ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: トワイライト・カーニバル ( No.12 )
- 日時: 2012/04/28 23:09
- 名前: 織也 (ID: l0EYH8mH)
- 参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_m/view.html?800258
Episode11;always
いつもの通学路。いつもの風景。
いつもの時間。いつもの場所。
・・・・いつもと違う、異常の頭痛。
『昨日のことが、まだ夢みたいだ・・・・・』
痛む頭を押さえながら、暁は通学路を歩む。
ゆづきは弘一に朝一で呼ばれて、今は居ない。
一人というその時間に、暁は昨日のことを思い出していた。
_なあ、暁・・・お前もそろそろ起きろよ・・・
_起きるっていうのは<目覚める>ってことだよ。
_ねえ、あなた<誰>なの?
「・・・・どうしたの?暁君・・・・」
「っ!!!!!!!!!!」
・・・・そういえば、思考の海から引きあげるのは、いつも彼女だった。
突然の声に驚き、バッと振り向く暁。
その先には、無表情の詠律が立っていた。
暁は眉間にしわを寄せる。
「・・・・・具合、悪いの?だいじょう「悪いけど」」
詠律の声を遮り、暁は告げる。
「俺は、君を信用しない。もう俺に関わらないでくれ」
「・・・・・・・・あかつきく「じゃあ」・・・・・」
それでも話しかけてきた詠律を、素っ気なく振り払う。
・・・・それを見つめている詠律の顔は、少しの感情がうかがえた。
鏡のような瞳が、光を宿し、一筋の雫が頬を伝った。
「よし、じゃあ出席を取るぞー。相田、池澤、石岡・・・・・・」
いつものように出席を取る教師。
暁はちらりと隣を見た。
・・・・詠律の姿はそこになかった。
『朝は会ったから、休みとかではないよな・・・・・』
自分の言葉に傷ついたのだろうか・・・・まさか。
彼女はいつも無表情で、いつも何事も無かったかのように過ごしていた。
そんな彼女が、俺の<言葉>なんかで・・・・・・。
そこまで考えて、暁はハッとした。
・・・彼女は、俺に何と言った・・・・・・?
あの時、二人だけの時間。
彼女は・・・・・・・・。
_言葉は、<私>だから
言葉が・・・彼女・・・・・・?
なら、彼女を傷つけた、俺の言葉は・・・・・・。
彼女を傷つける、彼女自身の<刃>と成り得たのでは・・・・?
そうしていると、教師がその名前を呼んだ。
「藤崎、藤崎 詠律ー・・・なんだ、藤崎は休みか?」
「・・・・っ・・・」
妙な罪悪感に襲われる。
「藤崎は休みか、よし、じゃあ次、ふじや「あー待ってくださーい」」
ガラリ。
教室中の視線がそちらに向けられる。
その視線の渦中にいたのは・・・・・・。
「藤崎 詠律、登校してマース」
詠律だった。
いつもと違う彼女の雰囲気に、教室がざわつく。
教師は驚愕しながらも、詠律に話しかける。
「ふ、藤崎、なんかいつもと違わないか・・・・?」
「え、そうですか?そう見えます?あはっ、イメチェンってやつですよー」
けらっ。と笑う彼女に、ますます教室がざわつく。
「いや、しかしだな、具合が悪いなら保健室に・・・・」
教師の狼狽えた姿を見て、詠律はぎろり。
視線を鋭くした。
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ、無能。私は私だろぉが。突然見ていたものが変わったからって、本質が変わるわけじゃねぇんだよ」
一瞬にして静寂が訪れる。
教師はごくり。と唾をのむ。
それを納得したように、詠律はズカズカと席まで歩いていき着席する。
ハッとした教師はあわてて中断していた出欠確認を再開した。
「・・・・おい」
「・・・・・・・・・・・・・」
暁が小声で話しかけるが、詠律はこちらを見ない。
それに苛立ちながらも、暁は放課後になるのを待っていた。
「ったく、何で私がこんなことしなくちゃいけないのよ。は?欠席者?知るかそんなもん」
詠律はぶちぶちと愚痴を言いながら、日誌を書きとめていた。
「・・・で、私に何か御用かしら、芹沢君?」
詠律の前に立つ暁に、詠律は苛立ちを孕む瞳で問いかける。
暁は少したじろぎながらも、話し始める。
「・・・今日、俺を避けていただろう」
「あんたが私に関わるなって言ったんでしょ」
「・・・・今朝のことは、悪かった」
「別に、私は気にしてないわ」
視線を暁に向けずに答える詠律。
暁は苛立ち始める。
「・・・・お前、今はみなもだろ」
「そうだけど」
「何で急にやめたんだ、藤崎 詠律を演じるのを」
「急にめんどくさくなったのよ。あんた達にはバレちゃったし」
「・・・・・・・・・・・・」
「まあ名前はそのまま<藤崎 詠律>で通すけど。他の奴らもそれで覚えてるし、あとは慣れれば「そうじゃないだろ!!」」
暁は怒鳴った。
「・・・・昨日の、あれはなんだったんだ・・」
「は?」
「俺に聞いてきただろ、貴方は誰って」
「・・・・ええ」
「あれは、おまえじゃない」
「だからそうだって言ってるで「違う」」
暁の言葉に、みなもは手を止める。
「あの言葉は、お前の言葉でも、<藤崎 詠律を演じる草柳 みなも>の言葉でもない」
「・・・・はっ。じゃあ誰の言葉だっていうのよ」
「藤崎 詠律のものだろう」
「・・・・・馬鹿じゃないの。詠律は私の表の顔に過ぎないわ。人格の一つよ」
「いや、違う。あれはお前の言葉じゃない」
「・・・・・・・・」
「藤崎 詠律は、存在するだろう」
暁の言葉に、みなもの表情は歪んだ。