ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 幽霊日記
- 日時: 2009/09/25 17:27
- 名前: のんべえ (ID: 84ALaHox)
俺は今日まで平凡な男子高校生だった。ちょっと邪気眼をやってみたり、まあそういう中二らしさを前面に押し出した高校生。しかし、俺の意に反し大きな病気にかかったり悪の組織が現れたりなんてことは一切起きず、俺はただ普通に流れていく日常にそろそろ退屈していた。
しかし、今日からの俺は違う。クラスのヒーローで、幽霊を除霊する能力を持つ物語の主人公となったのだ。
「ほらほら、サインならいくらでもやるぜに」
「にしてもすげえよなあ、これ、本当にお前が撮ったのかよ」
「失礼な。たりまえだろ、俺は昔からそういう能力があって……」
物語のあらすじを説明すれば、入学式の日、男子で意気投合した面子を撮影した写真にグレーの服をきた若い姉ちゃんが写っていたのだが、どうもその姉ちゃんには首がないように見えて仕方がなかった。うつむき加減でたっているのでそのせいかとも思ったが、やはり首がないような気がする。
それだけだったら「なんだただの見間違いか」で終わったのだろうが、うちのクラスのある女子生徒がその写真を見た途端、急に叫びだした。呪われてる! そう叫んでから、その女子生徒はずっとぶるぶる震えて、なぜだか撮影した俺をすごい目で睨みつけてくる。
そうして俺はなぜだか、今、その女子生徒に殴られた。
Page:1
- 幽霊日記-01 ( No.1 )
- 日時: 2009/09/25 18:09
- 名前: のんべえ (ID: 84ALaHox)
「馬鹿騒ぎしてるけど、それ、お前殺すよ! 絶対殺す! よく見てみたらどうなの!」
水木はどちらかというと寡黙なほうだ。寡黙というか、いつも疲れたようにしている。背の高い美人だし、まあ寡黙といっても冗談も言うし人の悪口も言わないので友達は結構いるみたいだ。そうなれば俺も勿論マークする。
しかし、水木がこんなに大きな声を出したのを見たのは初めてだった。女子にしては低い声のおかげで、殺すよ、という言葉が余計怖い。鋭い目は俺をギンギラギンに見つめていた。
「そうちゃん、そんなに怒らなくても」
女子がなだめる。そうちゃんというのが水木のことだと理解するのに少しかかった。水木を見ると、いつの間にか普段どおりの少し疲れたような顔だった。
その顔にしばらく唖然としていたが、女子の刺さるような目に気づきいわくの写真をじっと見てみる。すると、俺がじっくり見ていたその横で大柄なモッチがかすれた声で言った。
「この人、首、ないよ」
全員がぎょっとした目でモッチを見る。モッチはおおらかな性格だが頼りになる大男で、霊とかそういうものは信じていない、どちらかというと皆を慰めるようなそんな役回りだったからだ。
「首……この人の首、ないけど、俺のこと、ずっと見てる」
モッチ、と声をかける間もなくモッチは続けた。
「写真全体にこの人の顔うつってる! すげえ目で、俺たちのこと睨んでるよ!」
写真をのぞきこむ。クラスにいた全員がはっと息を呑む音が聞こえた気がした。
今までその女に集中しすぎて気がつかなかったが、写真は全体的に赤みがかっており、恐ろしい形相をした女の顔がこちらを睨んでいるのだ。俺はそのとき、なぜだかわからないが水木が言ったように「殺されるんだ」と他人言のように感じて、その女は俺のことしか見ていないような気もした。
- 幽霊日記-02 ( No.2 )
- 日時: 2009/09/25 23:38
- 名前: のんべえ (ID: 84ALaHox)
結局あのあとお調子者のトモが場をおさめたが、隣の女子は俺からあきらかに机を遠ざけた。ネタや自分に危害がないものならまだしも、マジモンの心霊写真なんてほしがるオカルトマニアはうちのクラスにはいなかったので、あの心霊写真は今も俺の鞄の中にある。
ふう、とためいきをついた。どうするか見当もつかない。姉ちゃんのほうを見ると、テレビをつけっぱなしにしながら熟睡していた。大学生は人生の夏休みだーなんて喜んでいる。
「しにたくねー」
言葉がもれる。頭の中に漠然とした死のイメージと恐怖は浮かぶのだが、なぜだか、現実感はまったくわかなかった。
あっ。
ひらめいた。
ひらめいたというより、なんだかおかしいことに気づいた。心霊写真にも俺の死にもなんの関係もないのだが、そういうときに限って気になることもあるものだ。
「なんか、時間が進むのはえーな」
今日は朝の出来事以来ほとんど何も覚えていない。授業の内容を覚えていないのはいつものことだが、友人と話した大まかな内容や、今日の昼食、俺がどうやって帰ってきたのか……。
俺の記憶にぽっかり穴が開いている。違和感だ。
突如ピタッとなった。今、はまった。何かが脳の中でぴったり当たった。ゆっくりと目を閉じて集中してみる。
もう一度目をあけると、俺はいつの間にか水木と表札のかかった家の前に立っていた。
Page:1
この掲示板は過去ログ化されています。