ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ヴァンパイヤ
日時: 2009/10/06 23:44
名前: 貴意 (ID: u2Na5wQQ)

 プロローグ

 俺はヴァンパイア。

 狙った獲物は逃がさない。


今夜も、女性の白い首筋に近づく。

 俺の牙が血を吸う。

『………ごちそうさま。』

 これで何回目だろうか。

 俺の為に、沢山の女性が犠牲になる。

 しかし俺の頭には『罪悪感』『後悔』の二文字はない。


 満月の夜、窓から飛び立とうとした。

 ………その時

((ギー

ドアが開く音がした。

 そこには、小さな、小さな女の子が呆然と立っていた。


男は女の子に近づく。

 「名を、教えてくれますか?お嬢さん」

……キンモクセイの、香りがした。

 「ヴァロム」

か細い声で女の子は答えた。

 「よろしく、ヴァロム」

 男は女の子のヴァロムと名乗る女の子の手を取り、その甲にキスをした。

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Re: ヴァンパイヤ ( No.2 )
日時: 2009/10/06 23:37
名前: 貴意 (ID: u2Na5wQQ)

曇り空、今日も女性を眠りへと誘う。

…………キンモクセイの、香り


 首筋に近づこうとした。

 女性は背中に手を回してくる。

『……厄介だな』

 消毒代わりに噛むとこをなめる。

(ピチ

 牙は女性の血を吸った。

 女性はどんどん白くなる

 次第に、手の力はなくなって………やがて、動かなくなった。

「ごちそうさま」

 にやりと笑って口元を拭う

窓から大きな風が入った、カーテンが揺れる

 いつのまにか、女の子が立っていた。

「あいかわらず、いやらしいわね。リキュール」

「……来たのかい。ヴァロム」

 リキュールと呼ばれた男は、女性のもとを離れた。

「さ、帰りましょ」

 女の子は手を差し出す。

 リキュールは立て膝をし、その手を取る

 そして、人差し指を軽く牙でさした

 次の瞬間、

 女の子は消え、リキュールの背中には大きなコウモリの羽が生えていた。

 「さあ、行こう」

   彼らは曇り空の風にのった。

Re: ヴァンパイヤ ( No.3 )
日時: 2009/10/07 01:42
名前: 貴意 (ID: u2Na5wQQ)

