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儚い僕らと幻想リズム
日時: 2009/09/09 16:56
名前: 立夏 (ID: VZEtILIi)

更新遅いケド、頑張りまぁす。
結構重たい感じです。

†…★…†登場人物†…★…†

□僕−秋本 サク□
17歳。2年C組。物語の語り手。 中学時代のとある事件で、自分を「殺人者」だといい始める。

■幻想少女−天宮 文香■
18歳。3年A組。自称「幻想少女」。中学時代に記憶を失くしており、それまでの記憶を幻想で作っている。

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Re: 儚い僕らと幻想リズム ( No.1 )
日時: 2009/09/09 17:01
名前: 立夏 (ID: VZEtILIi)

────────────────────────

俺は片時も彼女を殺そうと決意した。

彼女の白く、病的な唇にそっとキスをしながら、血が流れ出るのを見つめ、快楽に浸りながら、美しい彼女の顔が真っ青になるのを見つめよう。
彼女がどんなに叫んでも、懺悔をしても、俺は絶対に許しはしないだろう。

彼女は、それだけの罪を犯したのだから。


────────────────────────

Re: 儚い僕らと幻想リズム ( No.2 )
日時: 2009/09/09 17:08
名前: 立夏 (ID: VZEtILIi)

        …序章…
     〜僕は弱い人間です〜

僕にとって、幸福な時間は沙羅といる事だった。
沙羅はいつも笑って、いつも綺麗な歌を聴かせてくれた。沙羅の歌う歌は、どれもこれも天使の歌声のように思えて、心地よかった。

でも、もう沙羅は僕にあの眩しい笑顔を向けてくれない。もう、あの美しく愛らしい歌を聴かせてくれない。

沙羅は僕の前で自らの腕に鋭い刃を付きつけ、赤色に染まりながら倒れて行った。
世界が、壊れた。
音も何も聞こえない。聞こえるのは、絶望の囁き。
悪魔の囁き。

僕が沙羅を殺した。僕が沙羅を殺した。僕が沙羅を殺したんだ。

沙羅は一命を取り留めたけど、僕の前に現れてくれなかった。
僕はその日、「殺人者」になったんだ。

Re: 儚い僕らと幻想リズム ( No.3 )
日時: 2009/09/10 16:55
名前: テト (ID: VZEtILIi)

       …第一章…
  〜文香先輩は今日も幻想について語る〜


蜂蜜色に照らされる教室の中。僕は文香先輩に進められた小説を読む。絵がほとんど無く、字も小さいから読むのに結構時間がかかった。
絵が無い小説は、頭の中で場面や人物を「想像」できるため、文香先輩は気に入っている。

第一湊高等学校の校舎から少し離れている所にある、今はあまり使われていない旧校舎の最上階。
たまに吹奏楽部が旧校舎で練習する為、放課後にここで小説を読みながら音楽を聴くのも悪くないなと思う。

「この主人公はとても悲しい人なのね。冷たい氷のような気持ちが心理描写としてよく書かれているわ。この人を見ると、とてもぞっとするような、そんな気持ちになるの」

狭い資料室として使われている教室の、窓側の席にちょこんと座っている文香先輩は、小説を片っ端から読みあさる。小説だけじゃなくて、詩や漫画、新聞紙なども読む。そうして、人物や物の気持ちなどを想像しているらしいけど……。

「サク、どこまで読んだ?」
二つに結んでいる腰まである長い髪を肩からこぼれさし、綺麗な大きい瞳で僕を見る。
文香先輩は、美人だ。
清楚なお嬢様のようで、色白で勉強ができそうな。お姉さんのような感じ。
僕のクラスにも、何度か文香先輩が綺麗だと言う男子もいる。

「半分以上です。もうすぐで終わります」
「そう。なら、感想を聞かせて?どう想像したのとか、自分だったらどうするの、とか」
甘い菫の香おりをさせながら、綺麗な笑顔を見せる。

「わかりました。文香先輩、本当に小説好きですよね」
半ば呆れて言うと、うっとりした表情で目を閉じて、
「小説も好きだけど、想像したりするのが大好きなの。想像することによって、私は成り立っているのだから」
そう答えた。

文香先輩は、自分の事を「幻想」と言う。
人間ではなく、幻想で創られたのだと。最初は呆気にとられて、何言ってるんだってなったけど。そう聞くと、少し困った顔で「私の過去は、消えているの」と呟く。

まったくわからない。
文香先輩は一体何者なんだろう?家もわからないし。
僕が放課後にここで小説を読んで感想を聞かされるのは、僕が「幻想的」だかららしい。

「とても悲しそうな瞳をしているの。とても綺麗で澄んでいるのだけど、闇がかかっているような。そこが幻想的で、素敵なの」

当たっていると思う。それを言われて、僕は驚いた。僕の過去は、泥沼で汚れている。ドロドロで、雨が降っていて、思い出したくも無い。
文香先輩はソレを見抜いた。僕の闇を。心を。

「サク、そろそろ夕飯の時間だから、帰りましょう」
読みかけの本を閉じて、優しい声で文香先輩が言った。鞄を持って廊下に行くと、短い髪の女の子が通り過ぎる。

「あら、もう鍵かけちゃったわ」
文香先輩が慌ててその子に言うと、ゆっくりと振り返って、無言で僕らを見た。

女の子なんだろうけど、髪は限界まで短い。背は小学生みたいに小さくて、小柄で、アニメに出てくる女の子のようだった。
「その資料室に用があるの?」
「うん。だけど、鍵かけちゃったのぉ?」
可愛らしい声でその子が言う。

「えぇ。今あけるわ」
文香先輩が鍵を取り出して資料室を開けようとすると、その子が慌てて、
「もぉいいや。ボク、たいした用事じゃないし。あんがとねぇ」
お礼を言って、階段をリズムよく下りる。

「良かったのかしら」
「いいんじゃないですか。それより早くしないと門が閉まりますよ」
「それはいけないわね。帰りましょう」


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