ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: EndsStory ( No.8 )
日時: 2012/02/17 00:41
名前: WhiteTiger (ID: J1W6A8bP)

No.5 [塔の上の日々]

塔の上の女神 高い高い塔の上から 銀色の街をながめる
「嗚呼、退屈だ」

塔の上の女神 むかしむかし人に化けて下界に来た
人間というものをもっとよく知ろうと
ところが人間に捕らえられ とあるレンガの塔の上
赤レンガの塔の上の女神 少し高い塔の上で天界を想った
人間というものはひどくあさましく恐ろしい
そして女神は天界のことを紙にしるし始めたのだった
赤レンガの街の住人たち 女神に魔力を使わせる
もっともっと幸せになるために 未来だけを見つめ
そして銀色の街をつくり始めたのだった

塔の上の女神 少し高い塔の上から 灰色の空を見つめる
「嗚呼、友に会いたい」

塔の上の女神 少し高い塔から高い高い塔へ入れられる
人間たちが銀色の街をつくり終えたのだ
銀色の塔の女神 辛い辛い現実を知る
自分のつくる魔法の炎が人間たちの使うエネルギーをつくり
友と命を分け合うモノたちを殺していること
下界の森がおどろくべき速さで消えていること
人間というものは自分たち以外に命があるのを知らないのか
そして女神はさらに人間を嫌いになり 天界を想った
天界のことしるし尽くした女神 書くことがもう無い

塔の上の女神 高い高い塔の上から 銀色の街をながめる
「嗚呼、退屈だ」

塔の上の女神 高い高い塔の窓からは遠くまで見える
銀色の街も赤レンガの街もその向こうの森も
そして下界の地図をかき始めたのだった
赤い目の女神 かきつくすまで時間がかかるから しばらく退屈しない
友の緑の目の女神を想いながら

塔の上の女神 今日も発電所とやらの炎を起こす
言うことをきかなければ ひどく痛めつけられるのだ
女神は死なない 何度も生き返られる だから人間は手加減しない
人間たちは幸せを求めすぎて この頃にはもう
何かを忘れていた 未来だけを見つめ
塔の上の女神 地図もかき終えた
そして地図に赤いマルをつけ始めたのだった

塔の上の女神 高い高い塔の上から 人間の住む場所すべてを見渡す
「嗚呼、死んでしまいたい」
女神は死なない 自分と命を分け合う生き物が全滅するまで
人間のなかで赤い目の者たち 赤の女神と命を分け合っている
女神は地図に 赤いマルをつけ続ける
緑の女神が命を分け合うのは あの森の木と緑の目の人間
森が消えても死なない でもひどく弱ってしまうはず
塔の上の女神 自分を責める

塔の上の女神 赤いマルに炎を落とす
1年にわたり落とし続けて やっと完了する
人間たちはそれを「赤目狩り」と呼んだ