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Re: トワイライト・カーニバル ( No.14 )
日時: 2012/05/07 22:21
名前: 織也 (ID: l0EYH8mH)

Episode13;others


みなもは叫ぶと同時に意識を手放した。
倒れこまないようにゆづきがしっかりと後ろから支える。
弘一はそんなみなもから、手を放そうとはしない。

「弘一、読めそう?」
「ああ、たぶん大丈夫。ミラーであっても、意識に潜り込めば何の問題もない」


弘一は言うと、ゆっくりと目を閉じた。



真っ暗な闇の中。
弘一は平衡感覚もなくそこに居た。
彼の能力<オブザーバー>は、触れた人間の情報を読む。
性格、素性・・・その人間のすべてがわかるのだ。
そんな彼が今いるのは、草柳 みなもの意識の中。
ふつう、意識は個人のすべてを表すのだが・・・・・・。


『何も・・・・ない・・・・?』


みなもの意識の中には何もなかった。
何もない。すなわち人格の無を意味する。
しかし、彼女は確かに<草柳 みなも>を名乗った。

どういうことかと弘一が考えを巡らせていると、弘一の目の前に白く輝く物体があった。

キラキラと、何もないそこで輝いている。


『・・・・鏡・・・?ミラーの能力か・・・・・』


弘一がその物体に触れようとした。すると。




物体の周りから無数の手が伸びてきて、弘一を突き飛ばした。


『な・・・・・・・・!!!』



驚愕に顔を歪ませた弘一の耳に、何とも言えない音が響く。



アリア ニ フレルナ!!!!!!!!!!!!!!!!







「っ・・・・・・・・・・・・・・・!!!」

現実世界に意識が戻った弘一はその場に倒れこむ。
みなもも意識を取り戻し、ゆづきを振り払う。
精神的に疲労しているのか、みなもは息を荒げていた。


「・・・・っ・・・はぁ・・・・・・満足か、オブザーバー・・・」
「・・・・君は、いや・・・・・」



 ・・・
「君たちは一体、なんなんだ・・・・・・・」



「・・・・・草柳 みなも、だよ・・・・ぅ・・・・」


よろめきながら、みなもは弘一たちの目の前から消えて行った。
弘一とゆづきは呆気にとられていた。


「ちょっと、君たちって何なのよ」
「・・・・・彼女の、みなもちゃんの中には複数の人格が存在していた」
「?多重人格ってこと?」
「いや、違う」



「無数の全く異なる人格が、<草柳 みなも>を形成しているんだ」



「・・・・・・え、ちょっと、何よそれ・・・・」
「俺にもわからない、一体何なんだ・・・・・・・・」



弘一とゆづきは、今は居ないみなもの消えた先を見つめていた。