ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 銀蝶マリア
- 日時: 2009/09/02 20:41
- 名前: 霧茜 (ID: 7z3IIjJJ)
みなさんはじめまして、霧茜と申します。
今回、初めて小説を書いて投稿してみます。
まだまだ未熟者ですが、どうぞ温かい目で見守ってやってください!
精一杯頑張っていくので、どうぞよろしくお願いします。
目次
#1 「ユウ」>>1
「レイ」>>2
「ユカリ」>>4
「ユズ」>>5
#2 「まいなす」>>6
「 」>>7
「アリア崩壊」>>8
Page:1 2
- Re: 銀蝶マリア ( No.4 )
- 日時: 2009/08/30 12:56
- 名前: 霧茜 (ID: 7z3IIjJJ)
銀蝶マリア
「ユカリ」
夢は、無意識の願望。そのとおりだと思う。
お金が欲しい。恋人が欲しい。有名人に会いたい。洋服が欲しい。
人間はみんな、欲にまみれてる。
夢はそれを叶える一時の幸せ。
あたしの趣味は、それを悪夢に変えること。
たまに見る悪夢は恐怖。苦痛。
うなされ、汗をかき、涙を流し、夢から解放される。
幸せな夢は一瞬で表情を変え、地獄になる。
あたしは苦痛に、恐怖に染まる人間を見るのが好き。
あたしだからこそできる、最高のマイブーム。
あたしは、他人の夢の中を自由に行き来できる。
最初こそ戸惑った。
あたしの夢には無数の扉が必ず存在する。色、形、大きさ、どれもバラバラ。
その扉の向こうが、他人の夢の中。
希望、欲望、幸せがつまった世界。
あたしは、それを壊すの。
白かった世界は一瞬で真っ黒に染まる。
夢の中のあたしは、いつも真っ黒な服を着て、フードを被ってる。
だって、クラスのみんなに顔がばれたら、困るでしょ?
今日も扉だらけの夢。
今日は、学校の子達はみんな同じような内容だろうな。
教頭の突然死。
印象の強い記憶も夢に反映される。これもわかってる。
「ッきゃあああああああああああああああ!!!!!!ああっああ!!」
教頭の悲鳴。
黒い扉からだった。
そして、扉の隙間から流れ出る、赤い血。
普段なら他人の悪夢にわざわざ行くようなことはしない。
でも、今回は教頭が関わってそうだから、その扉をゆっくりと開けた。
そこに立っていたのは、あたしのクラスの担当数学教師。
生徒に人気で、人を覚えるのが苦手なあたしでさえ知っている。
「誰だ!?」
声を張り上げてこっちを向く。
でも、手で目を覆っている。
あたしは、答えない。
「・・・・お願いだから、いなくなって」
声がいつものトーンに戻った。でも、どこか悲しそうだ。
「・・・高橋先生」
あたしはフードをとって、顔が見えるようにした。しかし、先生は手をどかそうとはしない。
「その声・・・成沢、さん・・?」
「そうです」
「じゃあ尚更ここからいなくなって!」
さらに声を張り上げる。
「・・なんでですか?」
「・・・・・俺はね、目で人を殺せるの。教頭も姉さんも、俺が殺した」
夢は無意識の願望。ただ、殺したかっただけじゃないの?
「成沢さんも俺の目を見たら、死んじゃうから・・・こんな異常者・・・」
異常者。笑ってしまいそうになった。もし先生の力が本当なら、あたしと同じ異常者。
「それはね、異常でもなんでもないんですよ」
「でも、もう2人も殺してるんだよ?」
「それは2人が悪いんですよ」
ゆっくりこの世界から出ていく。扉の向こうへ。
明日、このことを先生が覚えててくれたらおもしろいな。
こんなにおもしろいのは、あの子の夢以来。
- Re: 銀蝶マリア ( No.5 )
- 日時: 2009/08/30 13:49
- 名前: 霧茜 (ID: 7z3IIjJJ)
銀蝶マリア
「ユズ」
人間の死体は見たくない。
人間の死体は真っ白で、眠っていて、そんなイメージがあった。
殺された人間の死体はそんなことないだろうけど、昔のあたしにはそんなイメージがあったの。
おじいちゃんの死。
あたしが小学生の頃だった。
病気で入院していたおじいちゃんは、もうすぐ退院できるはずだったのに。死んでしまった。
容態が急変してしまったと医者は言った。隣にいた看護婦も悲しそうにしていた。
あたしは、そっとおじいちゃんの手を握った。
「志村さーん、点滴かえましょうねー」
「馬鹿!誰だ!?この点滴に変えたのは!!?」
「この点滴は違う!」
「容態がっ!」
「冗談じゃない!医療ミスでうちの病院は・・!!」
「そんなこと言ってる場合じゃない!!」
「先生!」「なんで点滴を間違えた!!」
「先生っ!」「ちくしょう!!」
「もうだめだ・・・・・・・・・・・・・・・」
流れてくる映像。どれも鮮明で、はっきりしていた。
おじいちゃんの、視点。死ぬ間際の視点。
おじいちゃんはただ容態が急変して死んだんじゃない。医療ミスで殺されたんだ。
あたしは親に言った。でも当然信じてくれるはずもない。
それからだった。
あのときは死体に触れて、記憶を見た。
でも今は、死んだ人の顔を見るだけで記憶が流れ込んでくる。
