ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 道化師は盤上で笑う ( No.10 )
- 日時: 2012/02/03 20:36
- 名前: 紅城 ◆eZsQmZilro (ID: w0.JbTZT)
.
「先程は手荒な真似をしてしまいましたね、すいません」
淡々とした口調で、『人造人間/アンドロイド』は言った。
全くだ——瞳に力を込めて翔太は彼等を睨んだ。
しかし、人造人間である彼等に通用するわけもなく、翔太は睨むのをやめた。
——第02話 策略家は世界を嘲笑う
今翔太たちは街に来ていた。看板にはよく分からない言葉で街の名前であろうものが書かれていたが、勿論翔太には読めるわけもない。
——それよりも驚いたのは街並みについてだ。
何処を見ても四角い建物やビルはなく、丸い球体の形をした建物が並んでいる。車だってカプセルのような形で中の人は運転もせずくつろいでいて車が自動で運転しているようだ。
そのほか驚くことにこの世界の機械は回線やコードがなくても最初の一回だけ電気をぶちこんでやれば100年持つらしい。
「マジで変な世界に来ちまったな…」
翔太はぽつりと呟いた。翔太だって馬鹿ではない。これでも科学部所属だったのだ。
——俺は異世界に来たのか。
此処は紛れもない異世界だ。
見たところ技術が進歩しているのがわかる。それだけなら未来に来てしまったと考えるのだが、まず言葉が違うのだ——異世界に違いない。
そう考えていれば、人造人間が立ち止まり振り返った。
「着きました。世界政府破壊組織対策本部前で御座います。」
長ったらしい名前に不快だというように翔太は顔を歪めた。
目の前には翔太の世界でいう東京タワーのようなものの先端に丸い球体の着いている建物がある。銀色にギラギラと輝いていて、眩しい。
「それでは中にお入り下さい」
「う…、うん。」
翔太はおずおずと自動で開くドアを抜けた。
中では忙しなく人が動いていた。
奥のほうにはエレベーターだろうか——丸い円状の形をした床が上へ下へと動いている。
翔太はあたりを見渡しながら人造人間についていく。
エレベーターへのって、動く廊下に驚きながらも数分かけて着いていくと一際大きいドアの前についた。
『パスワードをご入力ください』
「うをっ!ドアが喋ったじゃねえか」
「少々口を閉じてもらえませんか。集中できませんので」
人造人間はスムーズに指を動かしてパスワードを入力してゆく。
それにしても長いパスワードだ。
他の人造人間が言うにはこの世界には機械が多いためパスワードが被ることが多々あるそうだ。だからパスワードを長くし、被らないようにしなければ個人情報が漏れてしまうらしい。
そうこうしているうちに人造人間がパスワードを打ち終わって、
『パスワードが開錠されました』
という声がドアから聞こえ、ドアは開けられる。
ドアから光と音楽の音が漏れ始め、翔太は目を細めた。
.