ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: EndsStory ( No.10 )
日時: 2012/02/17 23:04
名前: WhiteTiger (ID: J1W6A8bP)

No.7 [奇跡の約束]

ある所に一本の若い柳が生えていました
ある所・・銀色の塔から南へまっすぐ進み、銀色の街も赤レンガの廃墟も抜けた向こうの荒原
そこにはその頃、柳林があったのです
では、その一本の柳のお伽話をしましょう
〜緑がかった黒髪に緑の目の女は、少年に語るのである

その若柳は、父の木と母の木に挟まれて育ち、とても幸せでした
晴れの日は太陽の眩しさに心を弾ませ、雨の日には大地の潤いに喜ぶ
小鳥たちの歌を聴き、リスたちが遊びまわるのを眺める
そんな幸せな日々を送っていました

しかし、ある頃から人間たちが林に入ってきて仲間を切り取っていくようになりました
若柳は、人間になりたいと思うようになりました
人間になって、仲間を切りたいと思った訳ではありません
人間になって、切るのを止めさせたいと思ったのです
人間は人間の言うことにしか耳を傾けませんから
ある日、じぶんを両側から見守っていた父と母の木も切られてしまいました
まだ弱々しい若柳だけ、取り残されました
あぁ、人間になりたい、人間になりたい
柳では動けないし、何も話せない・・若柳は強く思うのでした

一、二年ほど経って、若柳のところに一人の女神様がやって来ました
女神様は片方の翼が折れて、ひどく傷付いていました
そして女神様は、若柳のそばで力尽きて、何かから逃げようとするのを止めたのです
根元に、ほとんど倒れるように座って、女神様は若柳を見つめます
林に雨が降りだしました 激しい強い雨
雨は女神様の傷口を叩き、体温を奪います
あぁ、自分が人間だったら傷を手当して暖かい所に連れて行ってあげられるのに
すると女神様は言いました「大丈夫よ、女神は死なないの」
おどろいた事に、女神様は若柳の思っている事が分かったのです
そうか、死なないのか、と思いましたが、やはりその様子は痛々しいので
若柳はさらに人間になりたい、人間になりたいと思うのでした

女神様は言いました「私の代わりに女神になって、何があってもこれを守って」
そして体から美しい緑の光の球を取り出しました
たくさんの呪文を唱えて、それを若柳に入れたのです
「女神は一度だけ、奇跡をおこすことができるの
 よく考えて、大事なことに力を使って」