だからニュース番組はあたしにとって拷問だった。
次から次へと流れ込む記憶。
撲殺、刺殺、火の海、水の中、森の茂み
質が悪いのは、その流れ込んできた記憶が、その日、夢でフラッシュバックすること。
何人もの殺される瞬間が、一斉に飛び込んでくる。
毎日が悪夢だ。
この前、あたしの学校の教頭先生が死んだ。
なんの前触れもなく、突然、ぱたりと死んだ。
そして流れる、直前の記憶。
数学の高橋先生に言い寄る教頭先生。高橋先生の後ろ姿。
ステージ上、一瞬、高橋先生を見る。
先生は、教頭を黙って睨んでいた。
ぷつん。
そこで記憶は終わった。そこで教頭は死んだ。
わからない。
最後に残るのは、凄く怖い目をしていた先生だった。
あの目が、あたしは気になってしょうがなかった。
「・・・なんで、なんで・・・」
教頭の突然死、体育館は混乱し、生徒は教室に戻らされるところだった。
「・・・・・なんで、突然・・・」
凄く真剣に考え込んでる女の子がいた。何組かはわからない。
「なんでわからなかったんだろ・・・」
わからなかった?
「・・・はぁ、意味わかんない」
その女の子はぶつぶつ言いながら、教室に入っていった。
4組。
あたしは、今もニュースは見ない。
あの教頭の死、あのせいで、
あたしは今、奇妙な人間達を知ることになる。
自分以外の、異常者を。
- Re: 銀蝶マリア #2 ( No.6 )
- 日時: 2009/08/31 00:03
- 名前: 霧茜 (ID: 7z3IIjJJ)
銀蝶マリア
「まいなす」
蝶々が、ひらひら。
教頭が死んでから、しばらく経った。
今日もあたしは夢の中。たくさんの扉の中。
でもここ最近、入る扉はいつも同じ。
黒い扉。
今日は職員室だった。でも、違う。
辺り一面血で真っ赤。ところどころ、肉片が無造作に落ちている。
「・・・・来てくれたんだ」
「約束は守りますよ」
教頭の席に座っている、高橋先生。
もう最初の様に目は隠してない。
真っ赤に充血した目。
「やっぱりね、不思議だよ。成沢さんは殺せない」
「確かに、あたしは先生と目が合っても、何も起こりませんね」
「他の人間は目が合った瞬間、ひきちぎれちゃったよ」
悲しそうに先生は言った。
「なんでだろうね。成沢さんには俺の目は効かないみたい」
「あたしまで肉片にされちゃ、たまりませんよ」
「そうだね・・・ねぇ、また来てくれる?」
「いいですよ。明日はどんな世界か楽しみですね」
明日。
先生は、こんな夢覚えてないけどね。
__________
ぴりぴり。
不快感。
学校でそれらしい不快感を感じたのは初めて。
強くはないけど、弱くもない。
誰が死ぬ?
振り返ってみても、生徒が多すぎていまいち見つからない。
まぁ、あたしには関係ないからいいけど。
死ぬんなら、学校以外で死んでほしいな。
「川本さん!」
「ん?」
呼ばれた方を向くと、最近仲良くなった子。
「お昼ご飯、一緒に食べない?」
「いいよ。食べよっか!」
「屋上いかない?気持ちいいよ!」
「そうだねーそうしようか」
屋上に向かっている最中、もうあの不快感は消えていた。
「はぁ〜やっぱり屋上って気持ちいいね!」
「そうだね〜」
屋上にでると、涼しい風が吹いてきた。確かに気持ちいい。
お弁当を広げて、気持ちいい風の中、食べ始めた。
「ん〜〜!よく寝た!」
「えっ?」
「?」
突然、真上から降ってきた声。知らない子。
「ん?あ、ごめんなさい。邪魔しちゃいましたね」
何組だろう・・ただ、なんとなく感じた。死の予知ではない。
この子、雰囲気が変だ。
「あ、いえ大丈夫ですよ!ねぇ川本さん?」
「え、うん・・」
あの子は笑顔のまま立ち去った。
なんだろう、あの笑顔。なにかがひっかかる。
__________
「この時間はやっぱり少なかったなー」
昼間は夜に比べると扉が少ない。
黒い扉もなかった。
でも、またおもしろい扉を見つけた。
蝶々がふわふわ飛んでる中、ぽつんと立ちすくむ男。
あたしはただそれを見てるだけ。
男は、蝶々を掴み、潰す。
そして微笑むの。
真っ白な、残酷なせかいだった。
- Re: 銀蝶マリア ( No.7 )
- 日時: 2009/09/01 15:48
- 名前: 霧茜 (ID: 7z3IIjJJ)
銀蝶マリア
「 」
創り上げるのは難しいけど、壊すのはとても簡単。
婦女暴行殺人事件。
最近連続してこの事件が起きている。
あたまがぐるぐるする。
入ってくるのは殺された人々の記憶。
黒い服の男の人になぶり殺される。苦痛で苦痛で・・・
「くすくす」
「!?」
「更新されてるもんなんだね、これは最近流行の殺人事件?」
「だ、だれ・・?」
黒い服、白い肌。
いくつものスクリーンに映し出される、殺される場面。
その真ん中にぽつんと立ってクスクス笑っている女。
「だれなの?」
「知ったって意味ないよ」
女は笑いながら言った。
「貴女の夢はいつも悪夢だね」
「・・・え・・・」
「元々、幸せな夢を壊す主義なんだけど・・・おもしろそうだから、ね」
一気にスクリーンが消える。
女も消えた。
男が目の前にいた。
あたしは動けない。なんで・・・?
