ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: トワイライト・カーニバル ( No.13 )
- 日時: 2012/04/28 23:46
- 名前: 織也 (ID: l0EYH8mH)
Episode12;Shout
「藤崎 詠律は、存在するだろう」
「・・・・・・・・・・・・存在しないわ」
「嘘だ、お前は嘘つきだからな。信じない」
「・・・・・・」
ぎり。と歯を食いしばるみなも。
握っているシャーペンから、ミシミシと嫌な音がする。
様子を不審に思い、暁はみなもに近寄る。
「おい、だいじょうぶ「どうしてっ!!!!!」」
叫んだのは、みなもだった。
「どうしてそこまでわかって、それ以上に進もうとしてくれないの!!!!」
暁は驚き、立ち尽くす。
「馬鹿じゃないの?!ああ、そうだよ!!詠律は存在するよ、私とは全く違う別個人だよ!!!それを見抜いたのはあんただけだ!!!
なのにどうしてそれ以上がわからないんだよ!!!!なんで思い出してやらないんだ!!!あの子はずっと待ってるのに!!!
どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてっっっ!!!!!!」
バキン。とシャーペンが折れた。
みなもの手からは真っ赤な雫が流れる。
「・・・・・どうして、あの子を傷つけたりしたの・・・・・・・・・」
「っ・・・・・・」
みなもの瞳には優しさと、悲しみと・・・・・怒りが揺らめいていた。
「・・・・手、貸して」
「・・・・・・・・・・・・・・」
無言で、動こうとしないみなものてを無理やり握り両手で包む。
途端、暁の両手が光り、みるみる内に傷が治っていく。
それを、みなもはじっと見ていた。
「・・・・<ヒール>、か・・・・」
「・・・流石だな。俺の能力は、人間の治癒能力を高め、瞬時に怪我や病気を治す<ヒール>。・・・・大丈夫か?」
「・・・・<私>はね。でも<詠律>は大丈夫じゃないわ」
「・・・・・・・・・」
みなもは握られていた手を振り払う。
その視線は、暁を射抜く。
「・・・藤崎さんは、俺に何を思い出してほしいんだ。目覚めろって、どういうことだよ」
暁は、みなもに問いかける。
「・・・・・それを私に言わせるのは卑怯だわ。自分で考えろ、暁。・・・・詠律が何を望んでいるのか」
それだけ言って、みなもは日誌を掴んで教室を出た。
「・・・・・何だあいつ、思い出したのかと思った・・・・。くそ。ホント鈍いじゃねえか」
「誰が、何を思い出したのかな?みなもちゃん」
他者の声に思い出し、その方を振り向く。
「・・・・オブザーバー・・・・・・・・」
「はは。君はやっぱり嘘つきだったね、みなもちゃん。藤崎 詠律を演じていただなんて・・・・」
「遠回しな言い方だな。つまり何が言いたいんだ」
挑発的に笑うみなもだが、日誌を握る手には汗が湧き出る。
「・・・・そうだね、単刀直入に言おうか」
「君の正体と、藤崎 詠律の過去が、知りたいんだ」
「っ、何を言って・・・・?!」
後ろから羽交い絞めにされるみなも。
仕掛けてきたのはゆづきだった。
「な、おい離せ!!!千里眼!!!!!」
「私があんたの言うことなんて聞くわけないでしょ!!大人しく弘一に読まれなさい!!!!」
「ふざけるな!!お前バカだろ!!!!おい、離せ!!ちょ、来るな!!!!」
ゆづきと言い合っている間に、弘一はどんどん近づいてくる。
みなもは焦る。
「さて、君のこと、少し<読ませて>もらうよ?」
「っ、や、やだ・・・・・」
弘一の手が、そっと、みなもの額に触れた。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
みなもの声は、誰もいない廊下に響いた。