ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 黙示録─緒言─ ( No.2 )
日時: 2012/03/10 21:41
名前: Johannes (ID: HhjtY6GF)

・・・・・・[Prologue]

この世界、何が起こるか分からない。
でも、これだけは分かる。

世界は、地球はいつか、人類が壊してしまうという現実に直面すること──────。

私はそれを阻止するために、12の物語を起こすことにした。
今は意味が理解できないかもしれないが、いつか必ず理解できる時は来る。
その時は、レボリューションを実現できた時だ。
私は誓うよ。愛する者、大切な者、全てを守るために、自分の人生を捨て、この計画を実行させる。

   「私は、現実から逃げる人類に非現実を教育する。」

さぁ、はじめよう。まずは緒言から・・・・・・────。










  2012年3月10日土曜日 東宝高等学校屋上

「私は、この世界のどこかに超能力者がいると思ってるんだよね。てか、絶対に存在するはず!!」

そう豪語する絵野出雲は、同じように屋上で寝そべる神野正典に言う。
「映画の見すぎだって。いる筈ないじゃん。」
「正典は夢がないなぁ・・・信じることが、実現のきっかけなんだよ。」
出雲はショートヘアーの黒髪を靡かせながら上半身を起こすと、大きく背伸びをした。
「今日も、良い天気だね。」
雲ひとつない真っ青な空を見上げながら、出雲は囁いた。
「そうだな。」
正典も上半身を起こし、そっと出雲の手の上に自分の手を乗せる。
2人が付き合い始めて約3年。正典は、こんな幸せで平凡な生活がこれからもずっと、続くと思っていた。
でも、それは叶わね願いだと、すぐ知ることになる。

     「正典、行こう。」

彼女の手に惹かれ、彼は立ち上がる。
彼女の手のぬくもり、優しさ、匂い、彼女の全てが彼の生きがい。
「出雲、愛してるよ。」
正典の口から自然に、そんな言葉が出た。
出雲は正典の言葉を聞き、頬を赤らめながら言い返した。
「私も、正典のこと愛してるよ。」
2人は互いの顔を見て微笑み、屋上を後にした。


******


 時は同じくして、世田谷区住宅街


お昼時の閑静な住宅街に建つとある一軒の家前に、パトカーに消防車、救急車が停車していた。
2階建てのどこにでもありそうな家は、‘keepout’の黄色いテープで囲まれ、関係者以外立ち入り禁止となっていた。
「はいはい・・・ちと失礼。」
現場に群がる近所の住人の人ごみから、警視庁捜査一課の刑事が現れた。
「通るよ。」
「寺田先輩、お疲れさまです。」
警視庁捜査一課の警部である寺田誠人は、後輩の赤井柊介警部補の挨拶を受けながら現場に入った。
「で、殺人?強盗?それとも両方?」
寺田は寝癖と思われる髪をボサボサと掻きながら、ダルそうに赤井に尋ねる。
「また先輩・・・・・・休日だからって、もう正午過ぎですよ。」
「いいじゃねぇか、休みの時くらい。女房と息子は朝から買い物行ってるし、ゆっくりできるのは・・・・・・」
「もういいです。」
赤井は寺田の話が長くなりそうなことを予感して、すぐに止めた。
2人はスーツのポケットから指紋防止用の白い手袋を付け、玄関から家の中に入る。
「現場は?」
「奥のリビングと庭です。」
この時、寺田は勝手に強盗と思い込んだ。しかしその安易な考えは、一瞬で砕け散った。

  「・・・・・・・・・赤井、これは事故か?それとも災害の一種か?」



リビングと庭の一部が、ごっそりと“消えていた”。

リビングは天井から床までパックリと消え、2階の部屋が見えた。

庭は一面緑色の芝生なのに、そこだけ茶色の土が見えている。


これはまるで、写真で撮った風景の一部をハサミで球状に切り取ったような光景だった。



「原因は不明ですが、現場付近の住人が不審な爆発音を聞いています。」
「ガス爆発か?・・・・・・んな訳ないか。」
寺田はリビングに近づき、隣接するキッチンを覗く。
キッチンのシンクの庭よりのほうが消え、内部が露となっていた。
シンクしたから延びる水道管から水がポタポタと落ち、地面が濡れている。
「ここの住人は?」
「夫婦が住んでいましたが、その夫婦は行方不明です。4歳の息子は保育園で保護されました。」
「・・・・・・とりあえず鑑識待ちだな。これは、手に負えないわ。」
寺田はため息を吐きながら現場を去ろうとした、その時だった。

     ガン!!ガン!! ガン!!  ガン!!ガン!!ガン!!

庭の隅にあるプレハブ倉庫から、何かを叩くような音が聞こえた。
「何だ!?」
赤井が腰から銃を取り出し、倉庫に駆け寄る。
倉庫付近にいた鑑識は慌ててプレハブ倉庫から離れ、刑事たちが倉庫を囲む。
「赤井、気をつけろ。」
「・・・・・・全員構えてろ。」
赤井は拳銃を構えたまま、倉庫の扉に手をかける。そして、一気に扉を開けた。


「んー!!んー!!んーんー!!」


手足を拘束され、口にガムテープを貼られた2人組の男女が壁に寄りかかっていた。
赤井はすぐに行方不明の夫婦と気づき、夫婦の拘束を解いて倉庫から出した。
「大丈夫ですか?」



     「あ、あ、あれは一体何ですか!?」



男性の方は赤井の肩を掴んで、鬼の形相で息を荒げながら叫んだ。
「お、落ち着いて下さい。私たちは警察です。何があったのですか?」
「いたんだ!!本当にいたんだ!!あれは・・・あれは・・・現実では存在しないと思っていた・・・・・・」
男性は膝から崩れ落ち、突然気を失った。
女性の方は放心状態であり、最早話せる状態ではない。
「救急車に運べ、表に止めてあんだろ。病院で話を聞こう。」
寺田はそう言うと、赤井と刑事たちと共に気絶した夫婦を運び、家の表に待機中の救急車へと急いだ。