ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: それ、死ねば治るよ ( No.1 )
- 日時: 2012/02/25 23:31
- 名前: 暁 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
『1話』
つまらない。意味がない。どうでもいい。
僕の心の中は、おもにこの3つで構成されている。
ぼんやりと見つめた黒板の前では、髪の薄いおっさん教師が、熱弁をふるっている。唾を飛ばしまくるおっさんに、前の席の奴らは、迷惑げだ。後ろの席万歳。
…つまらない。
おっさんの授業は、生徒置いてけぼりの自分語り。このおっさんから学び取るものなんて何一つない。つまりこれは授業とは言えない。授業とは何かを考えていた方が、よっぽど面白い。
…意味がない。
授業じゃないなら、時間の無駄じゃないか。本でも読んでたほうが、よっぽど有意義じゃないか。あんたたちの理解しがたい話より、良いよね。
…どうでもいい。
色々並べ立ててみたものの、正直全部どうでもいい。学ばなくたって、僕らの時代には、僕らの日本語が正しくなっていくんだから。
僕の心を代弁するかのように、耳を覆い隠す大きめのヘッドホン。そこから流れるのは、お気に入りのバンドの曲。こんな僕でも、このバンドの切実な歌詞には、心打たれるわけ。全てを否定しながらも、肯定を求める。そんな歌詞。
「バッカみてぇ」
こぼれ出た言葉は、偶然にも、歌詞と重なった。残念ながら、僕の吐き出した言葉は、ボーカルほど綺麗じゃないけど。それでもなんだか、嬉しくなった。ただの、偶然なんだけどね。でも。あぁ、本当に。バッカみてぇ。自分の話に意味がないって気付ねぇおっさんも。将来ばかり夢見て、くだらねぇ話を必死に聞いてる真面目グループの奴らも。逆に、なにも考えないで馬鹿騒ぎしてる不良グループの奴らも。その他変人共も。僕も。みんなみんな、バッカみてぇだ。むしろ馬鹿だ。不治の病だ。
死んじゃえ、みんな。馬鹿に付ける薬はないけど、死ねば治るんだからさぁ。
「君、この問題を解きなさい」
僕の呟きが気に食わなかったらしいおっさんは、にやにやしながら僕を指名する。あぁ、聞こえていたんだ。黒板に書かれた、長ったらしい問題に、ため息。面倒だけど、なんかムカついたので答えてやれば、当たり前ながら正解。残念だったな!おっさん、あんぐり。生徒は小さく、すげぇ、と呟いている。本当、馬鹿じゃねぇの?おまえら、難しいと面倒の区別もつかねぇの?ネタじゃなくて、ガチで?
あぁ、本当に、世界は馬鹿ばっかりだ。なんて、うんざりしながら、今日も僕は、貴重な資源を消費していく。