 「ふ〜………」

朝のカフェは、これから通勤する人で混んでいる。

 その奥の席で、20代ぐらいの若い男女がコーヒーを飲んでいた。

「じゃあ、私は先に行くけど、くれぐれも汚さないでね」

 じゃあね、アド。と言い残すと、その女性は足早に行ってしまった。

「ありがとう、ラベンダー!」

 汚さないでと言われた書類のような束を片手に、男はラベンダーの背に向かって言った。


 彼の名前は『アドギレス・ラ・コルキー』

入社3年目にして、腕の効く刑事だ。

 祖父は、『神の頭脳を持つコルキー』と署内で言われる程の名刑事だった。

 あの祖父にしてこの孫有り。

 この3年間という短期間で、アドギレスは数々の難事件を解決していった。

 彼がラベンダーと言うパートナーから預かったのは3つ。4年前に起こった事件と、その2年前に起こった事件の書類。

 そして、40年前に起きた『最後のヴァンパイア』事件の書類。

 そう。今回、アドギレスに任された使命は、

『ヴァンパイア』

 ヴァンパイアは、彼の祖父の世代に大問題とされ、祖父が生涯をかけて解決したはずだった。

 アドギレスの祖父は、『最後のヴァンパイア』と呼ばれた奴と相打ちになり、命を落とした。

 コーヒーをすする。

この3枚の書類を見比べる。

 
 40年前の被害者の写真を取り出した。

この事件は、主に若い女性を狙った殺人事件だった。

 写真には、人間とは思えない程白く、美しく横たわっている女性が移っている。

 そして、その首筋には……牙の痕。

『おかしい……』

 かつては、ヴァンパイアと人間は共に生活していた。

しかし、その事件を境にヴァンパイアは全員消滅したはず………。

 つまり、もう生き残ってるはずがないんだが……。

2枚の写真を取り出す。

 40年前の被害者とそっくりな写真だった。

あの悲劇が再び訪れるのか…………。

 しかし、4年前の出来事には気がかりな事があった。

書類には

  パチル・ダ・オール(24歳) 死亡

  ヴァロム・リ・オール(5歳) 行方不明

と記録してある。


 これがどうしても引っかかる。

 あれから、その少女の行方は全くわからない。


『…………………。』

 しばらく、書類と写真を交互に見る。

周りが『何事だろう』とチラチラ見てくるがお構いなし。


 「すみません」

しばらくして、男が声をかけてきたことに気づいた。

 「店内が混んでいるので、相席してもよろしいでしょうか?」

 かなり、紳士的な人だ。

 「あ、ああ。どうぞ」

 俺は散らかした書類を片付けた。

 「お気遣い無く。続けてください」

 男はそういうと、ウエイトレスにコーヒーを頼んだ。

 「すみません、ではお言葉に甘えて……」

 一応断ってからまた、書類を作業に没頭した。





 「刑事をやっているのですか?」

 男はあまりにも唐突に聞いてき。

 「え?」

 正直言って、俺は驚いた。

 「何故、分かったんですか?」

 男はコーヒーを一口飲んでから答えた。

 「あなたの人差し指に、大きなたこが見えます。きっと拳銃を使う仕事です。
  自衛隊とゆうのも考えましたが、ここの地域ではそんな職場はありません。
  まあ、ほぼただの当てずっぽうです」

 「すごいな〜……当たってますよ!」

 「その書類にはヴァンパイアの事が書いてありますね?」

 「あ!これは……企業秘密です!」

 「なに言ってるんですか、丸見えですよ?」

男は少し笑って言った。


 「いや〜……まいったな。
   参考までに聞きますが……」

 何かの縁だと思い、4年前の少女行方不明事件について聞いてみる事にした。
 第三者の意見が役に立つケースもある。

 「私は、ヴァンパイアが連れさらったのだと思いますが、理由が分からないんです。足手まといになるだけでしょう?

  えーっと、お名前は?」

 男は興味深そうに聞いていた。やがて、口を開いた時にはコーヒーは冷めていた。

 「………スチュワートとよんでください。

   ヴァンパイアがそのヴァロムちゃんをさらったと言う仮説には賛同できますね。」

 「はあ、署では反対する人が多かったのですが。
   アドギレスです。アドと略して頂いても構いません」

 では、アドギレスさんっと男は言い始めた。

 「きっと、ヴァンパイアは少女が邪魔になった。
   犯行を見られたからではないでしょうか?」

 「しかし、反対派がいうには、そんな深夜帯に、幼い少女が起き、音を感知して自分の意志で部屋に行ったという事は考えられないと……」

 「では、どうして少女はいなくなったか……」

 「そこなんです」

 「しかし、その反対派が主張することと、正反対の事が起こったとしたら?」

 「え?!……しかし、科学的にも、やはり可能性が低いです」

 「その考え方がいけないと思います。
   可能性が無いわけではないんです。なにしろ、世の中には信じられない出来事の集合体ですから」

 スチュワートが真面目な顔でそういったので、おもわず吹き出しそうになった。

 ふと、時計をみたら、7時半。8時までには署に向かわなくてはならない。

 「面白い人だ。スチュワートさん」

残りのコーヒーを飲み干してから言った。

 「いえ、あなたの方が面白いですよ」

 スチュワートの言った事を追求する時間は無かった。

 「すみません。もう時間なのでいかなくては……
  参考になりました。そのコーヒーは僕がおごります」

 書類をまとめて鞄に入れ、会計を机の上に置いてその場を立った。

 「また、お会いしましょう」

こうゆう時に握手を求めるのが社交辞令だ。

 スチュワートは微笑んで「ありがとう」と言った。

 そして、握手をすると、俺は足早にカフェを後にした。
   
 
 

Re: ヴァンパイヤ ( No.4 )
日時: 2009/10/09 00:05
名前: 貴意 (ID: u2Na5wQQ)

