ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: EndsStory ( No.9 )
- 日時: 2012/02/17 01:49
- 名前: WhiteTiger (ID: J1W6A8bP)
No.6 [緑の受刑者]
裁判官は私に告げた「死刑だ」
ここは天界の裁判所 この世で最も聖なる場所
ここが全ての善悪を決める この世で最も「正義」の場所
ここで刑を言い渡された者は 何よりも誰よりも汚れた「悪」なのだ
決して言い逃れはできない 何が何でもその人は「悪」なのだ
世界の善悪を決める権利はここにこそあるのだから
陪審員たち 私を罵る こんな事件は この世界が生まれて最悪の罪だと
なぜならば私は「下界の命を数え切れぬほど殺し、さらに女神を殺した」から
大虐殺などはとんでもない罪なのだ
天界の者を殺すのもおそろしい罪なのだ
そして女神の「冠」を持つ者を殺すなど 最悪の罪なのだしかし
緑の受刑者は 世界中を敵にまわしても主張する 私は「悪」くないのだ
そう この1年で 赤目の人間が皆 謎の炎に焼かれ全滅した
そして私の友 赤の女神は死んだのだ
さらに悪いことには 赤の女神の「冠」が見つからないのだ
女神の「冠」ーそれは金銀宝石でできた頭に乗せる物でない
女神の位を母から受け継ぐ時 魂にはめる命の契約
冠をつけた瞬間から 下界の割り当てられたモノたちと命を分け合う
下界が生まれたときからそう決まっている
別に 次の赤の女神をたてたい訳ではない
命を分かつべきモノはもういないのだから
ただ 冠という大切なものを 何処にあるやも分からず
巨大な輪廻の渦の中に放っておく訳にもいかないのだ
前代未聞の事態なのだ
そしてその諸悪の根源が私だというのだ
違う 違う 私じゃない 緑の女神は叫ぶ
法廷にこだました その声を聞き入れる者は無し
他に原因があるというのかね? 誰が赤の女神を殺したいなどと想うだろう?
お前だ最悪の罪人よ これ以上罪を重ねるな 嘘偽りは「悪」なのだよ
法廷に集まっている天界の役人たち 全てを私のせいにする
私は分かっていた 彼らは不測の事態に対応できず
天界の住人たちに非難されていること
だからこんなことをやらかしてくれた私に 責任を押し付けたいのだ
私を彼らは処刑台にまつりあげ こいつが諸悪の根源だと言い放つ
住人たちの罵声は一点に集まる
私は笑う もう笑うしかない程に 悲しいことだ これが彼らの狙いなのだ
私が死んだら赤の女神に会えるだろうか 友よ何故死んだ
法廷で彼らは言った
「お前は 森が消えてゆくのを不快に思っていた
だから赤の女神を殺すために虐殺を行った
わざわざ炎を使い 今人間のうちで流行の自殺に見せようとした しかし
天界にそんなことをする者はいない 人間の訳の分からぬ愚行でしかない
女神たるもの 自殺などするはずがないのだ」
そう 天界の者たちは固く信じているのだ
でも私がやってないのだから そう考えるしか無いではないか
緑の受刑者 処刑台から逃げ出す
次の女神を決めるまで 十字に縛られている予定だったが
無理に鎖を引きちぎったので片翼が折れた
逃げて 逃げて 下界に降りる いや落ちる 片翼に女神はもう飛べない
体を引きずるようにして 逃げて 逃げて 逃げて・・・
あそこは天界の裁判所 この世で最も「悪」の場所
あそこに正義などもう無いのだ
自分たちが正義などと これ以上罪を重ねるな 嘘偽りは「悪」なのだよ
緑の女神 柳林で自ら命を絶つ
もっと困ってしまえ 非難を受けろ お前たちこそ非難を受けるべきなのだ
緑の冠 お前たちに渡してやるものか
最近自殺が多いから 輪廻の境で対策が行われてる
私が死んだら 赤の女神に会えるだろう
私も君と 同じ罪を犯したのだから