ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: トワイライト・カーニバル ( No.4 )
- 日時: 2012/04/01 18:39
- 名前: 織也 (ID: HHprIQBP)
Episode04;Past
「・・・え、暁、藤崎さんにそんなこと言われたの?」
昼食の時間、暁とゆづきは広い中庭の隅の木陰にいた。
この時間は、違う学年に潜入した弘一と連絡を取らなければならない。
なので、他の人間は寄せ付けないようにしなければならなかった。
「いや、言われたというか・・・囁きかけられたというか・・・」
「はぁ?なんでそんなに曖昧なのよ。いつもの<シックスセンス>はどうしたの」
「シックスセンス関係ないだろ・・・」
「何々?何楽しそうな話してるんだ?俺も混ぜてくれよ」
遅れてきた弘一がどかっ。と腰かける。
ゆづきはそれに文句を言いながらも暁の話を事細かに説明した。
「へぇ・・・そんなことがあったのか」
「そうなのよ、転校初日だっていうのに・・・変な奴と隣になっちゃたわね」
「・・・・・・・・・」
暁はゆづきの問いに答えなかった。
頭の中で、得も知れない<何か>が渦巻く。
黒い靄が晴れず、晴れないその向こうで<何か>が叫んでいる。
・・・それは、まるで俺を・・・・・・・・。
「というかその子さ、」
弘一の声に思考にダイブしていた意識が浮上する。
「アブノーマラーなんじゃないのか?」
どくり。
鼓動が大きく脈を打った。
まさか。彼女が?
今日初めて会っただけなのに、なぜか心に焦燥の念が湧きあがる。
「まさか!藤崎さんと目を合わせたけど、彼女にそんな能力見られなかったわ」
「・・・それは<千里眼>の力で確認したのか?」
「当り前でしょ。憶測で物を言うのは好きじゃないの」
<千里眼>
ゆづきの能力で、人と目を合わせるだけで
相手が何を考えていて、どんな行動をとるかが見える。
そのせいで嫌な思いもしてきたらしいが、今ではこの能力を有効活用することを誇りに思っているらしい。
「じゃあその詠律って子は違うんだな。杞憂に終わってよかったよ」
「ちっとも良くないわよ!そのあと暁体調崩しちゃったんだから!!
あれ、でも暁、よく藤崎さんの言ってることがわかったわね」
「?何がだよ」
「だって、藤崎さん英語で話しかけてきたんでしょ?あんた苦手じゃない、英語」
「・・・・あ」
「そうなのか?それはすごいじゃないか。知らず知らずのうちに苦手を克服していたんじゃないのか、暁」
言われて初めて気がついた。
確かに自分はお世辞にも得意とは言えない英語を、聞き取っていた。
・・・・そもそも、彼女が囁いていた言葉をそれだと認識していなかったかもしれない。
拒絶どころか、快くその音を俺の耳は受け入れていた。
・・・・・・・・・・・どういう、ことだ?それに・・・・・。
何故彼女は、俺が迷子だとわかったのだろう。
・・・俺に、過去の記憶がないことを・・・・・・。
「・・・暁、また昔のこと考えてるでしょ」
「・・・・・・・ああ・・・」
ゆづきは暁の顔を心配そうに覗き込む。
「あまり気にするな。時が来れば思い出すさ」
「・・・・そうだと、いいんですが・・・」
三人の間を、誰かが笑うように密やかに風が駆け抜けた。
誰もいない教室。
静寂の支配するそこに一人、佇むのは微笑を湛える者。
「ははっ。まだ寝てるのか<アイツ>は。何をやっているんだか・・・」
その者は窓の桟に手をかけ身を乗り出し、目的の場所を見つめる。
その視線の先には・・・芹沢 暁。
「早く起きろよ、暁。目を覚ませ。白昼夢はもう終わりだぞ?それとも・・・・」
勢いよく拳を振り上げ、窓に叩きつける。
辺りにガラスが散乱し、光を受けながらキラキラと地面に落ちていく。
振り上げられた手には赤い血がじわじわと滲み流れる。
「二度と起きられないように、その目を潰してやろうか・・・?」
歪んだ心。狂った笑い声。
それらを所有するのは誰か。
・・・目覚めを期待されているのは、誰なのか。