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Re: トワイライト・カーニバル ( No.10 )
日時: 2012/04/27 21:52
名前: 織也 (ID: l0EYH8mH)

Episode10;Fours


「み、ミラー・・・・・?」
「あはっ。その通り。流石はオブザーバー、観測はお得意のようだな」


ゆづきは苦しげに言う。
それはそうだろう。ゆづきの上にはどっかりと詠律が跨っているのだから。
詠律は弘一の問いにけらけらと笑って答える。


「私の能力はすべてを映す。映された能力は私のもの、思いのままに行使することができるの。
 ・・・千里眼が私の能力を見抜けなかったのはその所為。私の瞳に映った<自身の能力>を見たから。
 自分自身の能力が見えたところで、私の能力がわかるわけじゃねえもんな」
「・・・・・君には脱帽せざるを得ないな。だが」

弘一は一歩前に進む。

「俺の大事な仲間に、手を出すのはやめてくれないかな」
「・・・・・・・・・」

弘一の真紅の瞳には真摯の意思が映る。
詠律は静かにそれを見つめる。

「・・・今日はそうしておこうか。お前を相手にするのは厄介そうだ」


詠律はゆづきから退く。
かかっていた圧力から解放されたゆづきは、途端入ってきた空気に思わず咳き込んだ。


「けほっ、こ、こうち・・・暁・・・」
「ああ、気を失っているだけだ、心配するな」
「そっか・・・・・・よかったぁ・・・・・・・」


ゆづきは顔の筋肉を緩め、その場にしゃがみ込んだ。
詠律はそれをただ見つめる。


「・・・・・暁に何したの、藤崎 詠律」
「別に何も。ただ聞いただけ」
「・・・・・・・何を聞いたのよ」
「答えてやる義理はない」


愉悦を含んだ顔をする詠律に、ゆづきは苦渋の表情を見せる。


「・・・とりあえず、君の名前を聞いてもいいかな」
「・・え、なに、こいつ詠律って名前じゃないの?!」

弘一の言葉を聞いて驚いたのか、オロオロと詠律と弘一の顔を交互に見る。
暫く黙っていた詠律は、ふう。とため息をつき観念したように手をひらひらさせながら言った。


「<みなも>。私の本当の名前は<草柳 みなも(くさなぎ みなも)>。よろしくね、SMSの皆さん」
「なっ、私たちがSMSだって知ってたの?!」
「当たり前だろ。ミラーを使えばすぐわかることだ。言っとくけど私はアブノーマラーじゃねぇからな。ちゃんと登録してるぞ。確認しとけ」
「っ!!!!!あんたに言われなくても確認するわよ!!!!」

ぷりぷりと怒りを露わにしながら携帯をひっつかみ、電話を掛けながら教室を出て行ってしまった。
残されたのは意識のない暁と、弘一とみなもだけだ。

「あんたは行かなくていいのかよ。オブザーバー。暁を医療機関に連れて行くんだろう?」
「・・・・・みなも、ちゃんでいいのかな」
「かまわない」
「みなもちゃんは・・・・・・」



「どうやら、嘘つきみたいだからね。信用できないんだ」



「・・・・やっぱりお前苦手だわ。すべてを映すミラーを読むだなんて、いけ好かない人ね」
「褒められてるのか、貶されてるのか・・・今は些細なことだね。だけど覚えておいてほしい」



「俺は君を信用しない。みなもちゃん、君をね」



「・・・・・・・・・なら、<藤崎 詠律>を演じる私なら信用してくれるのかしら」
「・・・表向きの君の方が、まだ信用できるかな」
「そうか。ならそれでいい。お前の信じるものだけを信じればいいわ」


踵を返し、みなもは教室を後にする。
ただひとつの呟きを残して。



「所詮、誰も信用するに値しないのだから・・・あいつを除いて」