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Re: 黙示録─緒言─ ( No.3 )
日時: 2012/03/11 10:06
名前: Johannes (ID: HhjtY6GF)

・・・・・・[戦慄の終業式]

「うーっす、とうとう春休みだな。」

登校してきた正典に真っ先に声をかけたのは、サッカー部の主将である岡部悠介だった。
「そうだな。」
「相変わらず暗いな、ハハハッ。」
正典は悠介の言葉を無視して、そのまま自分の席に座った。
岡部悠介はサッカー部のエースで、恐らく県内で知らない者はいないほどのサッカー技術を持っている。
しかし、悠介は世間で言う『サッカー馬鹿』。サッカー以外、つまり勉強はからっきしである。
「お早うさん。」
「おはよう。」
正典の右側の席に座る関西出身の女子生徒、東水梨。
「今日の朝ニュース見た?世田谷の方でえらい事があったらしいな。」
「・・・・・・知らない。」
「はぁ?ニュースぐらい見ろや、世間について行けへんで。」
口が閉じることのない水梨。彼女は、女子だがこのクラスのムードメーカーである。
授業妨害もしばしばだが、成績と運動神経は女子の中でピカ一だ。
つまり、総合的に見れば悠介よりも水梨の方が上である。



   『えー、生徒の呼び出しをします。呼び出された生徒は、早急に体育館ステージ前に集合してください。』



突然の放送、騒がしかったクラスメイトが静かになる。
「なんや、朝から騒がしいな。」
お前の方が騒がしいよ、と正典は水梨に言おうとしたが、また五月蝿くなるので止めた。


  『2年9組の東水梨,岡部悠介,神野正典,山岡梓。』


呼び出しを喰らった生徒の名前を聞いて、4人の中で水梨と悠介だけが声を上げて驚いた。
「なんで俺?俺なにかしたっけ?」
「そんなん私もや。なんで私が呼ばれんねん。」
2人の文句を無視して、放送は続く。


  『2年11組の絵野出雲。』

  『2年12組の花園翔太,工藤礼。』

  『2年2組の桐嶋誠一郎。』

  『3年5組の佐々木九之介。』

  『3年9組の石尾真里。以上の10名は、早急に体育館ステージ前に集合してください。』


呼び出されたのは、2年生8名と3年生2名の計10名。
同じクラスである正典、悠介、水梨、山岡梓は顔を合わせて首を傾げた。
この4人には共通点がない、ゆえに謎が深まる。
「とりあえず行って、ちゃちゃっと終わらしちゃおうぜ。」
悠介は大あくびをしながら教室を出た。
続けて梓、水梨、と出て行く。
「・・・出雲も呼ばれたのか。」
正典は何か嫌な予感を感じたが、3人と共に体育館へと向かった。


******


  体育館 ステージ前


呼び出された生徒10名は、3分程度で集合した。
「会長、今日はどうして学校に?」
正典はステージに寄り掛かって腕を組んでいる、前生徒会長の佐々木九之介に声をかけた。
「卒業式も終わったのに・・・・・・」
「わ、忘れ物を取りに来ただけだよ、後はお世話になった先生への挨拶だ。」
九之介は笑顔で正典に言う。
周囲を見渡すと、正典を含めて10名の生徒が、どうして呼ばれたのか理解できていなかった。
「正典、これ何の集合?最初は生徒会の集合と思ったけど・・・・・・」
出雲が不安そうな表情を浮かべながら、正典に駆け寄る。
「分からない。けど、大丈夫だよ。」
正典は笑顔で言葉をかけ、出雲の不安を和らげようとした。
そんな矢先だった。





      「全員動くな、そして騒ぐな。」






ステージの左右横から、マシンガンらしき物を持った男女9人が現れた。
「は?なんだよお前ら?」
悠介が先頭に立つ茶髪の男性に言う。
「全員囲んで、気絶させろ。気絶させたら裏に運べ。」
茶髪の男性がそう言うと、ステージから茶髪の男性以外の8人が降りて、次々に集合した10人に突進する。



 「が、ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!」   「わぁぁぁぁ!!!!!」


    「あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」      「ぐはぁ!?」


「ちょ、ちょっがぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!!」    「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」    「なんだよっぐっ!!」


「正典!!いやっ!!やめて!!きゃあっ!!!!」


   「出雲!!!うっ!!!!な、なんだよ・・・・・・これ・・・・・・」


「おいおい・・・ちょっちょ、がはっ!?」



10人は悲鳴を上げ、その場に気絶した。
彼らを囲んだ8人の手には、改造スタンガンが青い電撃を走らせていた。
「順調だな。さっさと運べ。時間がない。」
茶髪の男性は8人に言うと、体育館の天井を見上げた。
「ついに・・・この日が来た・・・・・・。」



   「戦慄の終業式、最悪春休みの幕開けだ。」



男性は不気味に微笑み、ステージ裏に運ばれていく10名と共にその場を去った。