 「……今日も先に行くのかい?」

 「ええ、細かい事件が溜まってるのよ」

 今日も奥の席で、アドギレスとラベンダーはコーヒーを飲んでいた。

 ラベンダーが席を立とうとした時、またあの男がやってきた。

 「また会いましたね、アドギレスさん」

 アドギレスは驚きながらも、好奇心の溢れる目で迎えてくれた。

 「スチュワートじゃないか!
   ラベンダー、昨日話しただろ?」

 ラベンダーは立ち上がって手を差し出した。

 「あら、あなたがスチュワートさん?
   アドから聞いたわよ、面白い思考の持ち主だって」

 スチュワートはラベンダーと握手をしながら、

 「それは光栄です。美しいお嬢さん」

 と、微笑みながら言った。

 「お世辞がお上手ね〜
   私、今から仕事なの。この席、座っていいわよ?」

 「では、お言葉に甘えまして……」

 スチュワートはすぐには座らずに、椅子にかけてあったラベンダーのコートと鞄を手渡した。

 「アドの言うとうりだわ。
   本当に紳士的な方なのね」

 ありがとう、ごゆっくり。
  ラベンダーはそういうと、カフェを出て行った。

 「美人だろ?」

 椅子に腰掛けたスチュワートにアドギレスは自慢そうに言った。

 「今の女性は?」

 「ラベンダー、俺のパートナーさ」

 「お仕事場のですか?昨日、事件の書類を渡していたところを見ましたが……」

 「そうでもあるな。
   彼女は俺の相棒でもあり、ガールフレンドでもあるって事だ」

 アドギレスは照れ笑いをしながら、スチュワートの問いに答えた。





 スチュワートが注文したコーヒーが届いた時、アドギレスが口を開いた。

 「昨日話してくれた事、ラベンダーに話して上司に掛け合ってもらったんだ。再調査を考えるってさ」

 「そうですか、お役に立てて光栄です」



 

 

Re: ヴァンパイヤ ( No.5 )
日時: 2009/10/09 21:54
名前: 貴意 (ID: u2Na5wQQ)

「ずっと気になっていることがあるのですが……」

「なんだ?」

 スチュワートは遠慮がちに聞いた。

「ヴァンパイアってどうやって捕まえるんでしょうか?」

「ああ、確か、俺が拳銃使いだって知ってるよな?」

 アドギレスは持っていたコーヒーを置いて話し始めた。

「じゃあ、拳銃を?」

「まあそうだな。
  しかも、ただの弾で撃つんじゃない。
呪文が唱えられているんだ」

 「呪文?」

スチュワートは怪訝そうに聞き返した。

 「俺の爺さんはそうゆう仕事をしていてな、今も形見の拳銃を持ち歩いてるよ。使わない事を祈るけどな」

 アドギレスは鞄を開いて、銀色に光る鉛の銃を取り出した。

それに、スチュワートは驚いた顔を見せた。

 「ん?どうしたんだ」

 「………何でもありません。危ないでしょう、こんなところで出したら」

 「それもそうだな、これはしまうとしよう」

丁度そのとき、カフェ店内に大きな風が入ってきた。

 「………わ〜、すごい風でしたね」

 「本当だな……もう秋なんだ、昨日からキンモクセイの香りがすごいもんな」

 「そうですね」

アドギレスはそういってからコーヒーを飲み干そうとしていたので、スチュワートがにやりと笑ったのが見えなかった。

Re: ヴァンパイヤ ( No.6 )
日時: 2009/10/09 22:06
名前: 貴意 (ID: u2Na5wQQ)

 ここには大きな窓がある。

だから三日月がよく見える。

 そこに少女がいた

 静かに、椅子に座って、窓にもたれながら月を見てる。



「いい月だね、ヴァロム」

「……リキュール。いきなり現れるのはやめてって言ったでしょ」

 冷たいね。そういって、リキュールはヴァロムのそばにある椅子に腰をかけた。

 「……で?そろそろ決まったの、次のターゲット」

 「ああ……」

リキュールはそこでいったん、話しをきった。

 古い古時計が鳴る

ニッと笑って口を開けた

 「ラベンダーってゆうんだ」


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