かないかな・・』
心の中で呟いた言葉。何の意味もなく、消えて言った言葉。
暁が一瞬視線を伏せ、もう一度上げると。
暁を見つめる詠律の姿があった。
暁も、詠律も、視線を外そうとはしない。
ただお互いを見つめるだけ。
『・・・俺の声が、聞こえたのか・・・・?』
動揺する暁に対し、詠律はじっと暁を見つめる。
何の感情も表わさない表情。静かに閉じられている唇。
鏡のように暁を映す、翡翠の瞳。
揺れる暁の琥珀の瞳と交わり続ける・・・。
ふいに、詠律の唇が開き、音にならない言葉が漏れた。
『............You get lost.』
「・・・・・き、暁!ちょっと、大丈夫なの?」
ゆづきの声にハッとして顔を上げる。
そこには心配そうにこちらを見つめるゆづきの顔があった。
すぐに詠律の方を振り返るが、そこには空席の椅子と机があるだけだった。
「急に真っ青になって俯いちゃうんだもん、びっくりしたじゃない。もしかして緊張してたの?」
ゆづきの声にその場にいた皆が笑った。
しかし、暁だけは笑わなかった。・・・笑えなかった。
何故なら・・・・・・・詠律の言葉が、深く胸に突き刺さったからだった。
『・・・・・・・貴方、迷子なのね』