ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: EndsStory ( No.5 )
日時: 2012/02/10 20:52
名前: WhiteTiger (ID: J1W6A8bP)

ある日「母」がいなくなった私たちの部屋に食事をもってきたのは下っ端の研究員
04は「もう会えないかも」って泣いた

四角い部屋 四角い呼び出しベル 02が呼ばれた 実験だ 大嫌いな実験
自分の周りに積み上げた 四角い絵本のビルをのりこえ 02は出て行った

私たち4人はいつもどおりの1日を過ごした
午前中は部屋にいて 昼過ぎには中庭に出られる 3時くらいに部屋に戻る
毎日同じ景色 つまらないや たまに実験台になって あとは同じことの繰り返し
02は言ってた「四角くない空を見たい」
・・02の帰りが遅いな

夜になった 見たこと無いけど空には星が輝いてるんだ 04と05はもう眠った
夕方が近づくと閉じてしまう天窓 夕焼けも朝焼けも見せてくれない つまらない 眠い
突如 夜の研究所の静けさを切り裂いた叫び声に目を覚ます
延々と続く叫び 02,02,何が起こってるの?

四角い部屋 四角いドア 02が戻るのを待つ私たち おぼつかない足音
ドアが開いた 四角い廊下の蛍光灯に照らされ幽霊みたいにぼうっと光る白い髪 
死んだような目の下に涙のあとがあった
02 は絵本のビルの中の特等席に 落ちるように座って何も言わなかった
しばらくして一言「うるさすぎて頭が割れそう」とだけ言って
私たちが話しかけても聞こえてないみたいで 疲れきって目を閉じた

静寂 四角い部屋の灯りを消した 04と05の寝息が聞こえる
私は眠れなかった 01は泣いてた押さえ込むように くやしそうに「俺は何もできない・・」
わたしも泣きそうになった
眠ってたはずの02が体を起こした「大丈夫・・大丈夫だよ」涙のあとを滴がなぞってた
それからみんな眠った

01は言った「四角くない世界を見に行こう」私たちは立ち上がる
私も言った「四角くない空を見に行こう」

それから研究員たちの行動や研究所の構造を調べた
曜日 天気 時間 盗んだカメラや部屋で聞こえる足音 嫌いだけど研究員に話しかけてみたり
自由になれるなら 二度と実験台にならないなら 希望に膨らむ胸
02は浅い息を繰り返し 頭が痛いとベットでうずくまってた
絶対に自由を掴もう 大嫌いな大人たちから解放されるため

そして決行の日
01が02をおんぶして04の手を引いた私が05をおんぶした静かに静かに
運良く誰にも遭わず出口についた 透明の四角い自動ドアが左右によける

生まれて初めてアスファルトを踏む 初めて研究所を出る 私たちは大きく息を吸い込んで走り出した
遠くへ 遠くへ 銀色の街の住人は近寄らないという赤レンガの街へ そこにはもう人が住んでないしきっと捕まらない
高い高い銀色のビルの群れに まだ空は切り取られたまま
本当はどんな形なんだろう 絵本の空も紙のおわりで切れてた

私たちはゲートを飛び出して 赤レンガの街に着いた
世界は鮮やかだった 研究所みたいに真っ白じゃない
みんなで緑色の屋根によじ登った 02と05は引っ張ってあげた

空に形なんて無かった ただ広く ただ広くそこにある
初めて見た夕焼け ほんとにオレンジ色だった 魔法みたいだった
どこまでも切れ目の無い空はこの世界をやさしく包んでた まるで世界の「母」のように
5人でこれから一緒に生きてく これ以上なにもいらない
けれど少しだけ思った 私たちが求めた物 それはあったかい・・「 」