ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: トワイライト・カーニバル ( No.15 )
- 日時: 2012/06/03 14:31
- 名前: 織也 (ID: HHprIQBP)
Episode14;1Danger
「・・・無数の人格_」
「そう!!それがアイツの正体なのよ!!!」
「普通は有り得ないんだけどね。いくつもの異なる別人格が一つの人格を作り上げるなんて」
「やっぱりアイツおかしいわ!!!!!アブノーマラーよ!!」
「でも調べたら確かに登録はされていたんだろう?」
「うっ・・・・!!」
ゆづきと弘一は熱心に討論を繰り広げていた。
そこはSMSが管理する喫茶店。
組織が本格的に草柳 みなも、藤崎詠律について検討し始めたので、その対応を3人に求めてきた。
対策を練るために学校を休んでそこにいるのだが。
・・・・・暁だけは浮かない顔をしていた。
『前にも・・・・こんなことがあった気がする・・・・・。
なんだったっけ・・・・・。
たくさんの人格・・・・・一人の人間・・・・・・・たくさんの・・・・・』
・・・・・・・・たくさんの***
「っ!!!!!!!!」
何か、いけないことを、考えてしまった気がする。
気づいてはいけないこと。彼女にかかわること。
「・・・・・あ!!!あれ!!!」
ゆづきが声をあげたので、弘一と暁もゆづきを見た。
ゆづきの目線の先、窓の向こうには・・・・みなもがいた。
生気の宿っていない顔をして、ふらふらと憶測ない足取りをしている。
・・・・どこかに向かっているようだ。
「・・・後を着いて行こうか」
「「え?!」」
弘一の提案に二人が驚く。
「ここで煮詰まっていても何も始まらないし、彼女に聞いたほうが早いだろう?」
「・・・そうね!!じゃあ早く追いかけましょ!!」
「・・・・・・・」
弘一とゆづきが先を行く後ろで、暁は表情を曇らせていた。
心が落ち着かない。悪寒がする。
・・・それを見透かしたように。笑うものが居るとは知らずに。
みなもがたどり着いたのは、ビルだった。
マンションのような、そんな建物。
しかし、人が住んでいるとは到底思えないほど荒廃していた。
みなもは躊躇せずに中に進んだ。
「私たちも行くわよ・・・・・あか、つき・・・・?」
暁は、ひどく動揺していた。
目を見開き、息も荒く、目に見えるほどに震えている。
「ダメだ・・・・・ここは・・・・!!」
脳が警鐘を鳴らしている。
ここは危険だ。行ってはいけない。関わってはいけない。
だって、俺は******いけない。だから・・・・・!!!!
ここはダメだ。ダメだダメだ!!
ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだ!!!!!!
「暁」
ポン。と暁の肩に手を乗せたのは弘一だった。
暁は視線をあげる。
いつもの、人のよい笑顔。
ほっとした。わかってくれたのか。
しかし、彼は天使のほほ笑みで言ったのだ。
「ほら。早く行こう、暁。君のためにも」
グイっと肩を引っ張り上げ、暁の手を離さずに廃墟へと歩を進める。
暁の心臓はだんだんと大きく脈を打つ。
ゆづきは尋常ではない暁の様子を心配しながらも、後を追う。
みなもが入って行った部屋に、三人も入る。
とても、とてもとても広い部屋。
その部屋の中央に、みなもは座り込んでいた。
「ダメだから・・・・・・守らなきゃ・・・・・殺す・・・・・苦しい・・・・助けてあげないと・・・・・・」
ぶつぶつぶつぶつ。
みなもは呟いている。
感情をこめているわけではなさそうだ。
言葉の羅列を吐き出しているだけのよう・・・。
「草柳 みなも!こっちを向きなさい!!」
ゆづきが声をあげると、ぴたりと呟きがとまった。
ゆっくりと立ち上がり、彼女はこちらを振り向く。
翡翠の瞳が、ゆらりと揺らめく。
「残念。私は、みなもじゃない」
「・・・・藤崎 詠律のほうね。どっちも同じだわ!」
「同じ?・・・・千里眼の使い手のくせに、その目はまるで節穴・・・・・」
「なっ・・・・・・」
詠律は、静かに笑った。
初めて会った時と大分印象は違うが、はっきりと、何故だかわかる。
・・・・・・今目にしている彼女こそが、藤崎 詠律なのだと。
「みなもは私を守ってくれた・・・・・今はいない<あの人>の代わりに・・・・それを貴方達は傷つけた・・・・許さない」
「<許さない>!!!!!!!」
詠律が叫んだ瞬間、詠律の周りに風が起こった。
あまりの風の強さに、三人とも床に膝を着く。
「弘一!!こいつまさか・・・・!!」
「ああ、彼女は<言霊使い>だ・・・・」
言霊使い。
言葉に命を宿し、力を持たせ、放つ能力を持つ。
「肉体的にも精神的にも影響を与えるから、組織が一番警戒していた能力者・・・・・」
「ああ。だからSMSの本部も地下にあったんだ。言霊の影響を受けにくいから・・・・」
「<起動><風神><怒号を風とせよ><咆哮を刃とせよ><鋭き剣となり、彼の者たちを切り裂け>!!!!!」
「来るぞゆづき、銃を構えろ!」
「わかってるわ!!言霊の発動には時間がかかる、その間に・・・!!」
二人が銃を構える。
暁の瞳にそれが映る。その瞬間。
暁の脳に衝撃が走った。
・・・ああ、そうか・・・・俺は・・・・・・・。
「撃て!!!!!」
銃声が辺りに響いた。