ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 人生は選択ゲーム ( No.2 )
- 日時: 2012/02/12 15:24
- 名前: 結縁 ◆07n7WL3vxg (ID: 2bMKvkP1)
#プロローグ#
人とはどうしてこんなにも面白いのだろう?
この日常が当たり前のものだと思っている。この……ランクが全てだという狂いきった世界を当然のものとして受け止めている。
それが、私には不思議で面白くてたまらなかった。普通、可笑しいと思わないか?
「ねぇ、ねぇ、見て、あの子……」
「あの、目立つゴスロリ服……一年生での数少ないSランクの一人、倖瀬沙羅じゃない!?」
「ちょっと! 声大きいって。聞こえるよ」
ほらね? 耳を少し傾ければ、皆ランクのことばかり。
本当に、可笑しいったらありゃしない。
そんな人達は……選択するまでもなく、無視に限るわね。噂話をしている子達の横をすり抜ける様にして、『上級学科』に向かった。
私の居る場所は、『上級学科』と『下級学科』そして、『スペシャル学科』と三つに分かれている。それぞれに能力差はもちろん、境遇にも差がでる。しかし、上級者だからだといって良いことばかりでないのがこの場所の嫌な所だ。……下級者の人達は何も知らないだろうが、能力の力が上がり、ランクが上がるほど私達への風当たりは増す一方なのだ。
特に、下級生である私のような者がランクが高いと非常に絡まれやすい。それがとてつもなく迷惑極まりなかった。
「おい、一年の天才ってお前のことだろ? ……って何無視してんだよ!」
ほら、噂をすればすぐこれだ……。私は天才でも何でもないというのに。学年が一つ上というだけでこの態度。理解出来るはずもない。
こんなとき頭に浮かぶのは幾つかの選択肢。私は基本的に話すことはない。だから変わり者だと思われることも多いけど、能力が能力なのだから仕方ないんだ。
そうこうしてる間にも思考は巡り、選択肢が浮かんでくる。
一つ目は——無視して通り過ぎる。
二つ目——愛想笑い後、重い一撃をお見舞いして立ち去る。
最後——その辺の人を身代わりにする。
三択が思いついたけど、どうしたものか。
「この……ぶん殴ってやる!」
あ……流石に無視して通り過ぎるのは無理があったかな?
それじゃあ、遠慮なく……。
殴りかかってきた右拳をゆらりと舞うように、回避し……そのまま左足で踏ん張った後、勢いをつけた右膝で男の腹部を蹴り上げる。
「ぐふっ……!」
男は反撃を予想してなかったのか、蹴りが直撃し廊下の壁に激突した。
物凄い音が響いたが、壁には傷一つない。流石上級者用の敷地だ。丈夫に作られている。……そんなことを考えながら蹴り飛ばした男、多分、先輩に当たる人物を無視して私は自分の机のある場所へと何事もなかったかのように歩き出した。
これが私の日常であり日課になりつつある。
だけど、こんなのは平和な方。鐘の音が鳴り響けばもっと過酷な一日が始まるのだから。
此処が私の生きる場所であり、きっと死ぬ場所。
まだまだ、死ぬ気は無いけれど、それでも恐怖することも諦めてしまいそうになることもある。
月日は止まることなく流れてく……。
私の私の此処での目的は——。
——……一日の始まりを告げる鐘の音が重く鳴り響いた。