ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 『四』って、なんで嫌われるか、知ってる? ( No.40 )
- 日時: 2012/08/03 17:29
- 名前: 香月 (ID: OldIND5q)
第十七話
……え?
病院…?
「は、はい、篠原ですが……」
私は戸惑いながら答える。
どうして、病院から?っていうか、佐藤大学病院ってどこ?
玲が入院している病院とは名前が違う。
『実はですね、篠原幸子さんが危篤状態でして』
「………えっ!?」
私は思わず声を上げた。
幸子って……おばあちゃんが!?
「ほ、本当なんですか!?」
『はい。ですから、今すぐ来てもらえますか。本当に危険な状態なんです』
「わ、分かりました!今すぐ行きます!」
荒々しく電話を切った私は、凛と塁を呼びに、二階へ駆け上がった。
その時は、気付かなかった。
シアンが私の横で、口元を歪めていることに。
「……おばあちゃん…」
凛が棺の中に呼びかける。
そこには、眠っているのかと錯覚するほど安らかな顔をしたおばあちゃんが、色とりどりの花につつまれて横たわっている。
……優しいおばあちゃんだった。
お母さんと喧嘩して、いきなり家に泊まり込んだ時だって、何も聞かずに迎え入れてくれて。もう夜遅かったのに、わざわざ夕飯まで作ってくれて。
その思いやりが、胸に染みた。
……なのに…。
私の目に、じわっと熱いものがにじむ。
おばあちゃん、どうして急に……。
うつむいて悲しみに暮れる私の耳に、親戚の人の声がもぐり込んできた。
「……蘭ちゃん、大丈夫?」
遠縁のお姉さんだった。お姉さんと言うより、おばさんと言うべきかも知れないけど。
「……はい、大丈夫です」
私は力なく答える。気遣いは嬉しいけど、今は話し掛けないで欲しい。
そんな私の切実な想いはつゆ知らず、お姉さん(というかおばさん)は血管の浮き出た手を、自分の乾燥気味の頬に当てて続ける。
「蘭ちゃんたち、可哀想にねぇ…ご両親も亡くなったっていうのに」
その言葉に、思考回路が一瞬で全停止した。
「………え?」
亡く……なった……?
「どういうことですか!?亡くなった、って……誰が!?」
急に私が大声を出したのにたじろぎながら、おばさんは当然のことの様に首を傾げた。
「誰って……蘭ちゃんたちのお父さんとお母さんよ?あなたたちが小さい頃、交通事故で亡くなったんじゃない」
「………そんな……」
私は、呆然と立ち尽くした。
……シアン。
私の脳裏に、あの憎らしい嘲笑が浮かぶ。
絶対に、あいつの仕業だ。
お父さんたちだけじゃなく、おばあちゃんにまで手を掛けたんだ。
私は、ぎゅっとこぶしを握り締めた。
……許せない。
許さない。
戦ってやる。どんな手を使ってでも、あのチワワを倒してやる。
……どんな手を、使ってでも。
「…え…向井くん?」