ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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薔薇の騎士団 -chevalier-
日時: 2009/10/11 13:58
名前: 東雲ゆきと ◆1fBR9J/x5I (ID: wSDPsNEc)

はじめまして、今日は。今まではイラスト中心の活動だったのですが、
このたび小説の方へも手を伸ばしてみる事にいたしました。

この物語にはバトルシーンや少々グロテスクな表現が入る恐れが
御座います。そのようなものが苦手だという方は、即刻ブラウザバックで
御戻り下さい。読んでからの苦情は受け付けません。

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Re: 薔薇の騎士団 -chevalier- ( No.1 )
日時: 2009/10/11 14:20
名前: 東雲ゆきと ◆1fBR9J/x5I (ID: wSDPsNEc)
参照: プロローグ

昔、一人の天才が「クリムゾン」という薔薇の種を作り上げた。無論、ただの薔薇ではない。その種は人に寄生し、宿主に人の限界を超えた力を与えるのだ。——その天才が亡くなってから8年後の十九世紀後半。世界各地で「クリムゾン」の被検体を発見し、研究しようという動きが広まった。国家連盟所属特別科学捜査機関「シュバリエ」もその一つ。彼らは各国から有能な人材を集め、クリムゾンの宿主を探し出そうと躍起になっていた。

7月10日 首都ルージュにて「赤薔薇」発見す
8月28日 北の都ベールにて「白薔薇」発見す
翌年3月9日 古都ヴィオレにて「黒薔薇」発見す

順調に宿主が見つかっていく中で、一人だけ存在すら知られぬ薔薇が居た。最も強力な力を持つとされる伝説の被検体「青薔薇」。誰も見た事のない薔薇を誰もが忘れようとしていたとき——

2月15日 シュバリエ北欧支部周辺の森にて「青薔薇」発見す

物語は此処から始まる——

Re: 薔薇の騎士団 -chevalier- ( No.2 )
日時: 2009/10/11 15:15
名前: 鈴羅 (ID: vjv6vqMW)

おもしろいですね!
頑張ってください!

Re: 薔薇の騎士団 -chevalier- ( No.3 )
日時: 2009/10/11 22:14
名前: 東雲ゆきと ◆1fBR9J/x5I (ID: wSDPsNEc)
参照: プロローグ

*鈴羅さま

有り難うございます。
まだまだプロローグの段階、この話は長くなる予定なので
継続出来るよう頑張っていきたいです。

Re: 薔薇の騎士団 -chevalier- ( No.4 )
日時: 2009/10/11 23:49
名前: 東雲ゆきと ◆1fBR9J/x5I (ID: wSDPsNEc)
参照: 第一夜

それはまるでマリオネットのような
 首都ルージュから東へ約4マイル程離れた崖の上に、国家連盟所属特別科学捜査機関——シュバリエの本部はあった。黒く塗りつぶされた門は闇夜に溶け、唯一の入り口であるそれを見せようとしない。館というよりは城と言ったほうが適切であろうその巨大な建物もまた、壁面から屋根まで漆黒の色に染まっていた。数えればキリの無いような数の窓のなか、一つだけ灯りのともっているものがあった——
 
「おい、こんな夜中に何の騒ぎだ?」
午前三時。シュバリエ本部の中でもっとも広いとされる大聖堂に、幾百もの人間が集まっていた。あまりの騒ぎに起こされたのであろう、褐色に同色の瞳をした少年が不機嫌そうに扉を開けた。
「リオン様!」
集まっていた人間が皆一様に少年のほうを見た。自分よりはるかに年上である大人からも敬称で呼ばれている事から、少年の地位が彼らよりずっと上であるということが分かる。リオンと呼ばれた少年は、集う人々のなかに見知った顔を見つけてそちらへ歩み寄った。
「ロット!何の騒ぎだよ、これ。」
漆黒のローブについたフードを深々と被っており、長く垂らした前髪でほとんど瞳は見えないが、体つきで辛うじてリオンと同年代くらいの少年だと分かる。ロットと呼ばれた彼は、ゆっくりと振り向いて少しだけ笑った。
「やあ、遅かったね……リオン。」
ロットはそれまで話していた幹部のもとを離れ、リオンの袖をひき人を押しのけながら奥へと進む。困惑するリオンを、静かにして、と一喝して一番奥の戸を開ける。中は薄暗く、二人で入るのが限界といったスペースしかなかった。帚や布巾があることから、昔は掃除用具入れだったのだろう。今はくもの巣がはっており、誰も使っていない事は明らかだ。では何故彼はリオンをここに連れ込んだのだろうか。答えは簡単である。人に聞かれては行けない話だったからだ。
「薔薇が見つかったんだって……。」
唐突にそう切り出したロットの言葉に、リオンは目を丸くしてわけが分からないといった表情をする。
「北欧支部の近くに……森が、あるでしょう……。そこで、伝説の青薔薇が見つかったんだって…。」
ぽつりぽつりと呟くように話すのは彼の癖らしい。途切れ途切れのその口調に慣れるまでは、彼が本当は何が言いたいのか分からない。しかし、リオンには分かったようだ。
「青薔薇!見つかったって、それで何で……。」
褐色の瞳が揺れる。相当驚いているようだ。
「さっき、本部に送られてきたんだって……。皆、その子を見たくてしょうがないみたい。」
彼の話によると、昨晩支部で発見された"青薔薇"の宿主が先程本部に送られて来て、現在身体検査をしている所だそうだ。検査が終わって真っ先に行くのはおそらく室長室。そこへ行くにはこの大聖堂を通るしか無い。隊員は皆、伝説と言われる青薔薇を一刻も早く見たくて仕様が無いのだ。
「馬鹿馬鹿しい、俺は帰るぜ。眠くて死にそうなんだよ。」
リオンは不機嫌そうに言うと、扉を開けた——はずだったのだが、ドアノブにかけた手をロットが上から押さえつけていた。まだ何かあるのか、と問うと、ロットは小さく頷いた。仕方なくもう一度床に座る。
「ここからが大事、聞いて……。長く世間に求められて来た薔薇なんだ。どんな手が奪おうとしてくるか分からない。……僕とリオンで護衛しろって……。」
リオンは思わず聞き返した。護衛……この俺が?と。ロットは困ったように笑って頷く。
「僕たちだけじゃない。戦闘に特化した人間があと二人……。」
どんな人かは僕もしらないけれど、と呟いて。リオンは押さえられていた手を乱暴に振り払うと、
「冗談じゃ無い。何で俺が薔薇のお守りなんざしなくちゃいけない。室長にかけあってくる。」
扉をバタンと閉め、大聖堂から出て行ったのだった——……。
 続く

