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Re: 俺がおカしクなったあの日 ( No.4 )
日時: 2012/03/16 16:04
名前: 下母 (ID: SDJp1hu/)

「……」

「……」

無言で見詰め合ってる俺と赤ずきん
あぁ…相変わらず左顔の穴と喉からの出血量が半端ない…

俺の服もとっくに血の色で染まっていた
血の臭いで酔いそうだ

安定感のない小さな手で抱かれていてそろそろ落ちそうな俺に気付いたのか赤ずきんは丁寧なのか雑なのかよくわからない下ろし方をしてくれた

「…あ…ありがとう」

礼の言葉を聞くと赤ずきんは少しだけ笑みを浮かべた

フードの方を見てみると赤ずきんを見て泣いてるようだった

「…あぁっ!!赤ずきん!!どこに行ってたの!
 まぁっ!血だらけ穴だらけじゃない!誰にやられたの!?
 あぁぁぁ…今すぐその野蛮なオオカミから離れなさい!
 おばあさんの所には寄り道せずに行ったでしょうね?
 あぁ…無事でよかったわ赤ずきん…
 これ以上お母さんに心配をかけさせないで頂戴。
 さぁそこをどいて!そのオオカミは今日の夕食と赤ずきんの洋服代になるのよ、うれしいでしょう?」

そう言ってフードを脱いだ
顔はどことなく赤ずきんに似ていて、年齢は30〜35ぐらいだろうか

涙を拭ってニコッと赤ずきんに向かって笑うと、俺の方に歩み寄った

「え…」

動揺しているとかわしてる暇もなくナタを俺の心臓に向けて突き刺した

そこを赤ずきんが素手で止める
指こそは切断されなかったが手から勢いよく血が噴出する

「…赤…ずき…ん!?
 何してるの!?危ないじゃない!!」

危ないどころか完全にアウトしてるけど…

「あぁぁぁぁっ私の可愛い赤ずきんの指から血が血がぁあぁあ!!」

顔を真っ青にして、赤ずきんに駆け寄る多分お母さん

「…」

自分の指から絶えなく流れる血を無言で見つめる赤ずきん

あんなに怪我してんのに悲鳴ひとつあげないって…

「…あ…あなたのせいよ、私の赤ずきんがこれ以上怪我したら
 私もう生きていけないわっ
 腐れオオカミィイッィイィイッ!!!!!」

これ以上ない奇声を発しながらナタを乱暴に振り回す多分お母さん

「うぉっ!っぶね!!落ち…落ち着けって!」

色んな事がありすぎて頭が混乱してるから思うように動けない
何度かナタが頬をかする

ま…まだ覚めないのか!?もう十分だっての!冷や汗でビッショリだっての!!

ガクガクな足をなんとか動かしてせっかく抜け出したばっかの森に逃げ込む

「うぅ…なんで俺がこんな目にぃぃいいぃいっ!!」

「待ちなさいっ!!待ちなさいっ!!待ちなさぁああぁああああ!!」

声が大きい割に足は意外と遅い多分お母さん
わかりやすく言えば50m11秒ぐらいの遅さだ

「…」

「!?」

必死に逃げてると後ろからクイッと服を掴まれた
後ろを振り返ると赤ずきんがついてきていた

「な…なんだっ?ついてこなくていいって!!」

「…」

無言で俺についてくる赤ずきん
まぁついてきても害はな…ってあるな…あの多分お母さんまでついてくるだろう

「…」

「…仕方ねぇな」

表情一つ変えない赤ずきんにはもう何を言っても聞かないだろうと判断し顔を前に向き直しひたすら走った