ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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†漆黒の断罪者†
日時: 2009/10/19 17:54
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

はい、ダークファンタジー系です。
どじょ。

:登場人物:

ラウル・シェンヌ
16歳。その身に悪魔を宿している為、長い間ラムドルダ帝国の地下牢に監禁されていた。その容姿は教典に出てくる「シアトル」に似ている。

アスラ・二アテッド
18歳。見習いの神父で超ナルシスト。魔を清める「対魔」を取得しようとトヌールに教えを迫っているが断られている。

トヌール
推定26歳。最年少で「対魔」を取得した。しかし代償があり、いつもそれに苦しんでいる。

イグラ
推定26歳。孤児で教会で育った。不真面目だがその力は絶大。闇で闇を消去できる。これにも代償がある。

………………………………………………………………

ファーザー
推定28歳。禁術である死神召喚を行える人物。ナイトメアのボス。ラウルを狙う。

ノエル
26歳。トヌールとは以前面識があり、左目を奪われた。いつもふざけているが、死神としての威力は高い。

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Re: †漆黒の断罪者† ( No.1 )
日時: 2009/10/19 18:10
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

         序章
     すべては神の悪戯で始まる


薄暗い地下牢だ。
悪臭が漂い、鎖の錆びた匂いが鼻をつく。
タイマツの火で内部を照らしているが、クモの巣が大量に張ってあり、所々に骨がある。
カビが生えており、ハエも多い。

その地下牢に、鎖で繋がれた一人の少年がいた。
黒く細い髪に、薄緑の瞳は虚ろで焦点が合っていない。
整った外見を持つが、細く華奢な体は汚れており、鎖で擦れたせいか、手足首に血が滲んでいる。
年齢はまだ幼い十代前半ほど。

少年は子供ではないような殺気漂う雰囲気で、近づいてくる足音に耳を傾けた。
地下牢の扉がギィッと鈍い音をたてて開く。
入ってきたのは、黒ずくめの人間達だった。
フードを深く被っており、表情がふとんど伺えない。

三人の人間は、少年を取り囲んだ。
一人が慎重に少年の鎖を取り、茶色の台に少年の腕を乗せた。
少年は無抵抗のままだ。
一人が持ってきたのは、じゅぅっと音をたてている焼刻印だった。

細い腕をむき出しにして、暴れないように後ろから少年を抑える。
「汝、哀れな呪われし異端の子よ」
一人が低い声でそう言った。
「今ここで、神の裁きを受けよ」
一人は少し高い少年のような声。
「さあ、今ここで邪気なるものを解き放たれよ」
そして、最後に男の声。

一人が焼刻印を持ち上げ、勢いよく少年の腕に押し付けた。
びくっと少年の体が動く。
目がカッと見開かれ、体が痙攣し始める。
そして、

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

劈くような、悲痛な叫び。
声にならないほどの痛みが体中を駆け巡る。
少年が抵抗しようとするのを、しっかりと黒ずくめが抑える。
ようやく、焼刻印を離すと、皮膚は焼け爛れ、身がじゅくじゅくと膿んでいた。
焼刻印の、悪魔の右翼のような模様がしっかりと肌に刻まれている。

少年は力なく倒れる。
「これで、しばらくだが悪魔の力は封じられるだろう」
「任務は終わりだ。行こう」
「刻印を忘れるな」
黒ずくめが出て行き、しばらくたった。
少年はうっすらと目を開けた。
しかし、その瞳は鮮血のように真っ赤だった。

「おのれ、この愚民どもが……ッッ!!」

少年の腕から、赤黒い光が発せられる。
魔法円が浮き出て、
「これくらいの事で、我が力が封じられるものかッ!」
一瞬で地下牢が光で満たされた。

轟音と共に、地下牢が崩れていく。
大爆発が起こり、ラムドルダ帝国の地下牢が、一人の少年の手で壊滅した。

Re: †漆黒の断罪者† ( No.2 )
日時: 2009/10/20 15:35
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

        第1夜
     汝、異端の神の子なり


巨大国家ラムドルダ帝国。

数々の国がある中で、巨大な力を持ち独立した国は独裁者が拷問ともいえる政治を行い、貧富の差が激しかった。
しかし、革命が起こり王朝は全ての権利をそれぞれの政府に渡し、貧富の差は少しずつだが回復してきた。

そのラムドルダ帝国にある小さな小さな教会で、一人の少年が司教に呼ばれた。


          †

「俺が、ラファエナ大聖堂にですか?」
「ああ。ぜひキミの力を借りたいと、そう言ってこられた」
司教が少年の肩に手を置く。
黒く細い髪に、薄緑のキレイな瞳。
顔立ちは整っており、華奢な体つきで一見少女のようにも見える。

「本当に……、いいんでしょうか。俺のような者が」
「そんな事を言ってはいけない。神はあなたを見守ってくださったのだから」
司教が優しくそう言い、少年の額に手を重ねた。

「神のご加護がありますように、ラウル・シェンヌ」

Re: †漆黒の断罪者† ( No.3 )
日時: 2009/10/20 15:47
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