男はあたしを見ている。
そしてゆっくりと近づいてくる。
あたしは理解した。
今、あたし自身が、スクリーンの中の被害者。
殺される。
「・・・・ら、志村!」
「っ!!!」
とんでもない悪夢だった。
授業中の居眠り。まさかこんな夢を見るなんて。
全身が汗だく。
男のナイフを持った手が振り下ろされる瞬間が、まだ鮮明に残っている。
「ったく・・・居眠りしやがって」
「ごめん高橋先生・・・てか、タカちゃん」
「言い直さなくていいから、先生でいいから」
数学が高橋先生でよかった。
他の先生なら煩くいわれるところだが、高橋先生は見逃してくれる。
とにかく、もう居眠りはやめよう。
キーンコーンカーンコーン・・・
授業も終わり、気分転換に廊下へでてみる。
涼しい風が廊下の窓から吹いてくる。
「いいよ。持ってってあげる、数学準備室でしょ?」
「ありがとう!」
クラスの提出物だろう、ノートを持って教室から出てくる生徒。
「(色、白っ!)」
その生徒の肌はとても白かった。
__________
「失礼します。1年1組の週番です。クラス提出物を持ってきましたー」
「はーい、ごくろうさま〜」
数学準備室の入り口から聞こえた声は、予想してた者とは違っていた。
「成沢さんって週番じゃない・・よね?」
「週番の人、委員会だから代わりに持ってきたんです」
「そっか・・」
提出物を受け取って、終わりのはずだった。
明日はどんな世界か楽しみですね。
思い出さなければ、終わりだったのに。
「待って、」
- Re: 銀蝶マリア ( No.8 )
- 日時: 2009/09/02 20:40
- 名前: 霧茜 (ID: 7z3IIjJJ)
銀蝶マリア
「アリア崩壊」
「待って、」
がらがらがら、墜落。
__________
「っ!」
悪寒が襲う。
強い不快感。
昨日の不快感が一層濃度を増した。
もうそろそろ、かな。
全ての授業は終わって、あとは帰るだけ。
下校時、誰かが死ぬ。
不思議なことに、不快感の根源が誰なのか特定できない。でもすぐ近く。
きっと交通事故か何かだ。もう、うんざり。
一人でゆっくり帰り道を歩く。
不快感はまだもやもや。
その時点で、気づくべきだったのに。
視界が真っ暗になる。
頭が、まわら、ない、よ
__________
「・・・・っごめん・・なんでもない」
よく考えろ。
あの夢の話をしたって、何になる?
それに夢に出てきただけで、何なの?
あれはたまたま、たまたま出てきただけ。
夢の中だから、現実の成沢さんは俺の目のことは知らないはず。
「・・・?」
「ごめんね、何でもないから。ノート持ってきてくれてありがとうね」
「・・はい、じゃあ先生、さようなら」
「うん、気をつけてね」
「また明日ー」
知らないはず。知らないはず。
何も言わないで、振り返らないで、夢の中の様な笑い方しないで。
もしかしたら、今晩会うかも。
呼び止める理由はそろった。
口パクだったけど、確かにそう言った。
でも、呼び止められなかった。
今晩、会う、かも・・・・
__________
「紫、提出しといてくれてありがとう!」
「ううん、大丈夫だよ〜」
「・・・何かテンション高いね?いいことあったの?」
「ん?んーあったかも」
あれは覚えてたんじゃない。
思い出したんだ。
でも嬉しいな。
今晩はすっごくおもしろくなりそう。
夢を壊す以外に、夢の中で面白いものを見つけた。
それが、墜落直後。
がらがら、がしゃん。
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