ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 非日常の非日常
- 日時: 2009/10/20 22:33
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: dCDhnHOn)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=11536
題名固定
初めましての方は初めまして、仲矢真由乃と申します。ご存知の方はどうも、このスレを開いていただいてありがとうございます。
現在コメディ・ライト小説で短編集を書いているのですが(上記URL)ネタに詰まってきたのでこっちで時間稼ぎをしようという戦略です。つまり逃げてきました。
ちなみに知らなくてもいい情報ですが、以前ここで執筆していた作品「キメラノイド」(削除されましたが)と世界観が同じです。スピンオフ的な。別にそっちの作品を読まずともこの小説を読むのには全くモーマンタイですが。
1非日常 >>1
2非日常 >>2
3非日常 >>3
4非日常 >>4
5非日常 >>5
6非日常 >>6
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- 1非日常 ( No.1 )
- 日時: 2009/10/13 17:25
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: F.VKszn7)
「迷ったよスバル」
「知ってるつーのカズキ」
二人の少年、スバルとカズキは細い石畳の道を歩いていた。無論迷っているので知らない道である。
「どうしようかなあ」
「歩くしかねえよなあ」
「だよねえ」
「だよなあ」
あまり困っている風には見えず、気負うことなくてくてくと歩を進める。しばらくすると、やはり見知らぬ広場に辿り着いた。
「何じゃあここは」
「分かんない。でもあまり平和ではなさそうだね」
カズキの言う通り、その広場は平和的で美麗な場所とは言いにくかった。所々に寝転がっている浮浪者、昼間だというのに酔っ払って騒ぐ集団、痩せているが目だけはギラギラと光る若者たち。目に映るのはそんな人々ばかりである。
「まだリュート国にこんな場所があったか。帰ったら総長に伝えないとな」
「だねえ。でもその前に僕たちを囲んでいる人達にどいてほしいことを伝えない?」
のんびりとカズキが周囲をぐるりと見渡す。カズキにつられてスバルも視線を向けると、なるほど確かに一定の距離をとられながら、粗野な雰囲気を持つ男達に包囲されていた。手に持つのはギラギラと光るナイフ。
「通してほしけりゃ金をよこせ」
「えー、十ロビンしか持ってないんですけどー」
十ロビンで買えるものといえば、パン一個ぐらいのものである。
「だったら死んで身ぐるみよこせ!」
男達の一人がナイフを持ったまま二人と突進してきた。
- 2非日常 ( No.2 )
- 日時: 2009/10/14 14:06
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: F.VKszn7)
「うらぁっ!」
男のナイフがスバルの脇腹を貫通しようとした時。
スバルが飛翔した。いや、飛翔と見間違うほど華麗に跳躍したのだ。そして、囲いの外へと音もなく降り立った。
「あ!?」
「そんなちゃっちい攻撃で当たるわけないだろ?」
やれやれというように首を振りながら、スバルは手首にはめていた黄色い腕輪を見せるため、腕を突き出した。
「リュート国軍前衛隊隊長、スバルだ」
次いでカズキも黄緑の腕輪を晒す。
「リュート国軍後衛隊隊長、カズキでーす。いえーい」
「いや、いえーいいらんから」
「そう?」
緊張感なく囲いの中外で遠距離会話をする少年二人を、男達は驚愕の表情で見比べた。
「お、お前らが……あの!?」
「そうそう、あの」
もはやピースサインをするカズキに誰も手を出せない。
スバルとカズキ。彼等の名声は、リュート国では余すところがないと言っても差し支えのないほど轟き渡っている。
リュート国全兵士を統率する最高峰の位、総長。
その補佐を務める副総長。
リュート国の最先端技術を駆使して広く深く情報を集め、管理する情報隊隊長。
その次に続いて高い位である前衛隊を統括する前衛隊隊長がスバル、また位としては前衛隊隊長と同格である後衛隊隊長を務めるのがカズキである。
万単位でいる兵士から見れば、とてつもなく高い位を持つのが、まだ若干十六歳であるスバルとカズキなのである。有名になるのも自然の摂理かもしれない。
- 3非日常 ( No.3 )
- 日時: 2009/10/14 21:10
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: F.VKszn7)
「で? まだやるなら付き合うぞ? 命の保証はしないが」
スバルが不敵に笑い、男達はそれぞれお互いの顔を見合わせる。流石に戦意喪失してしまったようだ。
「か……勘弁してくれ」
「そうか。一つ聞くが、今までこのやり方で殺した人数は?」
「ま、まだない。初めてだ」
「本当だな?」
スバルが鋭い眼光で射竦めると、会話していた男がおびえたようにこくこくと頷く。嘘をついているようには思えないので、スバルは一瞬視線を和らげた。だが、再び強めた後に男達へと口を開く。
「分かった。今回は処罰はなしにしておくが、金輪際こんな事をするなよ。したら分かってるな?」
「あ、ああ……」
「だとさ」
「良かった—。あ、ついでに聞くけどここから城までの道とか知りませんー?」
「ここで聞くのか」
「だって良い機会じゃん」
へらへらと笑いながら、カズキが質問を投げかける。
「知らねえけど……レリィなら知ってるかもしれない」
「レリィ?」
「そこの路地裏を入ったすぐにある依頼屋のメンバーだ。腕は確かだぜ」
「はーい、ありがとうございますー」
命を狙われた張本人達に礼を言うのもどうかと思ったが、スバルは口には出さなかった。
- 4非日常 ( No.4 )
- 日時: 2009/10/17 18:51
- 名前: 仲矢真由乃 (ID: C4wHHg61)
「ここだな」
「ここだね」
スバルとカズキは、依頼屋特有のポップな字体で描かれた看板を見上げた。ただ、薄暗い路地裏でそれを見ると不気味なことこの上ないのだが。
看板には「依頼屋 依頼受け付けます」と簡素に書かれていたが、よく見ると「ルーツと愉快な仲間達☆」という言葉の痕跡が確認できた。誰かが上から書き加えたのだろう。
スバルがドアを開けてまず耳に飛び込んできたのは、少年の声だった。
「あーっ!? ルーツ兄それおれの苺だし!!」
「元々は皆の苺!」
「でも配った後じゃん! ルーツ兄のあるじゃん!」
「良いじゃん減るもんじゃないし」
「思いっきり減ってるー!?」
あまりに場違いな会話に、スバルは扉を半開きにしたまま硬直してしまった。頭の回線がショートしたらしい。
一歩下がっていたため会話が聞こえなかったカズキは、スバルの突然の行動停止に首をかしげる。
「スバルー?」
「……」
返事はない。どうしたものかと思考してカズキが下した決断は、
「せいっ」
「痛ッ!?」
思いっきりスバルの向こうずねを蹴ることだった。いわゆるショック療法である。
「おまっ……いきなり人の急所を蹴るんじゃねえ!?」
「スバルが別の世界に旅立っちゃったのかと」
「そんなわけあるか!?」
渾身の叫びだった。
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