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Re: 『 Turns 』 〜小説掲示板物語〜第Ⅲ章 3話  ( No.238 )
日時: 2008/05/11 17:07
名前: НΙММЁL ◆MEER.m/asI (ID: Wl8kRSYB)
参照: http://himmel.rakurakuhp.net/

  +65日目+

ノートにペンを走らせる俺の手は止まることはない。
逆に、ここで止めたら間に合わないだろう。
昨日の夜、結局宿題をせずに寝てしまった俺は、朝早く学校に来て宿題をする始末。
踏み倒して、宿題をせずにおいてもいいことは良いのだが、万が一ということを考えてもやった方がいいと思われる。
ふと難しい問題が出てきて、しばしペンが止まる。

普通なら、ここは友達などにノートを借りて写したりすることだろう。
だが、俺は基本的に友達とは深く関わらないために、誰かにノートを借りるなんてことはない。
友達がいないわけではないのだ。
なんというか、他人と関わるのが面倒に思える。
もともと、俺は誰かに精神的に縛り付けられたり、拘束されるのが好きじゃない。  
だから、友達と遊ぶよりはひとりで何かしていたほうが気が楽であり、自分のしたいことが出来る。
陰気と言われることもあるが、特に気にはしない。
それが俺にとって一番楽だからだ。

ようやく答えを導き出した俺は、再びペンを走らせる。
ふとなんとはなしに教室を見渡すと、他の大半の生徒も俺と同じく宿題にいそしんでいる光景を見ることが出来た。
しかし、またその多くは友達のノートを写したり、教えを受けたりしている。
俺はそんなやつらを横目で見ながら、自力で問題を解いていた。
思えば、自分で今までやってきたからこそ、今の成績が保てるのかもしれない。
俺の成績は、学年上位とまではいかないが、クラスの中では5位以内には入る。
だからこそ、家で何をしていてもとがめられることはない。
親は、俺が成績さえ良ければ何も言わないのだ。
別に両親が嫌いというわけではない。
だが、俺が友達とあまり仲良くしないように、同じく親ともあまり慣れ親しんだりはしない。

「よし、終わりっと」

ようやく終わったと丁度に、担任が教室へ入ってきた。
朝のホームルームの長々しい話が始まる。
その話を聞いているやつはほとんどいなかった。
クラスはいつも騒がしい雰囲気だが、ゆえに行動力はある。
意見などをとりまとめるときもすぐに終わることが多い。
今の俺は高校2年だが、実は1年のときには特進クラスにいた。
通常のクラスの授業がほぼ毎日6時間に対して、特進は3日が8時間、2日が7時間である。
そんなクラスで去年俺は頑張っていたのだが、やはり勉強することに価値を見いだせなかった俺は、そんなに特別な授業を受ける意味もわからなかった。
だから今年は通常のクラスに来たのだ。
こっちの方がより時間を有効に使えるし、無理に勉強を押しつけられることもない。
特進クラスとの雰囲気の差に最初は戸惑ったが、今はもう慣れた。
だが、当然俺は途中からクラスに入ったよそ者に過ぎない。
たのやつらとは1年のブランクがある。
ブランクと言っても、勉強はこっちのほうが進んでいる。
劣っているのは、クラスとの馴染みだ。もともと馴染む気なんかさらさらないから、そこは別にいいのだが……

一時間目が始まると同時に、俺は授業とはまったく関係の無いことに思いを巡らせた。
おもしろくもない授業であり、去年にすでに終わってしまった分野でもあるため、授業を聞く必要はなかったという意味でもある。。
俺は鞄の中からルーズリーフを取り出して、教科書で半分隠しながら開いた。
そこには、ある物語の構想が書かれている。
正直、俺も小説を書きたいと思ったことはいままでに何度もあった。
自分のなかでネタを膨らませては、いつの間にか忘れてしまっている。
それがどうも勿体なく感じ、今は思いついた物語を極力書き留めているのだ。
これがまた、この退屈な授業の時間を無駄なく過ごせる題材となる。
ペンをクルクルと回しながら、しばし考えに浸る。
ときおり教師の視線を確認しつつ、思いついたことをルーズリーフに書き留めていく。
思いつくのは良いのだが、これを文章化する作業がまた大変なのだ。
さすがに、これを手書きで全部考えていこうとは思わない。
何よりも、手書きだと修正などがあったときには面倒だからだ。
出来るだけ構想を学校で考えて、家でPCを使って書いていくことにしているが、一向に進むことはない。
いざ書こうとなると、どうしても指が止まってしまうのだった。
依然として物語りは進むことは無く、いつまでも同じ場所で止まっていた。
思いつくのは、結末までのシナリオ。
後半になればなんとかなりそうだが、前半をどうやって読者が食いついてくれるようにするかが重要だろう。
それが今の俺には考えられなかった。