ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- おじさんとわたし
- 日時: 2009/10/19 16:57
- 名前: もよ人 (ID: MnBE3vuR)
ゾンビ退治の仕事をしているわたしが出会った、同業者の変なおじさんとの1日。
ホラーでシリアスだけどゆるゆる、ほのぼの。
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- 第一話 ( No.1 )
- 日時: 2009/10/19 17:01
- 名前: もよ人 (ID: MnBE3vuR)
わたしは処理の仕事をしていた。
何の処理かというと、動きだした屍の処理である。
ある地下鉄の駅近くにある、三階建てのビルの会社。
わたしはここに雇われていた。
この会社は、薬品や、健康食品などを製造している。
その効果は非常に絶大、人体に害もなく、質の高いものが多かった。
何故そんなに素晴らしいものが作れたかというと。
……いまから数年前、ある技術が開発された。
それは、死体をもういちど甦らせる、つまりゾンビをつくる技術である。
最初は素晴しい技術だともてはやされた。
しかしこの技術によって生成されるゾンビは、生前の意識をまったく持っていなかった。
それのみならず、内臓のみ活発に活動するが筋肉や皮膚の類は腐敗しつづけ(代謝の効果によってすこしは腐敗は遅れるものの……)、知能は当然無い。
しかし内臓は動くので食事すれば排泄物は垂流し、ゲームのゾンビみたく力が強くなったりしない……、
内蔵がこわれれば又死んでしまうので、捨て兵士にもならないし、動きものろい、とにかく何にも使えなかった。
そのうちこの技術は無視されることとなったのだが、
これに目をつけたのがこの会社。
新たにつくった薬品や食品などの人体実験に、
これら生ける屍を用いようとしたわけである……。
- 第二話 ( No.2 )
- 日時: 2009/10/19 17:05
- 名前: もよ人 (ID: MnBE3vuR)
ゾンビたちは内臓は活発且つ人間と同じようにものを吸収分解するため、それがたとえば良い物であれ悪い物であれ、しっかりと影響が出る。
もし腐敗して皮膚や筋肉がダメになっても特殊な……生理食塩水のようなものに内臓をいれておく。
そうすると活発に動く人体の内臓のみがそこにのこり、注射などで食道にモノを注入すればしっかり分解吸収し大腸まで行き排泄物としてたまるのである(出せはしないらしいのでそこは”取り除く”らしい)。
何年もおなじものを摂取させ、内臓への負担や効果を確認。
排泄物まで分析し、害もしっかりチェックする。
一度死んでいるので、べつに深刻なダメージがあってもかまわない。
しかし機能・サイズは人間と同等であるため、動物実験よりずっと信頼できる。
そんなわけで、この会社は当初は倫理的に問題があるとしてバッシングの対象等になったものの、つくるものの出来が良い上、かなりの高い安全性を誇ったため、「ゾンビ会社」との異名をとりつつ製薬・食品で着実に業績を伸ばしていったのだった。
- 第三話 ( No.3 )
- 日時: 2009/10/22 10:47
- 名前: もよ人 (ID: MnBE3vuR)
この会社の一階は事務所のようになっていて、三階は老人ホームらしい(わたしはいったことがない)。
二階で、実験・生成・死体の管理が行われているのだが、この二階でときどき、暴走ゾンビが生まれる。
それを処理するのがわたしの仕事だった。
わたしはその数少ない処理人として重宝されているが……じつは、この仕事、ほんとうは素人でもできるのではないかと思う……。
わたしは運動神経もいいわけでも、訓練してるわけでもない。
ただ、死体がまったく平気なだけなのと、全身の腱を覚えただけだ。
わたしは小さな、包丁よりすこし大きめのナイフで、かってに動き出したゾンビの腱を切り、運動不能にしている。
ゾンビは大変鈍いため、とくに困難なことではない。
まだ内蔵が健康な死体や、貴重なひとの死体など、保存したいのに暴走した死体を処理するのだ。
……ちなみに廃棄処分になっていいような死体の処理は、べつの処理人がやっている。
ベートーベンみたいな髪型をしたおじさんで、変人で有名なひとだ。
わたしは喋ったことはないし名前もしらない。
のこぎりみたいな刃の大きな刀で、ゾンビをめちゃくちゃにしてしまうのでおっかなくて近づけない。
運動神経は……とてもよさそうだった。
- 第四話 ( No.4 )
- 日時: 2009/10/25 22:08
- 名前: もよ人 (ID: MnBE3vuR)
その日もわたしは仕事で、その会社のちかくの駅でおりた。
遅刻しそうだったため、早歩きで進む。
地下鉄から地上へでる階段の手前に、駅ビルの飲食店街の広告がはってある。
その柱のところに、広告をじーっとながめているらしき人が居た。
誰だろうと思ってみてみたら、同業者のあの例の怖いおじさんである。
何を食べたいか悩んでいるのだろうか……それにしても熱心に見ている。
妙な感じがして、少し好奇心を擽られたが……
とにかく仕事なのでいかねばならぬ、とそのまま階段をのぼった。
歩くのが遅かったのか何なのか、会社のエレベーターに乗ってみると、なんと、またあのおじさんとあってしまった。
気まずさを一方的に感じながら、私の方が近い位置に居たので……エレベーターのボタンを取りあえず押す。
おじさんが二階で降りたのを見送り、同じ空間に居る時間も短かったなと、のぼり行くエレベーターの中でほっとしたのも束の間。
——ちょっとまってくれ、同業者だよな、と思い階数を確認すると、三階へ上っている。——
わたしはまちがえて乗過ごしてしまったようだ。
——そうだよな、三階にきてどうするんだよ……しかたなくおりて、階段から二階へおりることにしよう……——
そういえばわたしはココは来るのが初めてだった。
- 第五話 ( No.5 )
- 日時: 2009/10/26 19:02
- 名前: もよ人 (ID: MnBE3vuR)
三階について、エレベータの扉が開いた瞬間、私は眩しさを感じた。
なんだろうとおもって目の痛さをこらえると、見えてきたのは真っ白な壁、真っ白な床。
あまりに白すぎて、薄暗いエレベータにいたためか目がすぐになれなかったらしい。
そして、真っ白な服をきた老人たちと、同じく真っ白な看護婦のようなひとたちが居た。
音がなくて、しいん、としている。
車椅子をおす、キィ、という音がきこえる。
なんだか、白ばかりで気が狂いそうになる場所だ。
いや、色なんかよりも、気持ちが悪いのは……ここにいるひとたちの表情だった。
どういう経緯があるのかはしらないが、みな、無表情で、スープのようなものをたべて、ただ黙々と……外を見ている。
一体、これが老人ホームだというなら、彼らは幸せなのだろうか。
わたしは絶対に老人にはなりたくない……。
きっとありきたりなことなのだろうが、強く思った。
恐怖と不快とを同時に感じながらわたしは仕事を思い出しハッとする。
……しまった。いそがなくちゃ……、
しっかし……ホントにあやしいっていうか、へんな会社だよなあ……。
当たり前か……。
そんな事を思いながら、わたしは真っ白の人々を後目にあわてて階段へ向かい、駆け下りた。
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