ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺がおカしクなったあの日 ( No.1 )
- 日時: 2012/03/15 18:51
- 名前: 下母 (ID: SDJp1hu/)
…
……
「ヒュー…ヒュー…」
空気が漏れたような音が響く
目の前に立っている女の子は、
どう見ても俺が小さい頃から知っている赤ずきんではない。
赤い頭巾をさらに赤い血で濡らし、喉と頭左半分にはぽっかりと穴が開いている。
「ヒュー…コホッ…ゴボッ…ヒュー…」
口から赤い泡を吹かし、右目が世話しなく動く。
なんでこんな状況になったんだ?
俺は情けなくその場に腰を抜かす
目の前にいる恐怖からできるだけ頭をそらし、記憶をたどる。
昨日まで、俺は確かに普通に生活していた。
そう、普通に。
朝起きて、学校に行って、いつものように雑用をこなす、そして家路に着く、その後も雑用がまだまだ残っている、父が帰ってくる、俺を殴る、母が帰ってくる、機嫌がいい日なんてない。
やっぱり殴られる、傷の治療を終えると自室に戻る。
そこでやっと自由な時間が得られる、俺は自分の世界に入る。
いつも通りだ。何も変わっちゃいない。
…その後は?
その後は、ベットに入るはずだ。
その後俺はどうした?
思い出せない。
なんでこんな所にいる?
気づいたら森の中にいた。
冷たい風が頬を撫でる。
後ろから声がした。
前からも声がした
後ろからは赤い頭巾の女の子が。
前からは銃士らしき人が。
一瞬で頭が真っ白になる。
今度は前から銃声と、後ろから何かがはじけた音が
振り返ると赤い頭巾は頭半分がもっていかれていた
それでも生きていた。
銃士は、もう一度引き金を引く
喉に当たった
なんで生きているんだ?
どう見ても立っていられる状態じゃないのに、生きている。
呼吸をしている。笑っている。残った右目が俺をとらえる
「ヒュー…ヒュー…あ…あぁ?…ゴボッ…ヒュー…ぁ…ヵ…き」
俺に向かって話しているらしい、でもわからない。
何を言ってるかわからない。
とりあえず俺も凝視する
成程、それでこんな状態に…って納得してる場合じゃないな
状況が呑み込めねぇぞ…
なんで俺は今こんなメルヘンチックな世界にいるんだ。
木には絵本にいるような小鳥が止まっていて、赤ずきん(?)は右手に可愛らしいバスケットを手にしているがその容姿ですべてを台無しにしている、銃士は銃士で赤い羽根がついた緑の帽子を被っていて大変目つきが悪い。
「ヒュー…ヒュー…う…ぎ…ゴボボッ…」
「あ…あの…」
相変わらず赤い泡を吹かしながらニタニタと笑う赤ずきんに話しかけてみる。夢かもしれないし…こういう体験もたまにはいいかもしれない。
「大丈夫スか?」
立ち上がってみると赤ずきんは、小学1年生ぐらいの背丈で俺を見上げている
「…ケポッ」
バスケットを手にしてないもう片方の手で喉を押さえはじめた。
手だけじゃ駄目だと思いバスケットからハンカチを出す。
あたふたする姿は可愛いけれどそのグロテスクな頭を先に処理してほしい…
意外と落ち着いてる自分に驚きを覚えながらも、赤ずきんを凝視し続ける
「そこをどけ、小僧」
背後から銃士の声が聞こえた瞬間、3発目の銃声が響いた。
「ガボボッ…ヒュッ…ヒューッ…ヒューッ…」
お腹の右下を少しかすれただけで済んだ様だが、出血量がはんぱない。
「ちょ…何してるんスか!?
子供なんですよ!?」
ここまで攻撃されて生きていられる子供なんて見たことないが…とりあえずは子供だ。
「………?」
首をかしげる銃士、本気の疑問顔だ
「な…なんで撃つんスか…
何をしたっていうんですか」
「楽しいからに決まってるだろう?」
まるで家に帰ったら手を洗うのが常識だとでも言うかの様な顔をして、銃士は話す。
「た…楽しいからって…そんな理由で…」
「君が望んだ世界だ、俺らは文句を言えんさ」
「俺が…望んだ世界?」