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Re: ヨハネスの黙示録─緒言─3話up ( No.9 )
日時: 2012/03/16 17:04
名前: Johannes (ID: HhjtY6GF)

・・・・・・【サバイバルゲーム】

北棟5階にある2年9組の教室に、正典はいた。
閑散とした教室、窓はシャッターが降りて外の景色も見ることができない。
「くそっ・・・・・・あいつら何なんだよ・・・・・・」
テロリストたちの目的は分からなかった。どうして、この10人でサバイバルゲームを行わないといけないのか。
正典は机に腰掛け、時計と天井の隅にある監視カメラを見る。
時刻はまだ10時10分。残り19時間50分もある。
「まずは出雲を探さないとな。」
出雲のクラスはこの5階の2年11組である。しかし、正典は出雲の姿を見ていない。
それどころか、5階で残りの9人の姿さえ見ていない。
「全員、一体どこに行ったんだよ。」
正典は溜息を吐き、教室を出ようとした。その瞬間だった。


「のぁぁぁあぁぁぁああああぁぁ!!!!!!!」


悲鳴を上げながら、悠介が教室に駆け込んできた。
それに続いて梓、出雲も汗を流して慌てて教室に駆け込む。そして梓が急いで扉を閉めた。
「な、どうしたんだよ?」
「ハァハァ・・・花園って奴が、ハァ・・・いきなり襲ってきたんだよ!!」
悠介は息を整えながら、床に大の字で寝転ぶ。
「出雲、怪我はないか?」
「大丈夫だよ。にしても、あいつサイテー・・・・・・」
「本当、あの男は信じられない。」
梓と出雲は翔太の悪口を言いながら、椅子に座った。
「施錠して閉じ篭ろうぜ。そうすれば花園も・・・・・・・・・」


   『その行為を10秒以内に止めないと、5階の爆弾を起爆させる。』


突如、放送のスピーカーから数也の声が響き渡る。
「だぁぁぁぁ!!!!!くそがっ!!!!!」
寝転んでいた悠介は急いでで立ち上がり、教室から駆け出す。
「出雲、行こう!!山岡さんも!!!」
正典は出雲の手を引いて教室を飛び出す。梓も2人の後ろを追いかけるようにして、教室を飛び出した。
「監視カメラの死角になる場所、知ってるか!?」
「私知ってるよ。1階の理科室、男子たちが遊んでぶっ壊したから修理中。」
梓の情報を聞き、3人は顔を合わして頷く。
「理科室へ行こう。そこで今後の計画を練るんだ。」


******


北棟3階 パソコンルーム


パソコンルームは他の教室とは違いカーテンが締められ、電気は全て消えていた。
これはパソコンがオーバーヒートしないための対策である。
暗闇に包まれたパソコンルームの中には、2人の人影が潜んでいた。
「さすがパソコン部だな、頼りにしてるぜ。」
「ここなら監視カメラの電源を落ちてるし、当分は見つからないよ。」
ゲーム開始と同時に悠介たちを襲った花園翔太は、同クラスの工藤礼と一緒にいた。
礼はメガネをかけ直し、大きな溜息を吐く。
「んだよ、不抜けた声出しやがって。」
「だってさ・・・こんな状況、映画でも小説でも見たことないよ。」
「そんなこと考えるんじゃねぇよ。サバイバルゲームなんて、そうそう出来る物じゃねぇぜ!!」
ガッツポーズを見せながら、翔太は目を輝かせる。
そんな翔太の姿を見て、礼は微笑んだ。
「花園くんはイイよね、ポジティブ思考でさ。」
「あん?」
「僕はずっと暗くてさ、いつもネガティブ思考。こんな状況になって、自分の死んだ姿が目に浮かぶ。」
弱気を見せる礼の背中を、翔太思いっきり叩いた。
「いたっ!?」

 「負けると思うから負ける、死ぬと思うから死ぬんだよ。」

礼にそういうと、翔太はポケットから携帯を取り出す。
そして、携帯の画面を礼に見せた。
「さっきも確認したんだけどよ、携帯が圏外になってんだ。東京のど真ん中だぜ。」
礼は翔太の携帯をしばらく見つめ、とある予想をした。


「多分、奴らはジャミング装置を使っているかも。僕たちが外部の人間と連絡できないようにしてるんだ。」


「ジャミング・・・・・・なんだそれ?」
「簡単に説明したら、電波を妨害する装置だよ。」
「ふ〜ん。どうにかできねぇのか?」
「無理だよ。」
礼の説明を聞き、翔太はニコリと笑った。
翔太の笑みの意味が分からず、礼は尋ねる。
「何が面白いの?」
「この10人の中で、お前が一番頼りがいあるぜ。一緒に、最後まで残ろうぜ。」
翔太の言葉を聞き、礼は満面の笑みを浮かべて元気良く頷いた。
しかし、礼はこの時知らなかった。翔太が悠介たちを襲ったこと。
本当の、彼の本性を────。


******


北棟2階 東棟に繋がる渡り廊下前


元生徒会長であり現在は大学1年生の佐々木九之介は、落胆していた。
「そもそも、俺はもうここの生徒じゃない・・・・・・相変わらず運がないよな・・・・・・・・・俺。」
九之介は東棟と北棟を繋ぐ渡り廊下前にいた。
しかし、渡り廊下はシャッターが閉じているせいで行くことができない。
「ここと3階の渡り廊下もシャッターが閉まっている。どうして東棟には行かせない?」
九之介は最後に校舎に入れられた。そして、テロリストたちの会話を聞いている。


 『東棟は今は封鎖しろ。』


「あのリーダー格の男がそう言ってた。後で、何かに使うのか?」
九之介は疑問に思いながらも、とりあえずその場を後にした。