ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: トワイライト・カーニバル ( No.8 )
日時: 2012/04/21 19:30
名前: 織也 (ID: l0EYH8mH)

Episode08;Another


「あらあら、迷子の坊やはどこかしら?」
「迷子の坊や、お日様ポカポカいい気持ち」
「優しい夢で、坊やは迷子」
「いいのよいいのよ、おやすみなさい、迷子の坊や」
「いいのよいいのよ、そのままで・・・・」


「・・・・・いいわけねぇだろ・・・・?」






起きないの?ねえ、いつまで夢の中?


・・・・・早く、起きてよ、私の・・・・・・・




「・・・・私の・・・?何・・・・」

目覚めた第一声は、謎めいた言葉だった。



「何それ。変な夢ね」
「疲れてるんじゃないか?暁、真面目だから〜」
「俺は疲れてないし、普通のことをやっているまでです」

朝の登校時間、三人で通学路を歩く。
楽しい時間、優しい時間。
無邪気さを取り戻せる、唯一の時間。


「あ。詠律ちゃんだ」


弘一の目線の先には、確かに詠律が居た。
周りの誰ともつるむことなく、一人静かに歩いていた。

「おーい、おはよう!詠律ちゃーん!!!」

弘一の大きな声に周りを歩いていた人間までもが振り向く。
詠律もその声を聴いて後ろを振り向いた。が。
眉間にものすごいしわを寄せて、走り去ってしまった。


「・・・あんたすごい嫌われようね」
「いや〜ここまでの嫌われようは逆にすがすがしいね!」
「・・・・・・・」


それから教室に到着し、普段通りに授業を受けた。
いつもと違うところと言えば、隣に藤崎さんが居ないことだけ。
教師の話によると、体調不良で保健室で休んでいるらしい。
授業中、ちらちらと隣に視線を送ったが、空席のそこは寂しげに存在するだけだった。

気付けば、授業も終わり、日も暮れかけていた・・・。


「じゃあ芹沢、日誌を書いて棚に提出しておくように」
「はい」


担任から日誌を預かり、今日一日の出来事を記していく。
ペンを紙に走らせ、欠課者の欄で手を止めた。

「・・・藤崎さん、大丈夫かな・・・・・」

ぽつり。呟くと同時に大きな音を立てて扉が開いた。
それに驚きながらも視線を向けると、そこには詠律が立っていた。
俯いて、じっとしている。

「あ、藤崎さん・・・・具合はどう?」
「・・・・・・・・・・」


何か、変だ。
いつもと違うというか、おかしいというか・・・・。
そう思っていると、詠律は顔を上げ、暁の方を見つめて。


にこりと、笑った。


「っ・・・・・・・・・・!!」

途端、背筋に悪寒が走る。
本能が叫ぶ。直感が告げる。
逃げろ。危険だ。彼女は・・・・・!!!
踵を返そうとする。が。

「どこに行くの?暁君」

すぐそばまで、詠律が来ていた。
気付かなかった?俺が?
一瞬で足払いをされ、床に押し倒される。
その上に跨るように、詠律はのしかかった。

夕日のオレンジ色の光が、教室と、二人を照らす。

「・・・君は、藤崎さんじゃ・・・ないな・・・・・」
「・・・どうしてそう思うの?」
「・・・・・・わからない、が・・・・・」
「・・・わからない・・・・・」

詠律の肩が震える。
くつくつ。くつくつと口からは、言葉にならない声が聞こえて・・・。


「あはははははははは!!!!大正解だよ、暁っ!!!!」


不気味な笑い声と化した。


「うん、そう!私は詠律じゃないよ?あれは私の<表の顔>!
 案外簡単にみんな信じてくれたからちょろかったわ!!」

うふふ。と楽しそうに笑いながら、暁の頬を撫でる。

「なあ、暁・・・お前もそろそろ起きろよ・・・」
「?起きるって、何を言って・・・・」
「起きるっていうのは<目覚める>ってことだよ。それぐらいわかるでしょう?」

心臓がバクバク鳴っている。
脂汗が湧き出てくる、衝動が、止まらない・・・・・!


「ねえ、あなた<誰>なの?」



その声と共に、俺は絶叫した。