ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

alternative
日時: 2009/10/20 01:17
名前: JF山田 (ID: nrbjfzgl)

ー 此処は、どこだ?

目を開けた時、広がっていたのはただひたすらに長く白い廊下。振り返っても同じ。その廊下は特に何か飾られている訳でもなく、扉がある訳でもなく、本当にただただ白い道。
其処に俺は立ち尽くしていた。
思考を巡らせる。はたして自分はどの様にしてこの場所に来たのか、まずそれを考える。
・・・だめだ。どうにも思い出せない。・・・それどころか自分の名前すらも分からない。言うなれば、まるで『記憶そのもの』が欠損している様だった。
俺は誰で、何で、どうして此処にいるのか?

《 知りたい?》

「ッ?!」
声が聞こえた。何処から聞こえたかは分からない。
否、それは脳裏に響く音。故に、視覚や聴覚で拾うものではなかった。
《 きて 》
来て?何処に?
瞬間、世界が歪んでいった。崩れていく世界。なのに何故か、ずいぶん冷静だった。俺を中心に歪みは大きくなっていく。そして始まる再構築。それを俺は見つめていた。俯瞰していた。

しばらくしてやっと動きが治まった。今度もまた、違う景色。けど、全てが真っ白なのは変わりない。
ただ、違ったのは、目の前に、真っ黒な女がいた。それは異質としか言いようがなく、部屋からすれば確実に異端。ソレは俺を見て微笑んでいた。

「こんにちは。セツナ」

・・・セツナ。それが俺の名前なのか?
女の真紅の瞳から目が離せない。この女は俺の全てを知っている。そう理解させられた。
彼女の手が俺の頬をゆっくりと撫でていく。何故か抵抗する事は考えなかった。彼女の存在は異質であるのに、それはあまりにも自然で、綺麗で、美しかった。
「私は アイギス」
黒い女、アイギスは、くるりと廻って俺から離れる。そして、
— 異様にも世界へ融けていった —
同時に、俺の世界は黒く塗りつぶされた。

Page:1




この掲示板は過去ログ化されています。