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Re: 俺がおカしクなったあの日 ( No.2 )
日時: 2012/03/15 18:50
名前: 下母 (ID: SDJp1hu/)


「…」

「あっ」

「?」

銃士の呆けた声で後ろを振り返ると、赤ずきんはすごい速さで森の中に消えていった

あの傷であんなに走れるとか…

それより俺の望んだ世界ってなんだ、中二病かっ
あー、どうせ夢なんだし…余計なことは聞かないでおこう

「聞かないのか?」

「へ?」

「だから、聞かねぇのかっつってんだよ」

眉間にしわを寄せて俺に問う銃士
え、何イライラしてんだ。俺なんか悪いことした!?

「てっきり俺の望んだ世界って何なんですか?ってな感じに聞かれると思ってたんだが、違ったか。」

「い…いや、なんかめんどくさそうだし」

「めんどくさいっておま…」

何か言おうとしたのか口を数回パクパクさせてから呆れ顔でため息をつく

あれ…俺こんなまともに人と話したのっていつ以来だろう…

「あー…そうだ、お前行く所あんの?」

「え、いやないけど」

ガシガシと頭を2、3度掻き毟った後赤ずきんとは反対方向の森を指さす

「あっちに俺の家があんだけど、休んで行かね?」

「…あ、えっと…」

どうせ夢だし行先もなんもないけど、いきなり平気で子供を撃つ人の家にホイホイ行くってのもな…

俺が答えを出せずに戸惑っていると一人でさきさき森の方に歩き始めた

「まっ、待って」

とりあえず一人でいるよりは幾分マシだ。俺はついていくことにした。



30分ぐらい歩いただろうか、ちょっと疲れてきた…
夢の中なのに疲れるなんて変なの

「まだスかー…」

「もうすぐだ」

それにしても無口だなこの人…
俺が質問する時以外は黙々と歩いている

「…」

何を思ったのか足を止めた銃士
なんだ?道にでも迷ったのか?

「…お前、そこの茂みにでも隠れててくんね?」

「…は?」

「ホラ、早く隠れるっ」

「わ…わかったよ」

イラつきが混ざった怒声に思わずそのまま言うとおりにする

相変わらず怒鳴り声に弱いな俺…
茂みに腰を下ろして銃士の方向を見る

「静かにしてろよ…」

「?」

次の瞬間、すさまじい異臭が俺を襲った

な…なんだこれっ…獣の匂い?
おぇぇえっ…

「ちょ…移動…させ…」

「動くな、声も出すな、寝てろ」

んな無茶な。こんな異臭の中で寝れるとか超人だよ!

どんどん強くなっていく異臭に俺は気を失いそうになった
吐く…吐く…っ

「グロロロロロ……」

「?」

低いうなり声が森中に響き渡った
カエル?いや雷?それとも…

「見ィつけたァ」

ザザッと激しい音と共にやってきたのは、テレビとかでよく見る一般的なオオカミだった

喋ってる事以外は一般的なオオカミだ、うん
体も二周りほどでかいけど…

「おいおいおいおいおい、またやってくれたなァ
 このヤンデレ銃士ィ…」

「お前に言われたかねぇよ、ロリコン」

状況がさっぱり読めない俺をよそに口で罵合う二人

「あの」

「!!」

俺の声を聴いた瞬間オオカミの目線がグリンと動く

「……テメェのせいでさァまだ俺ご飯にありつけてねェんだ
 可哀想だろ?な?俺可哀想だろォ?」

「は…はぁ…」

このオオカミはもしかして赤ずきんで出てくるオオカミだろうか

「お腹が空いてるなら赤ずきんを食えばいいのに」

思わず口にしてしまった言葉にハッとした時には遅かった

オオカミはほっといて銃士の顔がみるみる歪んでいく

「食えばいいのに…だ?」

「え…ええ…?」

「ヒャハッ、話がわかるじゃねぇか
 そうだよなァ?食えばいいのになァ?でもこのヤンデレ銃士さんが…」

パンッという銃声が響き渡りオオカミの話が中断される
ずっと銃士の方を見ていた俺はオオカミに方向を変えた

「…!」

その変わり果てた姿を見て思わず目をそらす

顔の口から上が吹き飛ばされていた

しばらく左右に体をユラユラ揺らした後姿勢を立て直して
オオカミは何事もなかったかの様に話し出した

「テメェ、すぐ撃つのやめろっつってんだろォ!?
 ビックリするんだよォ、おいっ
 何も見えねェじゃんかよォ!!」

「そりゃ、目玉吹っ飛ばしたからな
 口を狙ったはずなんだが、最近よく外す…」

「ヒャハハ、老化じゃねェ?」

「ははは、死ねばいいのに」


2人が仲良く会話してる頃、血の匂いと異臭が混じった森に限界を覚え会話そっちのけでいつの間にか俺は出口を求め全速力で走っていた