Re: 薔薇の騎士団 -chevalier- ( No.5 )
日時: 2009/10/15 08:42
名前: 東雲ゆきと ◆1fBR9J/x5I (ID: wSDPsNEc)
参照: 第二夜

それはきっと仕組まれた喜劇
 薄暗く長い廊下を、ぶつぶつと不服を言いながら進んでいく人影がいた。褐色に同色の瞳をした少年——リオンだった。
「何で俺が薔薇の護衛なんかしなくちゃならない……この俺が……!」
暗闇の中、リオンの褐色の瞳がその怒りに満ちた顔を一層際立たせる。果てしなく続くかと思われた廊下をようやく突き当たりまで行き、頑丈な鍵が幾つも施された大きな扉の前に立つ。初めて来る人間は決して分からないであろう扉の隅の隅に、赤い小さな光の点滅している小型機械があった。リオンは、慣れた手つきでその機械にポケットから取り出した鍵を差し込んだ。すると赤かった光は一瞬だけ白く輝いた。その瞬間、ガチャリ、という鍵の外れる音がした。大きな扉を力いっぱい押して中に入る。リオンの開けた扉がバンと大きな音を出した。失礼する、と小さく言い、うやうやしく部屋の中の人物へとお辞儀をした——のも束の間、次の瞬間、リオンは物凄い早さで部屋の奥まで行き、窓辺で優雅にお茶を飲んでいた人影につかみかかる。
「おい、レイニー!」
入ってくるなり怒鳴りつけたリオンとは裏腹に、いきなり胸ぐらをつかまれた人影は声一つあげなかった。
「どうしたんですか?そんなに青筋立てちゃって。」
窓からの日ざしが逆光となり、人物の顔はよく見えない。そのぶん、彼の銀色の髪が余計に目立つ。口調からして、いきなり入って来たリオンに驚きさえしていないのだろう。そんな彼の態度が気に喰わなかったのか、リオンはレイニーと呼ばれた男性の耳元で思いっきり叫んだ。
「な・ぜ・お・れ・が・ば・ら・の・ご・え・い・な・ん・だ!」
レイニーは一瞬きょとんと目を丸くし、すぐにまたにっこりと笑った。
「そんなに怒らなくても良いでしょうに。ほんっとに沸点の低いお坊ちゃまには困りものですねぇ〜」
そう言って愉快そうにケタケタと笑う。リオンが彼の座っている椅子を思いっきり蹴ると、さすがにその口元から笑みが消えた。
「リオン君は確かに第一級兵士です。対して私は一応室長なんです。頭の良い君ならどちらが上かなんてすぐに分かるだろう?」
柔らかな物腰だが、顔は真剣そのものだ。リオンもさすがに怖じ気づいたらしく、素直に黙った。
「良い子ですね。」
リオンのもとに歩み寄り、手が全く覗かない長い袖で彼の頭を優しく撫でる。明るい所に出たためにあらわになったレイニーのライトブルーの瞳が、鋭くリオンを見つめる。リオンは逃げるように瞳をそらし、レイニーの腕を振り払う。
「それで。」
短く問う。彼にはそれで十分だったようだ。
「うん、その話なんですがね……。ほら、出ておいで。」
レイニーが奥の部屋を向いて手招きする。リオンはわけが分からないといった風に首を傾げたが、理由はすぐに分かった。ギイ、と音を立て、扉が小さく開いた。小さな小さな隙間から、少女が一人顔をのぞかせた。真っ白な肌に淡いパープルの髪。怪我をしたのだろうか、左目には包帯が巻いてあったが、もう片方のグレーの瞳は不安気に揺らいでいた。
「誰だよ、そいつ。」
リオンがじろりと少女を見る。少女は何も言わず、じっと見返して来た。
「彼女こそが、我々の探し求めて来た存在そのものだ。」
レイニーが呟く。リオンが尚も不可解そうにしているのがおかしかったのか、レイニーはくすりと笑みをもらし、もう一度言葉を紡いだ。
「彼女が、青薔薇だよ。」


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