ラムドルダ帝国から西にかなり行った所に、聖域の場所として、決して邪気なるものを進入させてはいけないと言われる、一つの大聖堂があった。

ラファエナ大聖堂と呼ばれるその聖域は、昔、ラムドルダ教典に出てくる天使シアトルとイザベラが、天界で大罪を犯した死神・ノードルを封印した場所と記されている。

広々とした敷地で、シスターや神父、司教らが一般市民に神の教えを説いていた。

そのラファエナ大聖堂を目の前にして、言葉を呑んでいる少年がいる。
今年、ラファエナ大聖堂で神父として働けと派遣された、ラウル・シェンヌだった。
初めて見るその神々しい大聖堂に、
「凄い……」
としか言葉が出てこない。

しばらく待っていると、
「あぁ、申し訳ありません。どうぞ、こちらに」
栗色の長髪をした、優しい顔の若い神父が、ラウルに声をかけた。
「今日から大聖堂で神に使える、ラウルくんですよね?」
「あ、はい。ラウル・シェンヌです。よろしくお願いします」
「そんなかしこまらないで。僕はトヌールです。どうぞ、よろしく」
「よろしくお願いします」

トヌールがすっと自然に握手を求めてきた。
少しだけ、ラウルが戸惑う。
「……どうかしました?」
「あ、いえ!あの……、こちらこそ」
そっと握手をして、チラリとトヌールを見る。
彼は微笑んで、
「では、大聖堂館内を案内しますね。どうぞ」
(あれ、痛くなかったのか?)
ラウルが不思議そうにトヌールを見る。

          †

Re: †漆黒の断罪者† ( No.4 )
日時: 2009/10/21 19:03
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

全ての館内を見終わったところで、トヌールが思い出したように、
「そういえば、まだイグラを紹介していませんでしたね。着いてきてください」
長い廊下を渡り、一つの部屋をトヌールが覗き込む。
そして、首を横にふり、
「いませんねぇ。全く。ちゃんと部屋にいろと言っておいたのに、どこに言ってしまったんだか」

ラウルが辺りを見回す。
すると、その目に一人の少女が映った。
蒼白の長い髪に、蒼いキレイなガラス玉のような瞳を持つ少女が、無表情でこちらを見ている。
トヌールが気づいて、
「あぁ、彼女はオーロラ。この大聖堂の番人です」
「あ、よろしくお願いします」

ラウルがお辞儀をしたが、少女は人形のようにじっとしている。
「すみません。無口な子でして。あ、それから。夜に彼女に会わない方がいいです」
「どうしてですか?」
小声で言われたので、ラウルも小声で返す。
「“叫びの唄”を歌っているからです。彼女の歌声は大聖堂内で一番美しいと言われていますが、夜には邪悪な存在を打ち消すため、それに適した唄を歌っているんです」

ラウルが感心しながら少女を見た。
「その唄を聴くと、どうなるんですか?」
「魂を、とられてしまうらしいです」
(大聖堂の歌姫か……。すごくキレイだけど、人間じゃないみたいだ)
「まったく、それよかイグラはどこにいるのでしょうか」
「捜しましょうか?」
「いえ、ラウルくんは今日はゆっくりしてください。連れ戻してきます!」

トヌールがそう言った時、
「な〜に人の部屋ン前でごたごた言ってんだよ」
部屋の中から声がした。
トヌールが驚いて、
「いたんですか!?」
「いたよ。ったく、気づけよなぁ」
ラウルも振り返る。

そこには、本当に神父なのかと思いたくなるような容姿の男がいた。
金髪碧眼で、顔立ちは整っているが、耳に十字架のピアスをつけ、さらに髑髏のリングまでしている。
「なんだ、このガキ」
「ラウル・シェンヌくん。今日からこの大聖堂で一緒にやっていく事になったんです」
「ら、ラウル・シェンヌです。よろしくお願いします」

イグラが冷たい目でラウルを見下ろす。
身長差がかなりある。
「……お前、断罪者か?」
イグラが聞き、ラウルが少しだけ悲しい目で、
「はい。断罪者として、来ました」
「こんなガキ、足手まといになるだけじゃねーの?」
イグラが、今度はトヌールに言った。
トヌールも、困ったようで、

「私も、彼は普通の見習い神父だと思ったのですが。悪魔祓いエクソシストでもないし」
「俺は、断罪者ですよ」
はっきりと、ラウルがそう言った。
イグラが怪訝そうにラウルを見て、
「じゃあ、何?お前のそのちっせー体にそんだけの力があるっていうのか?」
「……今は、封印されていますが」

その言葉に、トヌールが小さく目を動かす。
(封印?それほど強力な断罪者か……)
「まあいい。実力は実際に見ねぇとわからんしな。ンで、おめーら何の用だ」
「あ、ラウルくん。こちら、私の同僚のイグラ神父。この通り、不真面目で派手で神父なんてどんでもない格好ですが、神父ですので」
「おい、悪かったな。神父で」

イグラが横目でトヌールを睨む。そして、ラウルに目を向けて、
「ま、そーゆーこった。これから俺を頼れよ。こんなボンクラじゃなくて」
「ちょっと。ラウルくんが変な事覚えちゃうでしょうが。──では、ラウルくんは今から部屋に案内しますので」
「あ、はい。お願いします」

ラウルがもう一度イグラを見る。
(この二人も断罪者か……)


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