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Re: 動物氏族、 ( No.2 )
日時: 2012/04/19 22:49
名前: 夜坂 ◆/mY1Y8jdz. (ID: zfUJEuV5)

第一章 第二話  ライオン族とハイエナ族

ライオンが、自分の背中に乗れとギルに言った。
ライオンは話していると、とても優しい奴だった。自分達がギルの言葉を理解できるわけ、ギルの兄を殺した【喰霊】について。そして、何故兄に呼ばれてきたのかを詳しく。
<お前の兄は俺達の命を救った。その恩を返すだけのこと>
そう言ったライオンがハイエナに<そうだろう?>と問うと、ハイエナはその時を思い出したかのように優しく微笑んで<ああ>と答えた。ギルの知らないところで兄は交流を深めていたのだ。それが誇らしく、けど同時に心のどこかで嫉妬心が生まれた。
「ところで、今から何処に向かうんだい?」
<さっき、ライオンが話したろ。ハイエナは人の話を聞かないは嫌いだ。>
「確かにライオンは話してくれたよ。だけど、具体的にはどの方角に行くんだ?」
<もう一度言うが、ハイエナは人の話を聞かない奴は嫌いだ。お前の兄が南と言ったろう>
「あ、そうだ」
<南にいけば、俺を崇める氏族とハイエナを崇める氏族がいる。>
「って、ことは……神獣なの?」
<あいつらにとってはな>
そんな大切な存在の背中に乗っている。ギルはそのことを思い、少し戸惑ったがライオンが安心しろとでも言うかのように笑った。ギルはそれを見て笑い返して、少し崩れてしまった体勢を元に戻した。ハイエナは前を走り、ギル達のやり取りを無視してだんだんと言ってしまった。それを追いかけるようにライオンは速度を速めた。
「わっ」
体勢を戻したばかりなのに、また、体勢を崩したギルをライオンは笑った。ギルは恥ずかしいのと楽しいのが雑ざって結局はまた笑った。
<そろそろ、着くな。ハイエナ>
<何だよ>
<速度を緩めとけよ。いくら急に止まれるとは言っても俺の背中にはウサギ族の人間がいる。さすがに危ない>
<面倒>
ハイエナはそういいながらも、今度は徐々に速度を緩めていった。
<さぁて、着くぞ。ギル、ライオン族の奴にあったらまずは拳を作り、それを額に当てろ。それがライオン族の挨拶になる。これは他族が的ではないと示すのにも使えるのだ>
「分かった」
ライオン族とハイエナ族は共に住んでいた。理由を聞くと、ライオンとハイエナがよく共に行動するので神獣にあわせようという族長の話し合いの結果だという。ただ、二つの氏族があわさっても人数は30人程度だった。やはり、王の氏族は特別の血筋にしかなれないものなのだ。
ギルはライオン族とハイエナ族の領土へと踏み込んでいった。途端、ウサギの死臭があたりを漂った。嫌いな匂いだ。自分の氏族の神獣が殺された匂いなのだからまあしょうがない。
<すまないな。俺達の主食が主食だ>
「謝らないで」
ギルは鼻を押さえながらもライオンにそう言った。
ライオン族とハイエナ族の人達は、自分達の神獣が帰ってきたのを確認すると、早速ながら五人槍を持った屈強な男がギルを囲んだ。ギルは強く握った拳を額に当てた。すると、五人は槍を下ろして何処かへ消え去っていった。なかなか早い反応にギルは少し恐怖を覚えた。
<挨拶をすれば、手を出さない。>
「そう、有難う」
<では、着いて来い。お前のこれからの仲間を俺の氏族からつける>
ライオンはそう言って、一つの小屋に入っていった。ギルはそれを慌てて追いかけた。
中にいたのは優しそうな顔の男性と厳しそうな顔の男性だった。二人共、年はギルの兄と同い年くらいだろうか。優しそうな顔の男性はギルを乗せてきたライオンではない別のライオンを赤いペンタクルの刻まれた左手で撫でていた。
「初めまして。ギル君」
ライオン族の族長、ルァーニャだった。
そして、厳しそうな顔つきの男性は小屋の壁に寄りかかり目を閉じて腕を組んでいた。ギルの存在に気付くと目を開けて、だんまりと口を開かずにギルを睨みつけていた。彼はハイエナ族の族長、キエル。
王の氏族の族長は統率力や体力が必要な為、比較的若い者が務めるらしい。
「さぁて、ギル君。兄さんのことは残念だったね。だけど、これがこの世界だ。我慢するしかない」
「はい」
「では、兄さんからずっと南にいけと言われ、僕達の神獣に此処まで連れてこられたらしいけど。君には今から一週間此処で少し身体を鍛えて、それから旅に出てもらう。旅には僕もキエルも一緒に行くけどね」
「面倒だ。」
「五月蝿いよ」
「ふん……」
「じゃあ、早速だけど……訓練開始だ」